「公表裁決から学ぶ税務判断のポイント」、連載第47回目です。
請求人が、受託者との間で締結した太陽光発電設備の設置等の業務に係る契約は、請求人が主張するような、同設備に必要な各機器の販売契約と据付工事が一体となった請負契約とは認められず、消費税法基本通達9-1-9の適用要件を満たしていないから、各機器が納品された日の属する課税期間の課税仕入れとして計上することはできないという判断が示されました。

国税不服審判所令和3年3月23日裁決(「国税速報」 第6696号 令和4年2月28日 11~14頁。 裁決事例集未掲載)

1.事実関係

本件は、審査請求人(請求人)が委託した太陽光発電設備に係る設計、設置等の業務において、当該設備に必要な機器については納品された日の属する課税期間の課税仕入れであるとして、当該機器の代金の一部を平成31年3月末までの課税期間の課税仕入れに係る支払い対価の額に計上して消費税等の確定申告書を提出したところ、所轄税務署長が、当該課税期間の末日までに当該設備に係る設計、設置等の業務の全部が完了しておらず、引渡しを受けていないとして、消費税の更正処分等を行ったことに対し、請求人がこれを不服として審査請求した事案である。

請求人[1]は、太陽光発電設備の設計、設置等の業務をN社に委託するため2件の注文書を発行し、受託者N社は、2件の注文書と同一内容の平成31年3月25日付注文請書2件を請求人に発行することで太陽光発電設備の導入に係る契約(本件契約)が成立した。なお、注文書及び注文請書の「納期」欄にはいずれも「2019年5月24日」と記載されていた。取引代金の支払期日は2019年3月31日及び同年6月28日であり、請求人は第1回目の請求としてN社から、平成31年3月26日付及び同月27日付の2件の請求書(請求金額は590万円及び430万円でいずれも税込み)を受領し、請求人は、平成31年3月28日、その合計金額である1020万円をN社に支払った。

請求人は平成31年3月27日、所轄税務署長に対し、適用開始課税期間を平成31年3月31日までとする消費税課税事業者選択届出書を提出し、同課税期間(本件課税期間)の消費税等の確定申告書を法定申告期限までに申告したが、この申告においてN社に支払った1020万円を課税仕入れに計上した。


[1] 請求人の属性については、「国税速報」の記事では不明だが、N社に委託した設備が営農型太陽光発電設備であることから、農業法人等であることが推定される。