4.審判所の判断

  • (1)法令解釈

本件通達は、事業者が機械設備等の販売をしたことに伴いその据付工事を行った場合において、その据付工事が相当の規模の物であり、その据付工事に係る対価の額を契約その他に基づいて合理的に区分することができるときは、機械設備等に係る販売代金の額と据付工事に係る対価の額とを区分して、それぞれにつき資産の譲渡等を行ったとする旨定めている。機械設備等の販売をする場合に、それに伴う据付工事が相当の規模のものであれば、機械設備等本体の販売取引とその据付工事に係る請負取引の対価の額を区分し、その区分したところにより、それぞれの資産の譲渡等の時期を判断することの方がむしろ合理的であるといえ、本件通達の定めは、当審判所においても相当と認められる。

  • (2)認定事実

①N社担当者は、原処分庁に対し、「本件契約の内容はN社が各機器の設置作業及び電気工事を行い、太陽光発電設備導入サービスを完了させ請求人に引渡すものであり、注文書及び注文請書に納期が2019年5月24日と記載されているように、全体で一つの請負契約であり、各機器の所有権及び危険負担において、平成31年3月31日時点では請求人に移転していない。」と申述している。

②本件契約には、各機器の納期についての定めはなく、また各機器を販売する旨の定めもなく、N社が請求人に各機器を販売することについての合意があったとは認められない。

③本件契約には、各機器の搬入によって各機器の所有権及び危険負担が請求人に移転する旨の定めはなく、N社が平成31年3月25日に各機器を搬入したことをもって各機器の所有権及び危険負担がN社から請求人に移転したとは認められない。

④本件契約には、各機器を搬入したことをもって各機器の代金を請求人に請求する旨の定めや、各機器とそれ以外の代金を区分して請求する旨の定めはない。

  • (3)検討

(2)のとおり、本件契約は、N社が太陽光発電設備導入サービスを完了させ、各設備を請求人に引渡すことを約する、それぞれ全体で一つの請負契約であり、請求人が主張する各機器の販売と据付工事が一体となった請負契約とは認められず、本件通達を適用することはできない。そうすると、本件における太陽光発電設備の譲渡の時期は、消費税法基本通達9―1―5《請負による資産の譲渡の時期》を適用し、N社が当該設備を請求人に引渡した日となるから、本件契約に係る課税仕入れの時期は、本件課税期間ではなく、引渡日(令和元年5月24日から同年6月30日までのいずれかの日)の属する課税期間であると認められる。