2.検討 実践テーマの決定

テーマ決定においても、社内のESG問題と、社外のESG問題とでは、アプローチが少し異なってきます。
社内のESG問題については、課題の洗い出しを行った時点でほぼ決まります。
自社の問題は自社で解決すべきものであり、そのニーズも解決の必要性もいたって明確だからです。
しかし、社外のESG問題については、ニーズも解決の必要性も対社内のように明確ではないですし、経営資源は有限であるため、主体的に取捨選択する必要があります。
取捨選択モデルの例としては、1既存事業、2新規事業、3既存+新規事業に当てはめてアイデア出しを行う、という方法があると思います。
今ある事業でできること、経営資源を生かしながら新たなビジネステーマを追求し新規事業を開拓すること、現状行っている事業に違ったサービスや視点を加えることで既存事業を発展させること、この3点の視点から、従来の考えに捉われず自由にアイデア出しを行います。
社外のESG問題解決に対し、自社のサービスや事業、活動がどのように当て込めるか、これにより取り扱うテーマを決めていきます。

取り扱うテーマが決まったら、さらに以下の3つについても確認しておくと、実践がより強固になると思います。

(1) 障害となりえる要因を解消する
テーマが決まっても、実行力が伴わなければ持続していきません。
いまいちど、組織の体制、メンバーの合意形成について十分に準備ができているかを確認しましょう。
また、必要な物資や空間、資金などは調達できるか、ということも確認しておく方が良いです。

(2) 目的を明確にする
SDGsの実践としてなぜこのテーマに取り組むのか、取り組むことで自社はどのような価値を創造していくのか、目的をメンバーで共有し明確にしておきましょう。
ビジネスは実践していくうちに目的を見失われがちですが、ここがはっきりしていなければメンバーのモチベーションも下がり、成果もあがりにくくなります。
何のために取り組むのか?(経済的な価値のためか、社会的価値のためか)整理し共有しましょう。

(3) KPI(成果指標)を設定する
実行しても、適切な評価がなければ、継続はおろか、そもそも実行して意味があったのか?ということになっていまします。
他のビジネスと同様、KPIの設定は必須です。数値化でき、現実的な努力で達成できる成果指標を設定します。達成期限を決めておくとより良いです。「これができたら成功だ」と評価できる判断基準を設けましょう。

最後に、テーマ決定における最大の注意点は、テーマの決定プロセスを「見える化」することです。
全社的なコンセンサスのもとSDGsを推し進めていくわけですから、経営者側が一方的に取り組みテーマを決めてそれを示すというよりも、決定に先立ち経営陣がスタッフと意見交換を行い、検討状況を社内で共有していくことが大事です。
この「見える化」は、スタッフのSDGsに対する意識醸成となり、SDGs実践という新たな業務に自分も関わっている、担当しているのだ、という主体性につながります。

とは言っても、社員に主体性をもってもらい新しいプロジェクトや担当外の事業に取り組んでもらうことは、そう簡単なものではないですよね。
「自分には関係ない」と思うのが一番良くないのですが、こう思う社員が多いことも現実です。
そこでさらなるテコ入れとして、以下のような視点も取り入れテーマ決めをしていくことを筆者はおすすめします。

・企業と社会の共通価値だけではなく、企業と社員との共通価値を生むSDGsの実践、という視点を持つこと。その実践が社員にとっても優しい、あるいはポジティブな影響や結果をもたらし、社員にとっても持続可能なもの、を実践していく。

・とっかかりとなる小さなプロジェクトから始めて、まずは取り組んでもらい、社員の成功体験を創る。成功体験は実績や評価に繋がり、本人の自主性やモチベーションをアップする。積み重ねて大きなプロジェクトへ繋げていく。

コミュニケーションでも仕事でも、自分と相手の思考の交差点を見つけることが成功の秘訣と思います。
その点を見つけるために双方向の視点(こちらが提供できること、相手が提供してほしいこと)を持つことが必要であると考えます。経営者側が常にスタッフ目線を忘れぬようにしたいものです。

それではいよいよ、SDGsを実行していきましょう。