さて、SDGsの2回目です。1回目はSDGsの基本とビジネスとの関わりについて解説しました。今回はより具体的な中身に入っていきたいと思います。いざSDGsを実践するにあたって、「じゃあ企業はどういう準備をしたらいいの?」「どういう体制を整えればいいの?」というところを紐解いていきましょう。
まず簡単に復習を。以下は前回内容の要約です。
■SDGsは国連が定めた17個の目標である。
17個の目標は社会、経済、環境、枠組みに分類される。
■似た言葉にCSR(Corporate Social Responsibility/企業の社会的責任)やESG(Environment Social Governance/環境、社会、ガバナンス)があるが、これらは企業が経営を行う上で考えるべき要素や責任であるのに対し、SDGsは目標である。
■中小企業も、しっかり取り組むことで中長期的に大きなメリットを享受できる(人的要素、コスト的要素、ビジネス的要素)し、逆に取り組まないと企業としての存続が危ぶまれる時代がやってくる。
■SDGsの本質である持続可能という言葉は、今や企業と社会、企業と世界は一蓮托生の関係である、ということであると推察される。
■SDGsはビジネスにもヒントを与えるものであり、旧来のビジネス観からの脱却が求められ、「○○だけすればよい」「雇用と納税、法令順守だけでOK」などといった考えを捨てる必要がある。
では、さらに次に進んでみましょう。
SDGsの登場はビジネスのトレンド自体にも大きく影響を与えています。そこで今回は、ビジネスのトレンドと自社の体制チェックという観点で考えてみましょう。まず、ビジネストレンドについてお話していきます。
★「結果志向」から「プロセス志向」への転換
これまでのビジネスは「結果志向」でした。ここで言う「結果」とはカネなどの経済的価値のことです。企業はこの経済的価値の増大を中心にビジネスを考えてきました。しかしながら、その思わぬ副産物としてESG問題などの社会的問題が発生してしまいました。つまり、「結果」に至るまでの「プロセス」によって、環境破壊、経済格差、違法労働など、ESG問題が深刻化してしまった、ということです。
ビジネスにおいて経済的価値を無視することはできません。
しかし、それのみを追い求めると、ESG問題によってビジネス環境そのもの(地球、社会、人)の存続可能性が損なわれてしまいます。
よって、私たちはこうしたビジネスの「結果志向」から「プロセス志向」へと考え方を転換する必要があります。
具体的には、例えば、生産活動に必要なエネルギーを再生可能エネルギーにする、多様性のある人材雇用を実践する、などです。
プロセス志向のビジネスとは、言わば「ソーシャルビジネス」のことです。
「結果(=カネなどの経済的価値)を得ることにより社会貢献する」のではなく、「ビジネスプロセスの中で社会貢献し結果を作り出す」というベクトルの転換が、これからのビジネストレンドでは少しずつ主流になっていくでしょう。
★顧客ニーズの変化に対応できているか?
顧客ニーズの質的変化についても企業は目を配らなければなりません。
その変化とは、世の中全般として、商品やサービス内容そのものだけではなく、商品やサービスが提供されるプロセスの社会性へのニーズが高まっているという変化です。
つまり、品質やコストなどの「経済性」に加え、自然環境や人権への配慮といった「社会性」が求められるということです。
これは自社に限ったことではなく、取引先の企業にまで範囲が及びます。発注先の企業で人権侵害などの問題が発生すれば、発注元の企業の説明責任まで問われることになります。
いわゆる、「サプライチェーン」全体の「社会性」の高さが望まれているということです。
ESG問題は、企業の存続だけではなく、社会全体の存続の問題です。
消費者の視点が変わり、ニーズが変化することも自然なことでしょう。
ここまで、ビジネストレンドの変化について見てきました。
どちらも要約すれば「not only 経済性 but also 社会性」と言ったところでしょうか。
SDGsの時代、企業には経済性と社会性、どちらも求められている、ということですね。
それではここから、実際に皆さんの会社の現状がSDGsに適した経営体制をとれているのか?ということをチェックしていくステップに進んでみます。
もちろん、「今は全然対応できていない」ということでも中小企業の経営者の皆さんは一向にかまわないと思います。
前回コラムでも述べたとおり、SDGsはじっくり取り組むものであり、中長期的に成果をだし、メリットを享受できるもの、であるからです。
「今は全然ダメ」という会社こそが、享受できるメリットが大きい、ということも言えると思います。
そのためには、ワークシートを作り、タイムスケジュールを入れて進捗管理を行う、という基本的なプロジェクトチームを作り、社内にSDGsを浸透させる、ということが必要になりますね。
SDGs実践の前の検証と思ってぜひ考えてみてください。