持続可能な世界をつくるため、企業ができること・すべきこととは…?SDGs発展編として、持続可能な世界、ないしは企業をつくる方法を考えていきます。
いよいよSDGsをテーマとする最後の回となります。
前回は、より実践しやすいSDGsの取り組みとして、SDGsのパートナーシップをご紹介しました。
他の企業や団体と連携し強みと弱みを補完し合いながら進めることができ、かつ、SDGsの指標17「パートナーシップで目標を達成しよう」も網羅できる、なかなか有効なSDGsの取り組みでした。
今回は「SDGs発展編」として、SDGs実践の次の段階へ進んでいくこと、そうして持続可能な企業を確立していくこと、をメインにお話ししていきたいと思います。
SDGs発展のための前提
SDGsの発展について考えていくにあたり、もう一度原点に立ち返りたいと思います。
そもそもSDGsとは、「2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標」であると言いました(第23回コラム参照)。
また、この目標のベースには「世界のさまざまな問題を根本的に解決し、すべての人たちにとってより良い世界をつくる」という基本理念があります。
ある一つの団体や企業、一つの地域や国だけに利点があるのではなくて、社会ないしは世界全体(すべての人たち)にとってより良いものであること。
そうして世界が持続可能な状態であること。
これがSDGsの基本概念です。
SDGsを発展させていくには、この概念は欠かせないものになってきます。
この概念をかみ砕いていくことで、SDGsの発展のためにできること・すべきことについて一緒に考えていければと思います。
「すべての人たち」の考え方
社会あるいは世界全体がより良くなること。
基本理念の中で、ターゲットとして「すべての人たち」というワードがあげられていますが、あまりにも響きが壮大すぎて怖気づいてしまいますね。
あくまでSDGsの基本理念のターゲットはこの点にあるということに留意しながらも、私たちは“一企業にできる範囲”から考えていきましょう。
自社におけるターゲットについて考えたときに、今までは、「商品やサービスを買ってくれる人たち(経済的なターゲット)」だったところから少し視点をずらし、事業、商品、サービスなど、自社が社会に対して提供できるものについて「それを必要としている人たち、あるいは喜んで受け取ってくれる人たち」を考えてみてください。
それだけで、思い描くターゲットは従来よりも広がってくるのではないでしょうか。
視点をずらし見出した人たちは、今までには見つけられなかったターゲットなわけですね。
つまり「すべて」とはいかないまでも、少なくとも、ターゲットの範囲は広がるわけです。
例えば、雇用。
自社を必要としている人たちとして、求職者はその一例であると思います。
企業側は今までは採用をしていなかったような分野に、あるいは今までは目を向けてこなかったような職歴、能力をもっている人たちに目を向けてみるわけです。
企業にとっては新たな人材を確保できるだけではなく、新しい分野・事業の開拓になります。
さらに、求職者が職を得る=経済的に自立し豊かになる、ということは、市場にとっても良いことであって、社会全体にとってプラスに作用することになるわけです。
まずは「すべての人たち」=「従来のターゲット+自社が取りこぼしてきた領域のターゲット」と考えてみるとよいでしょう。
「すべての人たち」へのアプローチ
ではそのような「自社が取りこぼしてきた人たち」へのアプローチとして、自社ができること、すべきことをもう少し具体的に考えていきましょう。
先に引き続き、雇用を例に説明していきます。
自社が見逃してきたターゲット層の雇用のために必要なことは、大きく雇用前と雇用後とに分けることができます。
1.雇用前:自社の体制の整備
- 自社環境で不足している、あるいは全くない分野の業務を考えてみる
- 増設あるいは新設した場合の組織のあり方、業務フロー、実績や効果を検討する
- 継続させるために必要なことを検討する(SDGsにおいては持続可能が大切です!)
- 活用できる社外のリソースを洗い出しておく
- 必要と思われる人材を確保した際のその人のキャリアパスを設定しておく
2.雇用後:運用の確認・改善
- 作業環境、作業方法を検証・改善していく
- 配属や担当業務を柔軟に決定していく
- 随時そのポジションが適切に機能しているかを見直し調整していく
企業側にも努力が必要で、本人の自主的な努力に任せて放置するのではなく、受け入れる以上は責任を持って業務のあり方や自社の体制を作っていくことが大切です。
あまり仰々しく難しく捉えすぎず、自社にとってすべての人って誰だろうか、よりよい社会ってなんだろうか、とミクロな視点から始めていくので良いと思います。
まずはやらない理由作りではなく、やる理由作りを。
その小さな活動がバタフライエフェクトのように、相互に影響したり思わぬところに波及したりすることで、世界全体がより良くなっていくのではないかと思います。