SDGsの実践と継続、ハードルが高い!と感じる方々へ、とりかかりやすいSDGsの実践方法として「SDGsのパートナーシップ」をご紹介します。
SDGsについて5回目となる今回は、実践編第3弾、パートナーシップに関する内容です。
前回は、取り組みの継続と「リスクヘッジ」をテーマにお届けしました。
SDGsを始めてみた企業が直面する「取り組みを継続させていくには?」「推進にあたってのリスクは?」「それを回避するには?」といった悩みについてお話ししてきました。
こうした中で「SDGsって始めてみたら意外と大変だな…」と感じられた方が少なからずいらっしゃると思います。
その打開策として、今回は「SDGsのパートナーシップ」を取り上げます。
特に中小企業にとって、自社だけで取り組むには予算的にも時間的にも限界があります。
より確かに継続性を持たせた実践を行うために、今回の記事では、パートナーシップを活かした目標設定と実践についてお話しします。
中小企業に有効なパートナーシップ型SDGs
自社だけではハードルが高い、と感じる企業へ
目標設定の段階で、まず多くの企業は「自社が独自に取り組めること」を考えると思います。
本コラムでもまた、バックキャスティング的な自社における課題発見・解決の手法を紹介しました。
(まず社内外の問題・課題を洗い出し、その課題に対して自社事業をどう活用していくかを考える、というものです。詳しくは、第25回のコラムを参照してください。)
この検討段階で、自社でできることに限界を感じた方もいらっしゃるかと思います。
そんな中注目すべきは、SDGsの指標の17「パートナーシップで目標を達成しよう」です。
解決すべき社会問題というのは結局どの企業にとっても同じこと。
であれば、他社と協働して解決していく方が相互にとってメリットがあり、効率的で、より課題解決に有効となるのではないかと思うのです。
パートナーシップを築くメリット
具体的にメリットを考えてみましょう。
まずシンプルに、企業と企業が提携し協働して事業を行っていくことで、それぞれの強みを生かしながら、ひとつの課題解決に取り組むことができます。無理や背伸びは必要ありません。
また、これは相互に弱点を補い合っていけることにも繋がります。
さらに、SDGsの取り組みには金融機関の支援が欠かせませんが、自社単独で行うよりもスムーズに事が進みます。パートナーを紹介してもらうことも可能です。
あるいは金融機関自体とパートナーシップを組むこともあり得ると思います。
何よりも、自社だけの問題ではなくなるので、継続性が強固になります。
例えば、地方自治体と企業とのパートナーシップSDGsを考えてみましょう。
行政団体は、社会的信用があり、幅広い問題解決に着手することが可能ですが、そのサービス自体に限界がある、という特徴があります。
一方、一企業はカバーできる範囲に限界がありますが(企業規模にもよりますが)、企業独自の事業によって、行政の手の届かないサービスを提供することが可能です。
互いの弱点を補いながら、課題解決に取り組むことができます。
テーマをコロナの対策としましょう。
SDGsの指標は17「パートナーシップで目標を達成しよう」以外にも、3「すべての人に健康と福祉を」が挙げられます。
一番シンプルな手法は、地元企業の衛生関連商品が自治体へ寄付され、孤立無援世帯、高齢者単身世帯、シングルマザーの世帯などへ広く配布する、などでしょうか。
あるいは、ここに地元の病院や歯科医師会にも協力を仰いで連携してもらい、予防接種対象者にサービスを拡充させることで、さらなる対策の推進も可能です。
病院や歯科医師会の協力が強固だと、予防接種の迅速な対応や地域の見守り体制の構築も、図れることと思います。
実際に、このような地域全体での連携によって、コロナ対策でとても注目された自治体がありました。
いかがでしょうか?少し具体的な取り組み方針が見えてきたでしょうか?
パートナーシップによるSDGsの取り組み方
それでは、このSDGsの取り組みをうまく実現させていくために、それぞれの企業ができることをお話ししていきます。
3つにまとめてみます。
- 自社の強みを磨く
- 対等な関係を維持する
- 社会的課題の変化に柔軟に対応する
まず1の「自社の強みを磨く」です。
これはSDGs以前の問題かもしれませんが、自社の強みを伸ばす、活かす、強めることが、取引先、社会、そしてSDGsのパートナーから、選ばれる最もシンプルな道であると考えています。
その強みが(他社と差別化されているとなおよいのですが)、パートナーシップを結び、協働して社会課題を解決していく推進力となります。
続いて2の「対等な関係を維持する」です。
1と少し重なりますが、互いの強みを活かし合い、弱点を補完し合い、対等な関係性をキープし続けることが大切ではないでしょうか。
筆者は、ビジネスでも人間関係でも共通する真理があるというのが持論ですが、パートナーシップは“対等”であることがとても重要だと思うのです。
「相手に対等であろう」とするそれぞれの意思・行動が、自らの研鑽に繋がり、協働の実効性を高めると思うからです。
私生活の一対一の人間関係でも、そうではないですか?
ビジネスでも変わらぬ真理だと思います。
最後に3の「社会的課題の変化に柔軟に対応する」です。
コロナの蔓延をはじめ、社会ないしは世界の状況というのは、日々変化します。
その変化を敏感に察知し、固定観念に捉われず、柔軟に対応していくというのはビジネスにおいても欠かせないことです。
そして、それはSDGsの取り組みにおいても同様なのです(前にも同じようなお話をした気がしますね。現在のビジネスモデルの有効性や企業理念のチェックについてお話ししました。第24回のコラムを振り返っていただけるとよいと思います)。
パートナーがいると「自社の判断で勝手に判断・行動できない」というのはありますが、そこでも2の「対等な関係を維持する」が活きてきます。
対等であるからこそ、相談や意見交換もしやすくなります。
密な連携を大切にして、社会的課題の変化に素早く対応していけるとよいですね。