会計士 中村亨の「経営の羅針盤」第25回です。SDGsをテーマにしたコラムも3回目を迎えました。いよいよ実践編です。
ここまで、SDGsとは、という概念的要素から、企業にとってそれがどう機能するのか、自社にとってそれがどのようにフィットする可能性があるか、などを考えてきました(間が空いてしまったので、もう一度目を通していただくことをおすすめします!)。
企業それぞれにそれぞれの現実、課題、資産があり、SDGsとしてどのようなテーマに取り組めるかは各企業で違ってきます。
しかしどのテーマの取り組みについても、実践するにあたって押さえるべきポイントや流れは同じです。
今回はそのポイントや流れを解説していきます。
SDGs実践の基本の流れをざっと説明すると以下のようになります。
1.前提 全社的コンセンサス形成と課題把握
2.検討 実践テーマの決定
3.推進 決定したテーマに沿ったTODOの実践
4.記録 自社評価及び自社アピール
順を追ってみていきましょう。
1.前提 全社的コンセンサス形成と課題把握
企業がSDGsを実践するということは、「ESG問題(=Environment(環境),Social(社会),Governance(ガバナンス)問題)」の解決という、一企業からすればカバーする範囲が大きな取り組みを、ビジネスとして行っていくということです。
大きな課題には、組織が一丸となって取り組んでいく必要があります。
そのためには、まず全社的に(経営者側だけでなく)SDGsへの理解を深めることが不可欠です。
研修やセミナーなど学びの機会を企業側が積極的に設け、基礎知識を習得してもらい、SDGsの知識を全社的に浸透させましょう(本コラムも是非ご参考に!)。
さらに、具体的に効果や結果を出していくには、メンバー一人ひとりの推進力が当然必要です。
それを発揮してもらうためには、「やらされ感」のない実践でなければなりません。
つまりSDGsの実践を「業務として認識する状況」を創ること、実践に関する全社的なコンセンサスの形成が不可欠ということです。
そもそもCO2の削減や人権問題への取り組みは、いま業務を遂行している中でも密接に関わる問題ですから、一環させて「業務としての認識」へ繋げることは難しくないと思います。
あとはその目的をしっかり伝えることです。「なぜビジネスにSDGsが必要なのか?」、これには第1回、第2回で解説してきたことが役立つと思います(企業へのメリットや、全世界的注目度、ESG問題についてなど)。
経営者側と各部門のスタッフと積極的に情報共有し、コミュニケーションを図り、「全社的コンセンサス形成」を目指しましょう。
また、現状の課題の洗い出しを行っておきます。
SDGsの実践は「社内外におけるESG問題の解決」です。解決のため、課題は何であるのか、を把握しておきましょう。
課題を洗い出すにあたっては対社内、対社外という視点で分けて行う方が良いです。
<社内>
(1) 自社の業務特性に関連して起きうるESG問題はなにか?
(2) スタッフの立場・属性に関連して起きうるESG問題はなにか?
(1)は例えば紙の大量使用によるごみの増加、未処理汚水の河川への放流、税務当局から租税回避と認識される可能性が高い節税商品の購入などが挙げられます。
(2)は人権問題、パワーハラスメント、昇進差別などでしょうか。
<社外>
(1) そのESG問題に対して自社の経営資源を活用できるか?
(2) 経営資源の活用が自社と社会の共通の価値になるか?
そもそも自社の経営資源を活用できない取り組みは単なる経営資源の浪費です。
(1)の視点を持ち、自社の経営資源を生かし、企業価値を創造することを考えましょう。
また、あくまでもビジネスでSDGsに取り組む以上、それが社会だけでなく、自社にとっても価値ある取り組みでなければなりませんね。
どちらにも共通することは、自社の現状、経営資源、企業価値を前提としながら、SDGsに取り組む姿勢です。
ここを忘れずに進めていけるとよいと思います。