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会計士 中村亨の「経営の羅針盤」第1回-コロナ不況にどう立ち向かうか?

日本クレアス税理士法人/株式会社コーポレート・アドバイザーズ 代表の中村亨です。経営者として、また会計士としての日ごろの経験から、皆さんのビジネスやキャリアのヒントとなるようなトピックスをカジュアルにお伝えしていきます。

新型コロナウイルスの影響による消費の減退は、目にするニュースはもちろん、街を行く人の少なさからも身に染みて感じます。

そんないつもより人通りの少ない休日の街で、ふと目に入ったユニクロの店舗に入りました。ユニクロ、いいですよね。欲しい物がなくてもなんとなく入ってしまい、なんとなく買ってしまう。クローゼットの中に何枚もエアリズムがあるのに、今年もまた買ってしまいました…。

言わずもがな、ユニクロの製品の特長は「安くて」「良い」。シンプルですが、カジュアルウェアに求められるもののほとんど全てを叶えているのではいでしょうか。

今回のコラムでは、ユニクロの「安くて」「良い」につながるマネジメント論をご紹介しながら、コロナ不況への立ち向かい方を考えたいと思います。

トレードオフの解決こそ、マネジメントの本質

「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがありますが、これは、欲を出して同時に二つのことをうまくやろうとすると、結局はどちらも失敗することのたとえです。

しかし、会社経営においては、二兎を追うべきである、とも言えます。
ユニクロを例に取ると
・安いものは質が悪い
・高いものは質が良い
通常であれば相反する「値段」と「品質」というトレードオフを両立させたものです。

私の好きなビジネス書に「ビジョナリー・カンパニー‐時代を超える生存の原則」(ジム・コリンズ著/日経BP出版)という本があります。世界中で数多くの方々に読まれたもので、世界的なエクセレントカンパニーの経営がどうようなものであったか?を調査してまとめたような本です。

・変化か、安定か
・慎重か、大胆か
・未来に投資するか、目先の利益を追求するか
・株主の富を生み出すか、社会の役に立つか

エクセレントカンパニーは、「物事はAかBのどちらかではなければならない」といった「OR」の考えではなく、変化も安定も・慎重さも大胆さも、といった「AND」を標準として物事を考えます。

これは、両者のバランスを取るといった月並みな話ではありません。バランスを取ることは中間点を取ることであり、AとBどちらの価値も半々にすることになります。「短期と長期」を例に取ると、エクセレントカンパニーはこう考えるのです。
………………………………………………………………………………………
短期的に大きな成果をあげ、かつ、長期的にも成果をあげる
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つまり、どん欲に「安くて」「良い」のようなトレードオフを一気に解決しないと大きな飛躍は成し遂げられない、ということだと思います。
トレードオフの解決こそがマネジメントの本質であり、究極の理想なのです。

ユニクロの場合には、それを成し遂げる手法がSPA(製造小売)であり、デザインをシンプルにして、国民服を目指すという戦略であるわけです。

また、10年ほど前から株式会社ユニクロ代表取締役会長兼社長の柳井さんが「敵はアップルであり、アマゾンだ」とおっしゃっていましたが、最近はオンライン販売にかなり力を入れているようです。

大不況がやってくるかもしれない?中小企業はどう対応すべきか?

とはいえ、なかなかユニクロのようなパラダイムシフトを実現するのは難しいところです。それどころか、あらゆる経営者の目下の課題がコロナ不況とも言える現状でしょう。

飲食、旅行・宿泊、イベント関連の事業は言うに及ばず、その他の業種・業界でも早晩影響が出るだろうと思われます。私のところにも、ぼちぼちと「資金繰り対策」や、「リストラ」の相談が来ています。

読者の皆様の立場がさまざまであることを前提にしますが、私がリストラや事業の再構築の相談を受けた際に、一般的な見解として述べていることをご紹介します。

ビジネスの撤退(店舗や営業所の閉鎖、「選択と集中」による事業の取捨選択)は、早い方がいい

90年代の不況はこの決断のスピードが遅い企業が多くありました。一度でも「撤退」を考えたビジネスはリカバリーが難しく、たとえ景気が落ち着いたとしても業績が好転する可能性は極めて低いです。

「頑張ればなんとかなる」「持ちこたえられる」というのは幻想で、不採算事業の継続で利益は圧迫し続け、傷はますます深くなります。撤退の決断は早く、これは不況を乗り切る絶対条件であると考えます。

中小企業の人材戦略は「一律」ではなく「メリハリ」が重要

 不況下では売上の増加や維持が見込まれないため、人件費を削減して利益を確保しようとする企業も頻出します。

その際、「一律に5%カット」「みんなで耐えよう」というやり方は、少なくとも中小企業は避けた方が良いでしょう。このやり方では「必要な人材」(優秀な人材)から辞めていってしまいます。

事業は未来に継続します。これからもビジネスを維持・拡大させるためには、それに必要な人材の流出を防ぐ必要があり、むしろ必要な人材の待遇を引き上げ「メリハリをつける」くらいのことを考えた方が良いかもしれません。

なお、ここで「中小企業では」とあるのは、大企業との給与水準の差が理由です。大企業は給与水準が、一般的に中小企業より高い傾向にあるため、給与の一律カットを行ったとしても人材が流出する可能性は低いと考えています。

経営はマラソン。朝の来ない夜はない

日本では人員削減のことを「リストラ」と呼称しますが、本来の意味のリストラはリストラクチャリング、事業の「再構築」を意味します。人員削減や不採算部門の撤退といったコストカットだけではなく、成長分野へ進出することも合わせて、事業全体を再構築していくものです。

不況の足音が聞こえる今は、この事業の再構築の絶好のチャンスと捉えることもできます。不採算事業を切り離し、新しい事業領域へチャレンジする。そのチャレンジにはメリハリをつけた戦略によって選んだ人材を起用し、新しい商品やメニューの開発を行う。

不況によって事業がいったん縮むかもしれませんが、経営はマラソンのようなものでこの先も長く走り続けることが必要です。朝の来ない夜はない、と言われるようにいつかは必ず抜けるのが不況のトンネルでもあります。

不況を乗り切り、事業をこれからも維持・成長し続けるための考え方のヒントをご紹介しましたが、ポイントとして下記の5つです。

<中村流 不況に立ち向かう方法>
・事業の撤退は早いほうがいい
・長期的に考えて経営判断を行い、短絡的な判断は避ける
・優秀な人材を残すことこそが企業の競争力の源泉になる
・不況を「チャンス」と捉えて事業や戦略の構築に挑む
・トレードオフの実現を目指すことはマネジメントの本質であり、究極の理想である

マネジメントについて今回は書いてきましたが、ご自身の「キャリア」形成でも参考にしていただけると幸いです。では、また次回お会いしましょう。

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著者: 中村亨

日本クレアス税理士法人|株式会社コーポレート・アドバイザーズ代表/ 公認会計士・税理士

富山県出身、大阪府立北野高等学校卒業。早稲田大学政治経済学部卒業後、公認会計士第二次試験合格・監査法人トーマツ(現:有限責任監査法人トーマツ)入所。2002年中村公認会計士事務所設立。後に「日本クレアス税理士法人」「日本クレアス社会保険労務士法人」「株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A」「株式会社コーポレート・アドバイザーズアカウンティング」へ組織再編。株式会社エムアウト(取締役)、日本ファイナンシャルアカデミー株式会社(監査役)など兼務。趣味はゴルフ。

■日本クレアス税理士法人
https://j-creas.com/

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