国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

KaikeiZine

注目キーワード

会計士 中村亨の「経営の羅針盤」第2回-コロナ終息後の日本企業の雇用

日本クレアス税理士法人/株式会社コーポレート・アドバイザーズ 代表の中村亨です。経営者として、また会計士としての日ごろの経験から、皆さんのビジネスやキャリアのヒントとなるようなトピックスをカジュアルにお伝えしていきます。今回のコラムでは、「コロナ後」の組織と雇用について考えてみましょう。

皆さん、いかがお過ごしですか?私は、昼は「オンライン会議」で忙しく、夜は「オンライン飲み会」が増えてきました。さて、最近思ったことは、世の中、つくづく「不」という一文字が大きく流れを変えるものだと思っています。

一つ目は「不満」。人材紹介会社さんの業績を伸ばすのは、会社で働く人たちの「不満」を「転職」という方でビジネスに変えているのが本質なのではないか、と筆者は思っています。

もう一つは「不安」。特にコロナ対応の環境下ではドラックストア業が安定的にビジネスを伸ばすのは「不安」という流れに乗っている気がします。(医療従事者はもちろんのこと、ドラッグストアを始め生活必需品を提供していただいている方々には感謝の言葉しかありません)

その他では、そうですね保険業や保証業など、いわゆるリスク対策型と呼ばれるビジネスが業績を伸ばすきっかけの一つには「不安」があるでしょう。

コロナ禍を受けて「新しい生活様式」が提唱されているように、私たちのライフスタイルは大きな転換点にあるのかもしれません。今回のコラムでは、「コロナ後」の組織と雇用について考えてみましょう。

まず言えることは、政府の「仕事は自宅で」という要請に基づく企業の対応がテレワーク普及のビッグプッシュになることは間違いなく、時間と場所を共有し、「あうん」の呼吸によるコミュニケーションで成り立ってきた日本的な職場に大きな変化をもたらすであろう、ということは雇用する側も、雇用される側も直感的に予測がつき始めていますね。

企業側は従来、通勤難の解消や、育児、要介護者を抱えた社員のワークライフバランス向上に効果がある、との受け止め方、つまりハンディを抱えた社員向けの制度と考えていたようですがその考え方が大きく転換される可能性があるということになります。

ずばり、今回のテーマはコロナ禍により「組織」や「日本型雇用」が大きく変わる、という話です。

大河ドラマに見る「組織の変貌」

さて、まず「組織」。おおよそ、「組織」というものはおおむね、共同体組織と機能体組織というものに分けられます。

歴史が好きな私ですので、今、大河ドラマで放映されている「麒麟がくる」は毎週見ていますが、ドラマの舞台設定である信長の時代で例えるなら、武家社会はもともと典型的な「共同体組織」だった、それがじっくり時間をかけて「機能体組織」に変わっていたと推測されます。

下の表で一番近い典型例で行きますと「地域社会」から「政党」「軍隊」に変貌していく、という感じですね。

出典:組織の盛衰(堺屋太一/PHP文庫)

ある時、織田信長という破天荒な武将が歴史に登場し、「天下布武」という明確な目的をもって、組織を作り始めた。

織田信長は、旧来の「地域社会」にはそこにはそこで不文律のような「ルール」があったと思われますが、そういったものを無視して、「政党のような軍隊」を作ろうした。

それがあまりにも急で過激なやり方だったので、多くの反発を招き、その一つが「本能寺の変」であった、のではないか、と推察できます。

テレワークにより「機能体組織」思考が増える

さて、現代の企業は当然に機能体組織です。

しかし、物事はそう簡単ではなく(特に日本企業は)、実際にはコンパをやったり、運動会をやったり、「居心地をよくする」工夫を会社が行うことでつなぎとめる、という機能体組織に「共同体組織」的な色彩を盛り込むことで運営しているというのが実態ですね。

(最近はかなり会社と個人をドライに切り離して考える方も多いようですが、一般には欧米人に比べて「切り替え」が苦手だという傾向にあると思います)

大企業でも倒産することがあります、或いは倒産しかかることはあります。例えば、古い話ですが、1990年代の倒産した山一證券や倒産しかかった日産自動車(その後Ⅴ字回復はしましたが)。こういった例はおそらく「居心地の良さ」だけならよかったのですが、おそらくビジネスのやり方や進め方に関する見通しが甘くなったこと、つまりは組織が緩んで、結果的に「共同体的要素」に近い組織になっていたことが原因であろうと思われます。

また、立ち上げたばかりのベンチャー企業は、オーナー社長を中心に共同体組織的要素を多く取り入れて運営していることが多いようですが成長するにつれて、機能体組織に変わっていかなければならないと認識し始めて矛盾を抱え、矛盾の克服が課題となるというのが通常の成長シナリオです。(ある意味で組織は常に矛盾を抱えます)

結論付けとしては、これがテレワークによりある程度、今後の組織は、より一層、機能体組織の色彩が強くなる(意図的にというわけではなく、それで十分にやっていけることに気づき、雇用側も雇用される側も考え方がそうなっていく)のではないかと思っています。

もちろん、それは企業の本来の在り方に近づく、ということにすぎないとも言えますが。

テレワークで日本の「メンバーシップ型」雇用は変わるか?

もう一つ「日本型雇用」の論点も避けて通れませんね。給与は何(誰)に対して支払われるか?2つ回答があり、人に対して支払われる、或いは職務(仕事)に対して支払われる。前者は人物重視、後者は職務遂行力重視。

日本は、年功序列・終身雇用・労働組合という、いわゆる「三種の神器」という存在からも分かるように、人に対して給与を払ってきました。つまり前者の人物重視です。議論をわかりやすくするために日本と欧米の違いを表にしてみます。日本は左側のメンバーシップ型(人に対して給与を払う)、欧米は右側のジョブ型(職務に対して給与を払う)です。

参考:週刊東洋経済(2015.5.30)

さて、「テレワーク」に話を戻します。このテレワーク導入企業が最も不安なのが「本当に仕事をしているのか?」ということだそうです。もちろんこれには 「出社してパソコンの前に座っていても何もしていない人もいます。信用した方が楽ですよ」という切り返しで背中を押せばいいわけですが・・・・

テレワーク導入の大前提として、業務や成果の明確化、可視化、数値化(これらはなかなか中小企業では難しい課題)が整備されていなければなりません。

日本企業の場合は「人」に対して給与を支払ってきましたので、どうしても業務の与え方が「あいまい」だといわれています。

今回のコロナ禍では、日本企業が「業務」ということをより痛切に意識し始めるよいきっかけになると思います。そのための準備を企業側も雇用される側も着々と準備を始めているかのようにも思えます。時代の流れは誰も止められません。

会社との関係が「業務」或いは「職務」中心的なものになり、「共同体的組織」的な色彩が薄くなり、ドライな関係になっていくであろう、というのが今回の結論付けの一つです。

「黒字リストラ」が雇用を直撃?!

リーマンショック後、東日本大震災を経て、アベノミクスによる景気回復を背景に人手不足が深刻化してきました。私の考えでは、この「人手不足」という環境は、大筋では変わらないと思います。

加速度を付けて普及しているテレワークによって、「共同体」として繋がってきた個人と企業の関係が変化し、今後は「業務の成果」によって繋がっていくであろう、というのは今回のコラムで述べてきたことですが、単なる労働力ではなく「成果を上げることができる人手の不足」を解消しないことには、いつまでも「人手不足」という環境は続いていくからです。

「黒字リストラ」という言葉が最近ちょくちょく聞かれるようになっていますが、これは企業側の「収益体質の強化に向けて先手を打つ動き」であり、不況の時はもちろんですが、好況の時でも見られる動きです。

企業側の備えが早いということになりますと、今のコロナ禍の状況では、この10年間で増加した65歳以上の雇用や、いわゆるギグワーカーは相当厳しいものになると思われます。

しかし、こんな時だからこそ、読者の皆様に、今、勤務している会社としっかりと対話をし、自分と向き合い、どんな時代が来ても乗り越えられるキャリア形成を目指していただきたいと思います。

(関連記事)

会計士 中村亨の「経営の羅針盤」第1回-コロナ不況にどう立ち向かうか?

———————————————————————————————————————
◆KaikeiZineメルマガのご購読(無料)はこちらから!
メルマガを購読する

おすすめ記事やセミナー情報などお届けします
———————————————————————————————————————

著者: 中村亨

日本クレアス税理士法人|株式会社コーポレート・アドバイザーズ代表/ 公認会計士・税理士

富山県出身、大阪府立北野高等学校卒業。早稲田大学政治経済学部卒業後、公認会計士第二次試験合格・監査法人トーマツ(現:有限責任監査法人トーマツ)入所。2002年中村公認会計士事務所設立。後に「日本クレアス税理士法人」「日本クレアス社会保険労務士法人」「株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A」「株式会社コーポレート・アドバイザーズアカウンティング」へ組織再編。株式会社エムアウト(取締役)、日本ファイナンシャルアカデミー株式会社(監査役)など兼務。趣味はゴルフ。

■日本クレアス税理士法人
https://j-creas.com/

ページ先頭へ