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節税に役立つ。返還不能の敷金・保証金の償却

個人事業主であれば、節税の機会は逃さず活用したいところ。今回は賃貸契約につきものである敷金・保証金について、節税につながるポイントをご紹介したい。

敷金・保証金はキャッシュフローを圧迫

最近は、ノマドワーカーのように、特定の事務所を持たずに働くことも可能となってきたが、事務所が必要とされる場合は依然として多い。しかし、新たに事務所を構えるとなると、それなりの出費が発生してくることとなる。とくに、事務所を借りる際に支払うこととなる敷金・保証金については、金額も多額となり、キャッシュフローに大きな影響を与える。

では、これらの敷金・保証金を会計処理の面から見てみよう。敷金・保証金はその性質として返還されることを前提としているため、基本的には資産計上となり、費用とはならない。一方で、当然のことであるが、キャッシュとしては支払時に一括して出ていくことになる。

結果として、多額のキャッシュアウトが発生するにもかかわらず、費用化されないため、キャッシュアウト分の税金が軽減されることもなく、資金繰りを大きく圧迫することになってしまう。

また、敷金・保証金は返還されることを前提としているとはいえ、実際は原状回復のための費用等を差し引かれ、返還金額は微々たるもの、ということもあり得る。このような敷金・保証金を早期に費用化して、せめて税金負担を軽くする方法はないだろうか。

返還不能部分の処理

前述のとおり、基本的には敷金・保証金は返還されるものという取扱いのため、賃借期間中に費用化することはできない。一般的な会計処理としては、支出時に資産計上を行い、返還された場合にはそれを取り崩し、原状回復費用等で返還されない部分が発生した場合は、その際に修繕費等で費用計上することとなる。

しかし、実は契約内容によっては、賃借期間中に費用化できる場合がある。それは、敷金・保証金のうち、一部ないし全部が退去した際に返還されないことがあらかじめ明示されている場合である。
具体的には、敷引きや敷金償却といった形で説明されたりするが、このような契約時点で返還不能と判明している部分については、税務上は繰延資産という取扱いとなる。

繰延資産とは、会社又は個人事業主が支出する費用で、その支出の効果が一年以上に及ぶものである。この繰延資産については、基本的には税法で定められた償却期間にて償却していくこととなり、今回対象としている返還不能と判明している敷金・保証金については5年間で償却することとなる。

償却により費用化された部分については、その分利益が圧縮されることとなり、結果として税金支払いが軽減され、キャッシュフローに好影響を与えることとなる。

特別な行動だけが節税ではない!

実際のケースでは、個人事業主として事務所を借りる際には、敷金・保証金の契約内容の細かい部分まで確認することがないためか、返還可能部分と不能部分に分けることなく、一括で資産計上している場合が多いようである。

しかし、同じキャッシュアウトをするのであれば、ぜひとも一歩踏み込んで敷金・保証金について返還不能部分があるかを確認し、償却を通じて費用化できるものは処理しておくべきである。

節税というとタックスヘイブン等のように特別な行動を必要とするものを連想しがちであるが、資産計上されるものを税法の範囲内で早期に費用化していくことも、十分に節税となり得る。

事業を行ううえで、キャッシュは血液と同じと言われるが、常にキャッシュフローを念頭におき、こうした節税を積み重ねることが、資金繰りの安定のために効果的である。

著者: KaikeiZine編集部

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