平成27年の日本経済は、4月に日経平均株価が15年振りに2万円台を回復するなど、アベノミクスにより上向きだったと言われているが、それを裏付けるデータを国税庁が公表した。国税庁の「平成27年分民間給与実態統計調査」によると、サラリーマンやOLの平均給与額は420万円と3年連続で増加。雇用環境の改善が続いているとともに、企業が安倍政権の要請を受けて従業員の給与引き上げに応じている結果が出ている。

国税庁が公表した民間給与実態統計調査は、民間の事業所における年間の給与の実態を、給与階級・事業所規模・企業規模別等に明らかにするとともに、租収の見積り、税務行政運営等の基本資料としている。昭和24年分から始まり今回で67回目。今回の調査結果は、標本事業所(2万789所)及びその事業に勤務する給与所得者(30万9,674 人)から得た標本値を基に全体が推計されている。

平成27年12月31日現在の民間事業所に勤務する給与所得者(国家公務員など一部事業所の従事員を除く)は5,646万人で、前年より1%(54万人)ながら増加して3年続けて過去最高を更新した。また、同年中に民間事業所が支払った給与総額も204兆7809 億円(対前年分比0.8%増)と3年連続で伸び続けている。給与所得者のうち源泉徴収義務の対象者は352万件(同0.4%増)で、復興特別所得税含む源泉徴収税額は8兆9898億円と880億円ほど増収した。

企業規模に比例して平均給与は高額

次に、昨年1月から12月までの1年を通じて勤務した者の給与実態について見る。
給与所得者数は4794万人(同0.8%増)で、こちらも過去最高を更新。給与所得者の平均年齢は45.6歳(男性45.4歳、女性45.8歳)、平均勤続年数は11.9年(男性13.3年、女性9.8年)で、平均年齢は労働者の高齢化や若者の労働形態の変化などから上昇傾向となっている。給与所得者数を男女別に見てみると、男性が2831万人(同前年比0.9%増)、女性1963万人(同0.6%増)とともに増加している。しかし、増加割合をみると、男性が25年分1.0%→26年分1.9%、女性が3.4%→3.1%だったことを考えると、女性の伸び率に急ブレーキがかかっている。
給与所得者が得た給与総額は201 兆5,347億円(同2.1%増)と、前年より4兆1,304億円増えて平成14年以来13年振りに200兆円を突破した。
この結果、給与所得者1人当たりの年間平均給与は420万円(同1.3%増)と3年連続して増加。平均給与の内訳は、平均給料・ 手当が356万円(男性437万円、 女性238万円)、平均賞与が65 万円(男性84万円、女性38万円)となっており、平均給与等の0.9%増加に対して企業の業績で大きく左右される賞与は3.7%伸びている。給料・手当に対する賞与の割合 は18.2%だ。

男女別にみると、男性は521万円(同1.2%増)、 女性は276万円(同1.4%増)。事業所の従業員規模でみると、小企業(従事員10人未満)の337 万円(男性419 万円、女性241 万円)に対して、大企業(従事員5千人以上)は503 万円(男性677 万円、女性270万円)となっている。資本金別では、資本金 2千万円未満の株式会社の360万円(男性437万円、女性237万円)に対して、資本金10億円以上の株式会社は578 万円(男性702万円、女性316万円)と、従業員数及び資本金の額ともに大きいほど給与は高額となっている。個人の事業所においては257万円(男性316万円、女性228万円)となっている。

業種別の平均給与については、 最も高い業種が「電気・ガス・熱 供給・水道業」の715万円で、 次いで「金融業、保険業」の639万円と続き、最も低いのは「宿泊業、飲食サービス業」の236万円だった。26年分と比べると介護事業などが含まれる「複合サービス事業」が約1割も伸びている。また平均給与は、その業種の景況は勿論だが、非正規雇用の割合にも大きく左右されるため、その比率が高い「宿泊業、飲食サービス業」は自ずと低額となる。ちなみに、業種別に給与階級別分布をみると、平均給与が最も高い「電気・ガス・熱供給・水道業」では800万円超の者が37.4%と最も多い一方、平均給与が最も低い「宿泊業,飲食サービス業」では100万円以下の者が28.5%と最も多くなっている。

配偶者控除等の適用者数は997万人

現在、日本の大きな問題の1つに非正規雇用の問題があるが、非正規雇用者数は1123万人(同3.0%増)、その給与総額は19兆円(同3.5%増)。平均給与は171万円(男性226万円、女性147万円)となっている。正規雇用者の485万円(男性539万円、女性367万円)とは大きな開きあり、さらに27年分は正規雇用者が1.5%伸びたのに対して非正規雇用者は0.5%の伸びにとどまり格差も拡がっている。

1年を通じて勤務した給与所得者4794万人の税金面の状況をみると、まず源泉徴収により所得税を納めている者は4051万人(同0.6%増)で、その税額は8兆8407億円(同3.9%増)にのぼる。納税者の給与総額に占める割合は4.70%だ。

また、年末調整を行った者4348万人(同0.9%増)のうち、配偶者控除や扶養控除といった人的控除の適用者は1382万人と全体の3割強で、扶養人員のある者1人当たりの平均扶養人員は1.47人となっている。内訳は、来年度税制改正の目玉の一つとして見直し議論が行われている「配偶者控除」の適用者は977万人、「配偶者特別控除」は106万人と、配偶者控除は減少し配偶者特別控除が10.3%増加している。はっきりした要因は定かでないが、いわゆる103万円の壁を超えて就労している女性が多くなってきていることが分かる。その他、社会保険料控除は3,842万人、生命保険料控除は3,123万人、地震保険料控除は730万人が適用を受けているが、この中では、東日本大震災以降全国で地震が多数発生している影響に伴う地震保険加入者の増加により、地震保険料控除が伸びている。