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第1回「僕が監査法人を辞めて旅に出た理由」【夫婦で世界一周】

監査法人を辞め、夫婦で約2年間世界一周を旅した石塚皓氏。連載第1回となる今回は、旅に出ようと思ったきっかけやそれまでの経緯について、振り返ってもらいました。

世界一周のスタートの地オーストラリアにて

まずは簡単な自己紹介をさせていただきます。僕は2006年に大学を卒業し、そのまま船舶を扱う事業会社に就職しました。2年ほど働いた後に、「専門的な技術、知識を得たい」との思いで公認会計士試験の勉強を開始。2009年の試験で合格するとともに監査法人に就職し、国内監査部門で4年ほど働いてから2014年に退職。それから約2年間、夫婦で世界一周の旅をしていました。

そんな僕が今年3月に日本に戻ってきてから、KaikeiZineという場で記事を書かせて頂くことになったのは、夫婦で書いていたブログ「食寝飲笑」を通じて。
今回は第一回目ということで、「僕が監査法人を辞めて旅に出た理由」について書かせていただきます。

僕は学生時代、30カ国以上を訪れており、また卒業後も仕事の合間や会計士試験合格後の期間などを使ってエベレストに登ったり(もちろん途中までですが)、ミャンマーで飲んだくれたりといったことをしていました。僕にとって旅は熱病のようなもの。基本的には出不精でインドア派なのですが、時折無性に知らないところに行ってみたくなるのです。

一方、妻はそれまでに海外を訪れたのはハワイのみという国内派。結婚してから一年後に、二人揃って仕事を辞めて世界一周をすることは全く想定していなかったようです。この旅した二年間、たくさん辛いこともあったと思いますが、僕のわがままを聞き入れ、そして支えてくれた彼女にとても感謝しています。

監査法人を辞めた理由

ラクダに乗ってモロッコのサハラ砂漠を行く妻

さて、どうして監査法人を辞めてまで旅に出たのか。監査法人にいればある程度の収入は見込め、また妻は学校に勤務していましたので、実際のところ比較的安定した生活をしていました。
もちろん僕が旅好きであることは理由の一つですが、それだけで二人で仕事を辞めたわけではありません。修了考査に合格し、公認会計士の登録に必要な実務経験も得たこと、繁忙期の忙しいスケジュールに疲れを覚えたこと、監査業務をある程度経験し、新しい環境に移りたいと感じた…など理由は色々と挙げることが出来ます。

そんないくつかある理由の中で、最も大きかったのが「結婚」。僕たちは2013年に結婚しましたが、お互いに忙しく、また仕事の時間帯がズレていることから、平日に言葉を交わすことは稀。祝日もどちらか、もしくは二人とも仕事をしていることもあり、少しずつ「このままでいいのかな?」「後から振り返って納得できる生き方なのかな?」という疑問が生じ始めました。その前年頃からインターネットで旅関係のブログを読み漁るようになっており、夫婦で旅をして色々な経験を共有したいと思うようになりました。

ただ、辞めた後はどうするのか?社会人であれば必ず向き合わなければならないテーマです。僕が退職した当時の年齢は31歳。日本に帰ってきて、日本で働くのであれば、もう時間的な余裕はない。というか遅すぎるぐらいです。タイミングとしてはギリギリ(アウト?)。そうは言っても、やるかやらないかで悩むのであればやるべきなのではないか、やらないで後悔するぐらいならやって後悔しよう。将来のことはいくら考えても分からないし、どうせ自分たち二人の人生なんだから、二人が納得すれば何を言われようとも、それはそれで受け入れることが出来る。そのように考えて監査法人を退職することに決めました。

夫婦でいろんな経験を共有したい

アフリカ旅のハイライト・サファリで見かけたゾウの家族。両親が前後を歩き、その間を子供のゾウ達が歩く姿はほほえましい。

就職もせず旅をするために退職となれば、周囲からは「何を考えているんだ?」「その後の生活はどうするの?」「何のために旅をしたいの?」「それが何になるの?」と何度も聞かれました。また、出発する前には、友人や同僚、また両親など、さまざまな人たちから「目的は?」という質問に遭いました。僕の両親は「またか…」という風に諦め気味でしたが、妻の両親は特に困惑したことだと思います。結婚して落ち着き、というところで二人そろって仕事を辞めてしまうのですから怒られて当然だと思いますし、申し訳ない気持ちもありました。

南太平洋に浮かぶ絶海の孤島イースター島にて。旅の最中は自分と向き合う時間も増える。

「何のため?」という問いですが、普通は「その行為はどういった目的で行われ、何の点でプラスになるのか。そしてその後どう活かしていくのか」といったロジカルな答えが求められると思います。僕の場合、こと旅に関して、こういった問いにしっかり耐えられるだけの論理的な答えは持ち合わせていませんでした。心境は、ドイツの文豪ゲーテが言ったとされる「人が旅をするのは到着するためではなく、旅をするためである(Man reist ja nicht, um anzukommen, sondern um zu reisen)」、その通りで、自分の場合は単に旅が好きなのです。異なる文化や人々に触れ、土地の風景や飲食を楽しむ。そして、今までと異なる考え方や新しい経験をしていく。結婚を機に、そういった経験を妻と共有したいと強く感じるようになりました。

「なぜそれをするのか」という問いは、「それをしない以上に重要なことがある」ことが裏側にあると思います。自分の場合、「このタイミングで二人で旅をしない以上に重要だと感じられること」は探しても見当たりませんでした。また今となっては「なぜするのか?」と同じぐらい、むしろそれ以上に「何をする?」「したのか?」も重要であり、結果や行為に対する判断はあとからついてこともあるのかなと感じる部分もあります。

論理的に物事を考えなければならない会計人として、果たしてこれでいいのかとも思いますが、正直なところ、旅をする理由は「旅が好きだから」。そしてこのタイミングで仕事を辞めて旅に出た理由は「旅の経験を人生のパートナーと共有することが、自分たちの今後の人生にプラスになると思うから」。それしかありません。

マダガスカルで見たバオバブに落ちる夕陽は最も印象的な風景の一つ

なぜ旅をするのか。この原稿を書きながら改めて考えていて、旅をしているときに知ったアメリカの小説家マーク・トウェインの言葉「今から20年後、あなたはやったことよりやらなかったことに失望する(Twenty years from now you will be more disappointed by the things you didn’t do than by the ones you did do.)」というものをふっと思い出しました。

会計や税金に関するニュースを扱う専門メディアKaikeiZineにて、2年以上会計的なトピックから離れている自分がこうして寄稿させていただいことについては、実際戸惑う部分もあります。ですが、僕のように会計士としての立場をいったん離れて旅をすることも、一つの選択肢としてありうるということを知ってもらういい機会になるかもしれない。そう考えて旅の経験を書かせていただくことに決めました。どうぞ宜しくお願い致します。

著者: 石塚皓

旅人会計人

2006年に大学を卒業。事業会社へ就職し、「専門的な技術、知識を得たい」との思いで公認会計士試験の勉強を開始。2009年試験合格とともに監査法人に転職し、4年ほど国内監査業務に従事し2014年に退職。その後約2年間、夫婦で世界一周の旅を経験して帰国した旅人会計人。

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