国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

世界一周 その後の選択肢-旅を終えた人は何をしているのか 後編

前編に引き続き、「世界一周を終えた人はどんなことをしているのか?」についてご紹介します。

旅の後の選択肢 公認会計士のケース

前編では自分の出会った方々の話を中心に、旅人のその後の姿をご紹介してきました。ところで、旅を終えた公認会計士にはどのような選択肢があるのでしょう?残念ながら旅の途中に出会ったことはないのですが、こちらも様々なケースがあるようです。

専門職は強い!

具体的な話の前に、専門職について触れておきます。

旅人の属性として、会計士の他、教師、看護師といった有資格者の割合が高い印象です。日本での再就職を考えた場合、一般的に有資格者、すなわち専門職が有利であることは否めません。また、資格があるからこそ、仕事を辞めてもなんとかなる、と考えるのではないでしょうか。

実際、これらの方々が日本に帰った後、就職で困ったという話を聞いたことはありません。

現在、日本では少子化による人手不足を背景に、新卒・転職者ともに売り手市場と言われます。転職サイトなどを見てみると、多くの会社で、中には誰もが知っている大企業でも中途採用を行っていることが分かります。ただしAIの発達、景気後退局面にある可能性、コロナウイルスの影響などを鑑みると、今のような状況がいつまで続くかは分かりません。とすると、やはり資格取得は一つのリスクヘッジになるのではないでしょうか。

逆に考えると、将来旅に出たいと考えている場合、なにがしかの資格を取っておくことには妥当性を感じます。

事業会社

まず思いつくのが、事業会社の経理/財務部門でしょうか。公認会計士試験合格者の多くは監査法人に入ることを前提にすると、出来上がった数値をチェックする立場から、財務諸表を作る側になり、数字をもって経営層や投資家とコミュニケーションをとってみたいと考える方や、また財務的な観点から会社という組織の意思決定に加わりたい、と考える方も少なくないのではないでしょうか。ちなみに、僕も事業会社の経理部門を選択しました。

事業会社への再就職に当たり、会計士の資格は助けになると思います。2年間の旅の後、僕のキャリア・履歴書がいくつかの会社の目に留まり、面接&内定となった背景に資格の存在があったことは間違いのないところです。

ただし、事業会社(外資、ベンチャーは不明)では旅の経験が評価されることはあまりなく、キャリアのブランクを否定的にとらえることも一般的と言って差し支えないでしょう。そう考えると、元も子もない話になりますが、自分の希望する事業会社に入れるかは、その人のキャリア、コミュニケーション能力等に左右されそうです。

監査法人、ファーム

従来のキャリアを活かし、監査法人やコンサルティング・ファームを検討するのも一般的ではないでしょうか。こういった業界では、恒常的に人手が不足していることもあるのか、「旅をしていたから」「キャリアにブランクがあるから」といったことが直接マイナスになることは少ないと考えます。むしろコンサルでは肯定的にとらえるところもあるでしょう。

ただし、監査法人やファームは比較的勤務条件が厳しいと考えられ、特に長時間労働の可能性が否定できない点はポイントになりそうです。ある程度のスパンで旅をしていると、帰国後にスーツを着て満員電車に乗り、夜中までオフィスの椅子に座ってパソコンと向き合うというのは、ややハードルが高い印象です。プライベートを重視する方にとって、この選択肢はどうでしょうか。逆に、旅の後、社会人としての生活が恋しくなっている方には悪くないかもしれません。

海外のファーム

英語が使える会計士でしたら、海外のファームで職探しをすることも考えられます。人づてで聞いた話ですが、旅の途中でBIG4の現地事務所に直接応募&入社したケースもあるとか。現地採用になるので報酬水準はチェックする必要はありますが、気に入った場所にBIG4、その他のアカウンティング・ファームがあれば、有力な選択肢になるかもしれません。

僕が訪れた大都市では、必ずと言っていいほどBIG4のオフィスが一等地にありました。キャンプ生活を送っていたオーストラリアのメルボルンで、遠くから見たBIG4のオフィスがとてもまぶしく見えたことを覚えています。

海外のファームに関して言うと、運よくコネクションがあればいいのですが、そのようなケースはあまり考えづらいのではないでしょうか。応募したいファームが見つかったとして、知り合いなどおらず、何のつてもない場合、レジュメ片手にいきなりアポイントを取るという行動力が必要です。とはいえ旅に出るような方は、この辺りはあまり苦にならないかもしれません。

独立開業

こちらも直接確認したケースではないですが、〇〇会計事務所などを開設することも選択肢としてはありえます。しかし、長期間、日本と仕事を離れていた方が、いきなり顧客を獲得するのはさすがに難しいのでは、という印象です。現実的には、帰国後、しばらく監査法人やコンサルティング・ファームで働き、お客さんになってくれる会社を見つけ、関係性を作ってから独立開業、という流れでしょうか。

もし監査法人時代の同期や補習所の知り合いなどが独立開業している場合、コンタクトをとってみるのも一つの手かもしれません。実際、決算支援、バリュエーションなど、独立会計士が求められているケースはしばしば耳にします。

また、実家で会計事務所等を経営しているのであれば、クライアントは担保されているはずですので、あとは知識のアップデートが必要な程度ではないでしょうか。このケースだと、旅をしたい人にとっては非常に恵まれているように思えますが、家族との関係性が鍵になりそうです。

監査法人の非常勤

ある程度の自由は保ちつつ、日本で働いてそこそこの報酬を得たいという方には、監査法人の非常勤勤務という選択もあります。特に中小規模の監査法人では、各種の規制対応や新規クライアントの獲得などにより恒常的に人手が不足しているようです。大手監査法人では監査にAIの導入を進めているとの報道もあり、今後も現在のような人手不足が続くかは分かりません。それでも、現状では一定の報酬水準が担保され、かつフレキシブルな働き方が可能である監査法人の非常勤勤務は、旅の後の選択肢として魅力的に映りますが、どうでしょうか。

長期的に雇用が確保されるわけではありませんが、短期~中期的な手段として、また将来の独立や勤め人への復帰等を考える方にとっても、非常勤勤務は検討に値するのではないでしょうか。

最後に

以上、旅の後の選択肢について、一般的なケースと会計士のケース、2回に分けて書いてきました。長期の旅の後もいろいろな選択があり、また何度か言及したところですが、少子高齢化により労働力不足となっている現状では、旅の後、企業に再就職することも以前ほどハードルは高くないと考えられます。

会計士に関しては、国家資格という後ろ盾に加え、独占業務である監査という選択肢もあります。従って再就職そのものも比較的容易でしょうし、さらに一定の報酬水準も確保できると想定されます。もちろん年齢的な制約はあるでしょうが、カツカツの生活になるといったケースは稀と言えそうです。

そもそも、日本のような比較的経済的に恵まれた国(相対的に弱くなったとはいえ、いまだ世界第3位の経済規模)にいるのであれば、資格の有無にかかわらず、自分のやりたいことを優先できるように思います。とはいえ、帰国後の生活に不安を覚えるのであれば、リスクヘッジ手段として資格取得は有用と言えるのではないでしょうか。

旅をしたいと考える皆様にとって、少しでも有益な情報になりましたら幸いです。

 

著者: 石塚皓

旅人会計人

2006年に大学を卒業。事業会社へ就職し、「専門的な技術、知識を得たい」との思いで公認会計士試験の勉強を開始。2009年試験合格とともに監査法人に転職し、4年ほど国内監査業務に従事し2014年に退職。その後約2年間、夫婦で世界一周の旅を経験して帰国した旅人会計人。

ページ先頭へ