2020年4月7日、安倍晋三首相より東京など7都府県を対象に緊急事態宣言が発令され、私たちの生活や経済への影響が懸念されています。経済活動が落ち込むと人材の採用にも大きな影響があります。今回の記事では会計業界の人材採用について、新型コロナウイルス感染拡大の現在の影響を分析し、今後の動向を考察します。

会計業界の採用状況

まずは正社員の採用について4月9日時点での状況をまとめます。

会計業界に特化して人材総合支援をしている株式会社レックスアドバイザーズのコンサルタントが一部のクライアントに対して急遽電話やメールなどでヒアリングを行いました。

(全99社:監査法人 6社、コンサルティングファーム 23社、税理士法人・会計事務所 70社)

 

(レックスアドバイザーズ調べ:2020年4月9日時点)

 

全体の68.7%に関しては採用状況に変更なしですが、全職種での採用ストップが10.1%、一部職種での採用ストップは9.1%あり、2割にあたる法人で採用ストップの影響が出ています。

理由としては、「全社員が在宅勤務をしているため採用活動ができない」「オフィス勤務を継続しているが、感染リスクを減らすため、商談や採用の来訪をストップしている」などが挙げられました。

検討中や不明の法人も1割強ありますので、追跡調査を実施していきます。

その他の回答の中には、「再生の案件増加が見込めるので、増員募集を検討している」というものもあり、ピンチをチャンスに変えようとさっそく動いている法人もあるようです。

 

また、すでに採用が決まっている人材(内定者)がいる場合、初回出勤日を延期するという動きも出ています。これは全社在宅勤務である、または感染拡大防止のためという理由が挙げられています。

現時点では、中途採用・新卒を問わず、内定取り消しの動きは出ていないようです。

しかし、経済状況が悪化すれば採用への影響も拡大し、「内定を出したが取り消さざるを得ない場合、どうしたらよいのか」「入社日を延期にした場合どのようなことが考えられるのか」など、経営者が判断を迫られる局面が今後増えてくるかもしれません。

 

次に、採用手法についての状況です。

 

(レックスアドバイザーズ調べ:2020年4月9日時点)

 

一部面接をWebに変更したのは27.6%、全面接をWebに変更したのが17.3%と、あわせて44.9%もの法人がWeb面接を取り入れています。

これまで、一部では遠方からの応募者に対してWeb面接を実施していた法人もありましたが、今回、一気に加速したといえるでしょう。

採用手法変更無しの法人の中には、もともとWeb面接を実施していたところもあるため、半分以上の法人がWebでの面接を取り入れていることが推測されます。

一次面接のみWeb、最終面接以外はWebなど、対面での面接も並行して実施している法人では、「面接開始のすこし前の時間から、部屋の換気を十分に行っている」「マスク着用を必須にした」などの対策を実施しているとのことです。

 

リーマンショック時の会計業界の採用

不況といって思い浮かべるのは2008年リーマンショックではないでしょうか。

原因も状況も異なりますが、記憶に新しいリーマンショック不況の際の会計業界の採用状況について振り返ってみましょう。

 

【監査法人やFAS系コンサルティングファーム】

M&A、内部統制導入、IPO支援などの案件を多数抱えていた監査法人やコンサルティングファームでは、案件ストップや受注減が顕著となりました。

大手監査法人が希望退職を募ったことは会計業界内では有名な話ですが、コンサルティングファームからも多くの公認会計士が転職市場に流出しました。

この時期は論文式試験に合格した会計士試験合格者は監査法人に就職できず、会計士の就職氷河期とも呼ばれています。

 

【会計事務所(税理士法人)】

SPCやファンド系業務を主としていた事務所では、リーマンショックの影響が直撃し、案件が激減したといわれています。

また、企業の海外進出アドバイザリー、組織再編やM&Aにともなう税務コンサルティングを多く行っていた大手税理士法人などでも案件が減っています。

リストラという目立った動きは多くありませんでしたが、採用をしぼったり、昇給の幅が減ったりするなどの影響があり、経験豊富な人材がチャンスを求めて転職をするという傾向となりました。

 

中小の会計事務所・税理士法人では、クライアントの業績悪化や倒産があった場合は経営への影響を免れませんが、法人顧問という立場はクライアントにとってなくてはならない存在であるため、大きな影響はなかったようです。

苦しい経営状況に適切なアドバイスをするなど、クライアントとのつながりを強くした事務所も多くありました。

 

会計事務所(税理士法人)では、人員削減の動きは目立ちませんでしたが、長引く不況下での倒産数増加や顧問料アップの期待ができないなどの警戒感から、採用については絞る傾向が強くなりました。

採用側が選考ハードルを上げ、優秀な人材を確実に獲得するという方向にシフトしたため、スタッフ層ではなく、リーダーやマネージャー層の転職が見られました。

 

【リーマンショック後の動き】

景気が回復に向かうと企業活動が活発化し、積極的な事業投資も進みました。監査法人、コンサルティングファーム、会計事務所いずれも新規の案件が増加。もともとの人手不足と相まって、一気に採用難へと逆転しました。

人員が足りず、新規の案件を断ったり、在籍者の労働時間が増加したりすることになり、会計業界は常に人を求めるという売手市場となっています。

 

今後の会計業界の採用について

リーマンショック時には経済の落ち込みが企業活動に大きな影響を与え、企業を支える会計業界も多少の影響を受けました。

しかし、その後景気が回復に向かうと企業活動が活発化し、会計業界も連動して状況は上向くと考えられます。

先がわからない時期は採用に躊躇する傾向がありますが、大手法人出身者や経験豊富なベテランが転職市場に流れてくるタイミングでもあるため、なかなか採用の難しかったリーダーやマネージャーなどのポジションを獲得するという攻めの採用ができるともいえます。

 

 

今回の記事では、新型コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言に伴う会計業界の採用市場について、現状の分析と考察をしました。

依然として今後の見通しを立てることが難しい状況ではありますが、各社の動向や今後想定される状況についても参考にしてみてください。

この機会を前向きにとらえて皆様の今後の発展につなげていただければと思います。

 


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