前回、公認会計士の平均年収と世帯年収1,000万円以上の平均支出をもとに、FIREの実現可能性を検討しました。そこでは、ある程度高収入な仕事に就いていたとしても、統計上FIREは難しい状況が窺えました。
今回は、FIRE達成に必要なポイントを検討していきます。
前編『FIREと公認会計士:3.公認会計士からみるFIREの実現可能性(前編)』
(5)支出の最適化
FIREを達成する上で、まずは自分でコントロール可能な項目から見てみます。資産形成の公式「(収入―支出)+資産×利回り」のうち、支出が該当します。
支出の最適化を進める上では、金額の大きい費目、いわゆる「3大支出」(教育・住宅・老後にかかる支出。なお保険を含めるケースもあるようです。)や固定費に着目するのが効果的です。電気のスイッチをこまめに切ったとしても、それでカットできる費用は月に数円~数十円程度であり、気持ちの部分はともかく、家計全体に与える影響はほとんどないのです。
総務省の「家計調査年報(家計収支編)平成29年」より、税金・社会保険料を除く月間支出62万4,065円(住居費調整済み)の内訳を見てみましょう(※1、2)。金額順に、住居費20万4,101円、食費9万3,348円、交通・通信6万6,180円、教養娯楽費4万7,253円、教育費3万8,047円となっており、この5つで44万8,929円、全体の7割以上を占めています。
これらの支出に対しては、住宅ローンの借り換えによる金利の削減、外食や交際費の見直し、格安SIMやキャリアのサブブランドへの切り替えによる通信費の削減などで、毎月数万円~十数万円の支出削減は可能かもしれません。特に固定費の削減は、手続きが面倒ではあるものの、一度取り組めばその後は自動的に毎月の支出を削減できることから、費用対効果は悪くありません。
上位5つには含めていませんが、その他の消費支出9万9,584円に含まれている保険料も金額的には重要です。公益財団法人 生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、年収1千万円以上の世帯では、平均して年間61万円、月にすると5万円を保険に支払っています(※3)。
必要な保険は家族の健康状態や子供の人数などによるでしょうが、日本では公的な医療保険が整備されており、万一に備えた遺族年金の存在も鑑みると、見直しの余地があるかもしれません。具体的には、そもそも独身であれば生命保険自体の必要性を検討する、契約する場合もコストの安いネットの保険会社を利用する、貯蓄性ではなく掛け捨て型を検討する、などがあります。
ちなみに僕の場合、月2~3千円の収入保障保険に入っているのみですが、ファイナンシャル・プランナーによるライフプランニングでは、特に問題とされませんでした。
世帯年収別の保険料
公益財団法人 生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」より引用