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FIREと公認会計士:1.自由な生き方を探る、FIREムーヴメント

経済的に独立し、自由な生活を送る―アメリカのミレニアル世代を中心に広がっているFIRE。昨今、日本のメディアでも取り上げられることの多いFIREムーヴメントは、旅好きな僕にはとても魅力的な生き方です。今回から5回に渡り、FIREについて公認会計士の視点から取り上げてみます。

(1)FIREとは

Financial Independence, Retire Early、略してFIRE。Wikipediaによると「経済的独立と早期退職を目標とするライフスタイルを啓蒙するムーブメント」であり、また「FIRE 最速で経済的自立を実現する方法」(Grant Sabatier著)によると、「雇われ仕事をすることなく不労所得だけで毎年の生活費を賄えるよう貯蓄と節約に励み、出来るだけ早くリタイアしようとする考え方」とされています。

僕個人としては、経済的な自立、すなわちお金の面で組織や他人に依存しない状態になることで、お金のために働く、あるいはお金のことで不安を感じることから解放され、結果として他人や仕事ではなく、自分が本当に望むことに時間を費やせる人生だと理解しています。

(2)米国ミレニアル世代のムーヴメント

僕がFIREを知ったのは、2年間の旅から日本に戻り、再びサラリーパーソンとして働き始めた直後の2017年。覚悟はしていたものの、それまでの自由さ、身軽さと、組織に属するサラリーパーソンという環境の変化に、早くもついていくのが大変だと感じていた時期です。「人生100年時代」「一億総活躍社会」などというワードにもげんなりしていた頃に出会ったFIREという考え方、ライフスタイルは、大きな驚きでした。

何より目を引いたのが、ミレニアル世代(1981~1996年生まれ)を中心にしたムーヴメントであること。この定義によれば僕もミレニアル世代に分類されますが(1983年生まれ)、同世代あるいは自分より社会人生活の短い人たちがミリオネアとなり、経済的に自立し、早期退職しているという事実は、それまで夢想はしても真剣に考えたことがありませんでした。

 

旅の間は自由だったとはいえ、常に頭を悩ませていたのがお金のこと。当時、限られた予算を全額預金で持っており、当然のように残高は右肩下がり。利息はほとんど期待できず、お金を取り崩すだけでは2年間が精いっぱいでした。自由な生活を送りながらも、どうやって節約しよう?というのが僕の頭の結構な割合を占めていました。あの時、自分たちが経済的に自立することができていたら?お金の悩みなく旅ができるというのは、想像しただけでワクワクしてしまいます。

(3)FIRE実践者

欧米では20~30代でFIREを実践する人がいます。例を挙げると、FIREムーヴメントの火付け役と言われているMr. Money MustacheことPete Adeneyさんは30歳、上記で引用したGrant Sabatierさんは31歳、今年、日本でも著書を出版したKristy ShenさんとBryce Leungさんのカップルはそれぞれ31歳、32歳でFIREを達成したそう。

 

それぞれのおおまかな資産額を書いておくと、

  • Pete Adeneyさん:金融資産60万ドルと20万ドルの自宅
  • Grant Sabatierさん:金融資産125万ドル
  • Kristy ShenさんとBryce Leungさん:金融資産100万ドル

となっています。

 

彼らのブログ、書籍を見ると、FIREの背景には収入が比較的高い先進国(アメリカ、カナダ)で働いていたことや、世界金融危機(いわゆるリーマンショック)後の好調な株式市場の影響があったことは確かです。ここで、日本で収入を得て、日本で暮らしている僕たちにとって、あまり関係がないのでは?という疑問が浮かぶかもしれません。

 

日経新聞において、2020年5月4日に「働き盛りの男性2人がサラリーマン卒業を決意した理由」という記事が掲載されており、ここで登場するうちのお一人は、日本で働きながら30歳でFIREを達成されています。この方はブログで情報を発信されており、そこではご本人の取り組みがリアルタイムで書かれています。誰にでも同じやり方が出来るかと問われると難しいかもしれませんが、少なくとも日本でFIREを達成している人がいることは分かります。

(4)経済的独立、早期退職、自由

ここで改めてFIREについて考えてみます。「Financial independence, Retire Early 経済的に独立し、早期退職する」という文言からは、経済的独立、ないし早期退職が目的だとも思えます。Googleで検索してみても、経済的独立のための資産運用方法や、資産運用を通じた早期退職へのプロセスなどが多く表示されます。

それでは、仮に1億円(この金額が十分かはさておき)を貯蓄し、働いている会社や組織を退職した場合、それをもってFIRE達成ということになるのでしょうか?

個人的には、経済的独立あるいは早期退職はプロセスないしツールであって、目的は別のところにあるのでは、と考えています。例えば僕の場合、旅は好きですが、前回のようにお金の悩みを抱えながらだと心底楽しむのは難しい、ということを経験的に理解しています。もし1億円が手元にあり、運用によって旅に必要な資金を得ることができており、その上で自由気ままに旅をしているのであれば、これが僕にとってのFIREではないでしょうか。

先述のGrant Sabatierさんは、著書の中で「経済的自由の完成形」を「自分の時間を使ってやりたいことをやれる」状態であるとしています。また早期退職については、リタイアという言葉を「二度と働かないという意味ではなく、十分なお金をもっているため二度と働く必要がないという意味で使っている」としています。

 

以上から、僕の理解として、FIREとは経済的独立あるいは早期退職そのものを目指す考え方、ライフスタイルではなく、「十分な資産を持つことでお金の悩みや心配から解放され、お金や他人のために自分の時間をささげるのではなく、自分のやりたいことに時間を費やすことができる生き方」と捉えており、一言で表せば「自由」になります。

 

「FIREと公認会計士:2.FIREへのアプローチ」に続きます。

 

【参考・出典】

・Pete Adeney,”Mr. Money Mustache”,https://www.mrmoneymustache.com/

・グラント・サバティエ,FIRE 最速で経済的自立を実現する方法,朝日新聞出版,2019年

・クリスティー・シェン, ブライス・リャン他,FIRE 最強の早期リタイア術――最速でお金から自由になれる究極メソッド,ダイヤモンド社,2020年

・働き盛りの男性2人がサラリーマン卒業を決意した理由 アーリー・リタイア成功への道(上),日本経済新聞,https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58529410X20C20A4000000/


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著者: 石塚皓

旅人会計人

2006年に大学を卒業。事業会社へ就職し、「専門的な技術、知識を得たい」との思いで公認会計士試験の勉強を開始。2009年試験合格とともに監査法人に転職し、4年ほど国内監査業務に従事し2014年に退職。その後約2年間、夫婦で世界一周の旅を経験して帰国した旅人会計人。

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