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FIREと公認会計士:2.FIREへのアプローチ

前回「FIREと公認会計士:1.自由な生き方を探る、FIREムーヴメント」では、欧米のミレニアル世代による一大ムーヴメント、Financial Independence, Retire Early (FIRE)の概要をご紹介しました。
実際にFIREを達成するにはある程度まとまった規模の資産が前提となるケースが多いことから、今回は資産形成のアプローチについて検討してみます。さらに、必ずしも大きな資産を必要としないタイプのFIREもご紹介します。

FIREへのアプローチ

実際に、どうすればFIREを達成することができるのでしょう?

経済的独立を達成すること、すなわちお金の悩みや心配から解放され、またお金のために時間を費やすことなく自分の好きなことに時間を使うことができる状態に達する。アメリカでは100万ドル、現在のレートだと1億円程度の資産形成が一つの目安になっているようです。さしあたり、ここでは1億円を一つの目安とします。

しかし、いきなり1億円貯めるというのは、なかなか現実的ではないと思いますので、どうやって十分な資産を形成していくのか、順を追って説明していきます。なお、僕は1億円の資産を持っている訳でもなく、パーソナル・ファイナンスの専門家でもありません。単なる旅好きの一見解としてご参照ください。

(1)資産形成の公式

まずは資産形成の公式です。

「(収入―支出)+資産×利回り」

ここから、資産形成には「①収入」「②支出」「③資産」「④利回り」という4つの要素があることが分かります。収入を増やす。支出を減らす。そして資産を増やし、資産運用の利回りを高める。資産形成を考える場合は、この4つに着目すると取り組みやすいと言えます。では、それぞれ見ていきましょう。

 

① 収入

給与は伸び悩み、また税負担・社会保険負担が増加している。そして、少子高齢化を背景に今後さらに負担が増えるだろう。そのことを考えると、よほど高収入かつ安定的な大企業に勤める場合を除き、終身雇用と年功序列を前提とした僕たちの親世代と同じやり方、同じ考え方でFIRE達成に十分な収入を確保することはおそらく厳しいでしょう。

アメリカのFIRE実践者たちは、YouTubeやブログ、アプリ開発などによる収入の複線化、あるいは資格の取得や転職、昇格を通じた給与の増加という手段をとっているようです。前者は様々なアイディア、スキル、何よりもやってみる決断力が必要になります。後者については、日本の雇用環境を鑑みると、一部を除いて、転職を通じた劇的な給料アップや昇格による大幅な昇給はなかなか考えづらい気がします。

個人的にも、FIREを考える上で収入にフォーカスはあまり当てていませんが、これは考え方によると思います。実際、若くして経済的自由を達成するには、高収入な仕事につくか、自分で事業を起こすか、Youtuberなどの儲かる副業を行うか。あるいは宝くじ、FX、株式のデイトレードで一発当てるか。潤沢な収入源や強運がある方が有利なのは言うまでもありません。

ただし、こういった要素がないとFIREは達成できないのか?これはまた別の問題です。後述するように、FIREにはいくつかのタイプがあり、必ずしも高収入や多額の資産が要件にはなるわけではありません。

 

② 支出

こちらはある程度、個人の裁量で改善できる項目です。

ネットでもよく見かけますが、大きな出費(例 住宅費、教育費、車代)と固定費(例 通信費、保険代、水道光熱費)の2つを削減できれば、それだけでかなりの効果があります。住宅、教育、車に関する出費は個々人で見方が分かれるでしょうが、仮にコスト面に着目してうまく削減できれば、人生におけるキャッシュ・フローは大きく改善すると見込まれます。また固定費は、変更するときは面倒ですが、一旦手続きしてしまえば生活の質にはほとんど影響なく、それでいて継続的に支出を削減する効果があります。具体的にはスマホを格安SIMに変える、電力自由化を利用する、過剰な保険はカットする、などです。

資産形成を考える上で、支出の削減はもっとも手っ取り早く、かつ自分でコントロールできる部分です。ただし削減しすぎるとケチと言われたり、味気ない毎日になってしまったりというマイナス面もあります。節約を考える上で個人的に使っているのは、「支出の最適化」という言葉。なんでもかんでも支出を削るのではなく、自分が大切だと感じていることや、幸福度を高めることには、ある程度費やした方が楽しいだろうな、と考えています。

 

③ 資産(純資産)

収入と支出の差額を積み重ねていくと資産になります。会計に馴染みがある方にとっては純資産という言葉がしっくりくるのではないでしょうか。個人のお金について考える場合、収入や支出も重要ですが、より(純)資産に重点を置くべきだと考えています。

遺産の相続でもない限り、もとから(純)資産が十分にある人は少ないでしょうから、まずは収入の増加に取り組み、支出をコントロールすることで(純)資産を増加させていく必要があります。ここが大きくなってくると、次の利回りが重要になってきます。

 

④ 利回り(資産運用)

資産運用で推奨されることの多い、国際的に幅広く分散された株式インデックス・ファンドの利回りは7%程度とされています。個別株でテンバガー(10倍株)を狙うといった手法もありますが、ここでは再現性を重視して上記インデックス・ファンドの利回りで考えます。

利回り7%を基準とすると、投資元本に対する一年間の期待利益は、

 元本10万円だと期待利益7千円

 元本100万円だと期待利益7万円

 元本1000万円だと期待利益70万円

 元本1億円だと期待利益700万円

となります。

FIRE達成における資産額の目安とした1億円を国際株式インデックス・ファンドに投資すると、理論的には700万円の投資収益が期待でき、この金額は多くの人の生活費のすべてもしくはある程度をカバーできるのではないでしょうか。

なお、ここでは説明のため税金・手数料等を考慮しておらず、また株式のリスクにも触れていません。実際にはこれらの要因により利回りは下振れする可能性がありますし、退職後、全ての資産をインデックス・ファンド含む投資に回すのはかなりリスキーな印象です。個人的に、資産運用シミュレーションでは、保守的に4~5%程度の利回りを用いることが妥当と感じます。

 

以上、資産形成の公式を通じ、4つのポイントを見てきました。独立、昇格、転職、副業などにより収入を増やし、金額の大きい出費や固定費を中心に支出を減らし、適切な資産運用を通じて資産を増加させる。そして、資産が生み出す利益が生活費を上回れば、経済的独立を達成できることになります。

①の収入の面では、一朝一夕に増やすことは難しいものの、②支出の削減と④利回り(資産運用)については今日からでも取り組むことができます。FIREを意識するのであれば、この2つから考えてみてもよさそうです。

 

(参考:4%ルールと72の法則)

資産運用やFIREで言及されることの多い、2つのルールを見ておきます。

・4%ルール

トリニティ・スタディと呼ばれる退職後の資産運用に関する論文によると、一定の条件の下では、資産総額の4%ずつ毎年取り崩しても資産がなくならないとされており、これが「4%ルール」としてFIREを支える基本的な考え方になっています。このルールに従えば、4%の逆数、つまり生活費の25倍を貯めることが一つの基準となります。

トリニティ・スタディにおける「4%ルール」はアメリカの退職者を対象としており、日本でそのまま当てはめられるかは疑問がありますが、それでも参考にはなると思います。

・72の法則

これは何年でお金が倍になるのか、簡単に計算できる法則のことです。

例えば、

利回り6%の投資商品の場合、72÷6=12→12年で投資元本が倍になる

利率18%の消費者金融ローンの場合、72÷18=4→4年で借金が倍になる

上記計算は大体の年数を算出するものであり、また複利を前提としていることにも留意が必要です。2つ目のローン計算において4年で借金が倍になるためには、元本、利息ともに一切返済しないことが条件ですが、実際、そのようなケースは想定しづらいと思われます。とはいえ、シンプルで使いやすい法則ですので、覚えておくと便利です。

正確なシミュレーションが必要な場合、金融庁や証券会社の積立計算等の利用をお勧めします。

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