他の企業を買収・合併するM&Aが、個人でできるのをご存じですか?その「個人M&A」の方法やメリット・デメリットなどを詳しく解説します。

近年、会社ではなく個人が企業を買収する「個人M&A」が増えています。

マッチング業者の普及により、現在は個人でも資金さえあれば簡単に企業を買収することができるようになりました。

ですが、「企業買収と言われても、実際どうすればいいの?」「本当に個人でできるの?」と疑問をお持ちの方もいると思います。

この記事では、個人M&Aの概要や方法などを初心者にも分かりやすく解説します。

メリットやデメリットについても詳しく解説していますので、これから個人M&Aを始めようと思っている人、興味があるという人のお役に立てると思います。

ぜひ最後までお読み頂いて、参考にしていただければと思います。

個人M&Aの概要

まずは、個人M&Aについて解説していきます。

個人で行うことのできる小規模M&A

M&Aとは、

  • 「Mergers【合併】 and Acquisitions【買収】」の頭文字尾をとったもの
  • 合併=2つ以上の企業がひとつになること
  • 買収=ある企業が他の企業を買うこと(経営権を取得すること)

というのを意味していました。

その上で、個人M&Aとは個人が企業を買収し、経営権を取得することです。

通常は会社が買収するレベルの大きな企業ではなく、小規模な企業を買収することがほとんどなのも個人M&Aの特徴です。

個人によるM&Aが増えている背景

個人M&Aが増えている背景として、2つの理由が挙げられます。

・後継者不在企業のM&Aへの参入

中小企業庁が調査した中小企業・小規模事業者における M&Aの現状と課題によると、2025年までに、引退の平均年齢である70歳以上の中小企業・小規模事業の経営者約245万人のうち、約半数となる127万人、つまり日本企業全体の1/3が後継者未定の状態になると予想されています。

このことが、個人M&Aが増えている大きな理由の1つであるとされています。

また今後はさらに、後継者不在企業へのM&A参入が増えていくと予想されます。

・個人でも利用できるM&Aマッチングサイトの普及

最近、M&Aを取り扱うマッチングサイトを運営する企業が増えてきています。

また、先ほどの「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」によると、M&A自体を支援する事業者も増えています。

それにより、今後はM&Aへ参入する企業もさらに増えると考えられ、その相乗効果によって、個人が利用できるマッチングサイトもより普及することが予想されます。

個人M&Aが参入しやすい業種

  • 飲食店
  • 美容系
  • 教育系
  • 介護事業
  • Webサービス系

上記は、設備と専門スタッフを確保することができれば、比較的参入しやすい業界になります。

買収金額も個人で出せる範囲の額が比較的多く、手の届きがちな業種です。

個人M&Aのメリットとは?

ゼロから起業するのではなく、企業や事業を買収して経営者となるM&A。

まずはそのメリットについて解説します。

メリット1:事業立ち上げにかかるコストを抑えることができる

例えば、エステサロンを開業することになったとします。

その場合、エステサロンの物件を探し、内装をリフォームし、衛生面の配慮や消耗品を用意するなど、様々な開業の準備をしなくてはなりません。

また従業員を採用し、研修や教育をすることも、開業準備とともに進めていく必要があります。

特に、その業種の専門的知識をもっている優秀な人材を確保することは、容易ではありません。

業種によっては、元々人材不足で人を集めるのがやっとということも少なくありません。

ですがM&Aなら、これらが揃った状態で事業を引き継げることが多く、事業立ち上げ時のコストを抑えることができます。

そのため、イチから新規事業を立ち上げるよりも成長スピードを早められる可能性が高まります。

メリット2:既存のノウハウを引き継ぐことができる

M&Aなら、買収した企業の持つノウハウを引き継ぐこともできます。

すでに商品やサービスを展開しているため、今まで事業で培ったノウハウもあります。

さらに、業界におけるマナーやルールを把握していたり、トラブルの対処法を理解していたりもするはずです。

そのノウハウを引き継ぐことで、最初から安定した事業展開を行うことが可能になります。

メリット3:役員報酬を得ることができる

買収する企業によっては、買収の時点で事業が安定し、会社が軌道に乗っている場合があります。

その場合、最初から役員報酬を得ることが可能です。

さらに経営者になった場合は、企業の所有者として役員報酬自体を自由に決めることもできます。

また仮に、引き継ぎ時には経営不振に陥っていても、自身の経験やスキルを活かして業績をアップすれば、役員報酬を増やすことができるわけです。

個人M&Aのデメリットとは?

メリットだけでなく、デメリットについてもしっかりと理解しておきましょう。

デメリット1:従業員や顧客、取引先との関係性の悪化

新しい経営者に変わることによって、不信感をもつ従業員や顧客、取引先は少なくありません。

従業員は、今までの待遇や労働環境が変わってしまうのではないかと不安になる人もいるため、最悪の場合他の企業に人材が流れてしまう可能性もあります。

そうして今まで企業を支えてきてくれた人材がいなくなるのは、大きな損失です。

人材以外にも、M&Aによって企業イメージが変わり、顧客が離れてしまうこともあります。

また、M&Aによって今までの取引先との関係が悪化し、取引ができなくなることもあります。

デメリット2:簿外債務=負債が隠れていることがある

簿外債務とは、帳簿に記載されていない負債のことをいいます。

簿外債務は、個人M&Aでは中小企業を買収した後に見つかるケースが少なくありません。

もし簿外債務のある企業を買収してしまった場合は、買収者に弁済の義務が発生します。

そのため、簿外債務を見落とすことがないように事前に調査する「デューデリジェンス」や、売り手側に最終契約書が正確であるかどうかの保証(表明保証)をしてもらうなどのリスクヘッジが必要になります。

個人M&Aを成功させる3つのポイントとは?注意点も解説

個人M&Aを成功させるためには、次の3つのポイントを意識することが重要です。

  1. ていねいに事業承継をする
  2. 従業員のケアを第一に考える
  3. 希望に合う案件をマッチングサイトで探す

1. ていねいに事業承継をする

個人M&Aは、企業を買収することがゴールではありません。経営することのスタート地点に立ったようなものです。

うまくスタートを切るためには、前任の経営者からしっかりと事業承継をすることが必要不可欠です。

特に、サラリーマンなど今まで経営をしたことがない人が経営に携わる場合は、より慎重に行う必要があります。

前経営者と事前に綿密なコミュニケーションをとり、どのような思いで会社を経営してきたのか、従業員との関係性はどうだったのかなど、細かい点まで知ることができるといいです。

また、自分の力だけではうまく事業承継ができなそうという人のために、「事業承継・引継ぎ支援センター」のような相談窓口もあります。

事業承継・引継ぎ支援センターは、後継者未定や不在の中小企業を対象に専門家がサポートする国の事業です。

そのような機関も利用して、しっかりと事業承継をすることが、個人M&Aの成功において必要不可欠なのです。

2. 従業員のケアを第一に考える

先ほどM&Aのデメリットでも上げましたが、M&A前からいる従業員へのケアはしっかりと行う必要があります。

経営者が変わった事に対する従業員の不安などに寄り添うことが、M&Aの成功には必要不可欠です。

そうして従業員から信頼を得ることで、企業本来の力を発揮でき、今後自分が新しい事業を展開したいと考えたときなどにも力を貸してくれるようになります。

3. 希望に合う案件をマッチングサイトで探す

前述したように、個人M&Aで企業を買収する場合、買収費用が少額になることが多いものです。

多くの場合、少額の案件は通常のM&A仲介会社では扱うことが難しいので、その場合はマッチングサイトを利用することで、多くの案件に出会うことができます。

「マッチングサイトは難しそう」と思われがちかもしれませんが、売上高や業種などの希望条件を検索欄に入力するだけで探すことができ、簡単に効率良く、希望に沿ったM&A企業を探すことができます。

ただし、マッチングサイトのデメリットがないわけではありません。

マッチングサイトは仲介会社や専門家からサポートを受けることができないため、交渉成立後にトラブルが発生する可能性はあります。

そのため、業界でも信頼度の高いマッチングサイトを使うことが重要になります。

それがトラブル予防につながり、安心してM&Aを進めることができるのです。

300~500万円で買える企業とは?

まず、本当に300万〜500万円で企業を買収することができるのでしょうか?

個人でも買収できる300万円〜500万円の案件が多い業種について、解説していきます。

実際その金額で企業を買うことはできる?

個人M&Aでは、買い手(買収したい個人)と売り手(売りたい企業)の需要と供給のバランスが合えば、300万円〜500万円で買収をすることも可能です。

この価格帯のため企業の規模は比較的小さ目ですが、今後事業を成長させることができれば、当然利益獲得につながります。

300~500万円で買えることの多い業種とは?

  • 飲食店
  • 美容系
  • 教育系
  • 介護事業
  • Webサービス系
  • 調剤薬局
  • 小売店
  • 宿泊業
  • 製造業

飲食店からWebサービス系までの最初の5つは、先ほど個人が参入しやすい企業でも解説しました。

それに加えて、小売店や宿泊業などの企業も個人M&Aで購入できることが多いです。

飲食店は他の業界に比べて入れ替わりが激しいため、500万円以下の案件としてよく出てきます。

高齢のオーナーの企業・事業がうまくいかずに売却を考える、調剤薬局や医療系企業、美容院などもあります。

ただ、医療や美容系はオーナーや従業員が何らかの資格を持っているパターンが多く、そのまま残ってくれるかはわからないというデメリットはあります。

本業として他の企業で働く人であれば、リモートで管理することができるWebサービス系の業種もおすすめです。

個人でできる、小規模M&A案件の探し方

個人M&Aを行う場合に、該当する企業の探し方はいくつかあります。

今回はその中でおすすめの3つの方法を紹介します。

  1. M&A仲介業者       
  2. M&Aのマッチングサイト
  3. 事業承継・引継ぎ支援センター

1. M&A仲介業者

買い手と売り手の間に入り、中立的な立場で取引を進めてくれるのがM&A仲介業者です。

M&Aの経験や知識が豊富なため、安心して任せることができるのが特長です。

仲介業者に長年勤めている担当者であれば、M&A業界で顔が広いことも多く、そのつながりから最適な企業を勧めてもらえることもあるでしょう。

有効なM&Aを前提に取引を進めてくれるため、売り手が中小企業の場合に特におすすめです。

ただし、300万円〜500万円の案件を取り扱っていないことがあるため、事前にホームページで確認するなどのリサーチは必要でしょう。

また、手数料も少し高くなる可能性がありますが、初めてM&Aを行う人にとっては安心できる方法と言えます。

2.M&Aのマッチングサイト

前述もしましたが、マッチングサイトの利用も非常におすすめです。

スマホ1台で、条件を打ち込むだけで簡単に企業を探すことができます。

また、何といってもマッチングサイトは案件の登録数が多いというのも大きなメリットです。

そのため、自分に合った企業を見つけられる可能性はおのずと高まるでしょう。

3.事業承継・引継ぎ支援センター

こちらも前述しましたが、第三者への事業承継を支援する公的機関として非常に信頼性が高いのが、事業承継・引継ぎ支援センターです。

公的機関であるため相談料は無料。

また、中小企業診断士や金融機関OBなどの専門家によるサポートを受けることもできます。

ただしまだ知名度が低いため、登録企業は少なく、自分に合った企業に出会える確率は下がるというデメリットもあります。

個人M&Aで企業を買収するまでの具体的な流れ

個人M&Aを成功させるためには、企業を買収するまでの具体的な流れを知っておくことも重要です。

具体的には、以下のような流れになります。

  1. 買収予算と業種を決定する
  2. 案件を探す
  3. 分析、買収交渉をする
  4. 契約の締結、また必要であればデューデリジェンスの実施
  5. 最終契約締結

それぞれ解説します。

1. 買収予算と業種を決定する

最初に予算と業種を決定しておくことで、スムーズに企業の選定を進めることができます。

多くても、業種は3つくらいに絞っておきましょう。

その業種で、自分の経験やスキルを活かすことができるかを事前に調査することも重要です。

それにより、買収後に経営がうまくいくかが大きく変わってきます。

2. 案件を探す

次に、実際にマッチングサイトや仲介会社を利用して、自分に合う案件を探していきます。

マッチングサイトであれば、サイトを利用して希望の企業にメッセージを送ることもできます。

仲介会社や事業承継・引継ぎ支援センターを利用する場合は、担当者に希望条件を伝えると、案件を探してもらうことができます。

3. 分析、買収交渉をする

案件を探す中で、気になる企業があればピックアップし、まずは企業情報やビジネスモデルなどを分析します。

そうして買収する企業が決定したら、実際に買収交渉を開始します。

4. 契約の締結、また必要であればデューデリジェンスの実施

無事買収の交渉が成功したら、次は基本合意書を締結します。

基本合意書には法的拘束力はありませんが、双方が合意したという意思表明にはなります。

合意書締結後は、前述したデューデリジェンスを実施しておくと、帳簿に記載されていない負債があったり、何か問題があったりしないかを事前に調査することができ、より安心です。

ただし、個人で弁護士や公認会計士にデューデリジェンスを依頼する場合は費用が高くつくこともあります。

その依頼費用も事前に予算に含めていると、より安心してM&Aを進めることができるでしょう。

5. 最終契約締結

最終契約の締結は法的拘束力を持つので、買収価格や従業員の処遇などの情報が入った最終契約書を慎重に確認しながら、締結します。

締結までできれば、クロージング(契約内容を基に、お金や人材などの経営権移譲の手続き)を実施して個人M&Aは終了です。

まとめ

今後も需要が高まっていくことが予想される個人M&Aについて、概要や方法、メリットとデメリット、成功するためのポイントや締結までの流れなどを解説しました。

特に、イチから起業するよりも早く企業経営が始められるというメリットは、大きいでしょう。

今回の記事を参考に、ぜひ個人M&Aに挑戦してみてください。


 

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