企業の効率化を推し進め、生産性を向上させる「ITガバナンス」に注目が集まっています。ITガバナンスの概要、その効果や対象項目について、詳しく解説します。

昨今の科学技術の分野、特に情報に関わる部分の進化には目を見張るものがあります。

これは、スマホ1台でも仕事ができてしまうことからも明らかです。

このような背景を踏まえ、企業は「ITガバナンス」を意識することが求められています。

のちほど詳しくご説明しますが、ITガバナンスとは、最新の情報技術を活かして、企業の効率化を推し進め、生産性を向上させるものです。

つまり、DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる現代においては、企業がITガバナンスを理解しないと遅れを取ることになり、事業の失敗に直結してしまうことさえあります。

そこで今回は、このITガバナンスの概要と効果について紹介しつつ、最後にその対象項目についても解説したいと思います。

特に事業の効率化や生産性に関してお悩みの方は、ぜひこの記事を参考にして、ITガバナンスを有効活用できる素地を作っていただきたいと思います。

ITガバナンスとは何か

コトバンクで調べると、「ITガバナンスは、コーポレートガバナンスをITの側面からとらえたものである。より具体的には、情報管理体制を堅固に構築するための企業統治を指す」となっています。

なんだかちょっとお堅い表現ですよね。

この表現ではいまいちピンと来ないという方は、「現在の情報技術を有効活用して、企業が目に見える形で事業の効率化を図り、生産性を向上させる」ようなイメージと思っていただければ、問題ありません。

ITガバナンスの推進で得られる主な効果

ITガバナンスを推進することで、戦略的な投資、経営資源の有効活用、コスト最適化、リスク最小化といった効果が得られます。

それぞれの効果について個別に解説します。

戦略の不一致を解消する効果

起業の際には、大前提として、経営戦略、事業戦略、販売戦略などの様々な戦略が必要となります。

そもそも戦略とは、大きな決断をする際のベースとなる重要な道筋であり、これを見誤ってしまうと、その後に社員がどんなに頑張っても失敗を取り返すことができなくなってしまいがちです。

最悪の場合は、倒産を招いてしまうことにもなりかねません。

たとえば、戦略策定の際に比較的起こりがちなのがそれぞれの戦略の不一致です。

事業戦略と経営戦略に不整合が生じていて、従業員に迷いを生じさせてしまうことが挙げられます。

しかしITガバナンスを推進させることで、IT戦略が個々の戦略と強く連携するようになり、結果としてそれぞれの矛盾が解消され、戦略が迅速に実現できるようになります。

さらにこのIT戦略は、IT投資に関わる取捨選択を加速させることにも貢献します。

経営資源の有効活用が実現する効果

ITガバナンスを推進させることで、IT投資の効果を数字又はグラフィカルに、つまり客観的に把握することができるようになります。

この事実をもとに、限りある企業の経営資源を有効活用すれば、生産性の向上に大きく寄与できるでしょう。

さらに、企業内の経営陣とIT運用者との間で共通認識が得られるというメリットもあります。

ITコストを最適化する効果

上記に連動する形で、ITへの投資コストも可視化させることが可能です。

IT投資の効果と、IT投資コストを突き合わせれば、その妥当性を可視化することも可能です。

この妥当性に基づけば、不要なIT投資を炙り出して排除することもでき、結果的に無駄なITコストをかけずに済みます。

ITリスクを最小化する効果

ITガバナンスを推進させることで、セキュリティリスクや不測の事態の発生リスクを可視化することもできます。

その結果、前述した投資コストとリスクの両方の正確な把握にも繋がります。

ITガバナンスに関する9つの項目

ITガバナンスに関する項目は、全部で9つあります。

一般的にITガバナンスに関わる対象項目は、PDCAサイクルと連動しています。

9つの項目を個別に解説する前に、まずはそのPDCAサイクルというメソッドについて確認しておきましょう。

Pは計画段階、Dは実行・運用段階、 CAは評価・改善段階のことです。

計画、実行、評価、改善を一連のスパイラルで回していくことで、事業をよりよい方向へと昇華させることができるというものになります。

それでは、このPDCAサイクルと紐付けて、個別の9つの対象項目について解説していきましょう。

1. IT戦略・中期戦略

「IT戦略・中期戦略」は、PDCAサイクルのうちのP(計画段階)に対応するものです。

これは、最高経営責任者の意志と整合性を図るような形で存在することが求められます。

内容は、IT部門のコスト、体制、成果などを幅広く包含しています。

この後解説する他の8つの項目の源流となりますので、慎重な策定が求められます。

2. IT投資計画・評価

「IT投資計画・評価」も、PDCAサイクルのうちのP(計画段階)に対応するものですが、同じ計画段階でも、前述した「IT戦略・中期戦略」よりは下流、つまり実行・運用段階に近い位置付けです。

年度ごとのIT部門の活動計画などの他にも、予算執行状況の管理などが含まれます。

さらには、個別の案件に対する投資の稟議、投資の費用対効果などの評価も該当するのが一般的です。

3. ITアーキテクチャ

「ITアーキテクチャ」は、「IT投資計画・評価」と同様、「IT戦略・中期戦略」よりは下流で、D(実行・運用段階)寄りのP(計画段階)に位置します。

皆さんも経験があるかもしれませんが、ITに関するシステム(アーキテクチャ)は導入してすぐに戦力になるものばかりではありません。

なぜならば、他から移植してきたシステム(アーキテクチャ)が自社の企業戦略などには合致していない場合が大半だからです。

そのため、そのITアーキテクチャを、企業戦略を踏まえた上で運用しやすいようにアップデートやフォローアップを逐次行っていくことが求められます。

4. IT企画・構築・保守・運用

「IT企画・構築・保守・運用」に関しては、PDCAサイクルのうちのD(実行・運用段階)とCA(評価・改善段階)に対応します。

了解を得た個々の案件に関して、企画・構築・保守・運用・事業管理することが該当します。

5. IT運用

「IT運用」は、D(実行・運用段階)そのものであり、IT組織と一体化として言及されることも多いです。

IT部門の編成・職責・役割・配置を明確かつ適切に定めることは、実際のIT運用の成否を左右します。

6. IT組織パフォーマンス評価

「IT組織パフォーマンス評価」とは、 CA(評価・改善段階)そのものです。

評価の対象は主にコストパフォーマンスであることが一般的です。

この段階をきちんと踏むことで、失敗などの反省点が次の事業などへ生かされるようになります。

7. IT資産管理

「IT資産管理」は、PDCAの全てのサイクルに関わります。

事業の大部分の利益に直結するIT資産に関しては、管理が最適化されているかどうかを定期的に確認しておくことが必要です。

近年はその重要性が再認識され、大企業ともなると、専用のIT資産管理ソフトウェアを開発して使用している例もあります。

8. IT人材管理

「IT人材管理」も、「IT資産管理」と同様にPDCAの全てのサイクルに関連します。

IT部門に関わる人材の募集・採用・配置・教育及び育成・異動などが含まれます。

また近年のAIの台頭により、人材の確保の観点ではひと工夫が必要です。

将来AIで代替が可能な仕事と、そうではない仕事を見極め、AIで代替不可能な分野の人材を特に重点的に管理していく必要があります。

9. ITリスク管理

「ITリスク管理」も、「IT資産管理」や「IT人材管理」と同様に、PDCAの全てのサイクルに関わります。

事業には様々なリスクが存在し、セキュリティリスク、不足事態発生リスク、法令違反リスクなど枚挙にいとまがありません。

起こり得るかもしれないこうしたリスクを炙り出すとともに、炙り出したそれぞれのリスクに対する予防策や処置要領の策定なども、ITリスク管理に該当します。

まとめ

ITガバナンスの大まかな概要を理解し、その重要性について認識していただけたのではないでしょうか。

ITガバナンスの重要性は今後も増していくことが予想されます。

この記事をきっかけとして、さらに関心を持っていただけると幸いです。


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