IR入門4:IRオフィサーは根気よく説明することも大事

私は、約5年のIRオフィサーとしての活動の中で、機関投資家との個別MTGを少なくとも1,000回は行ってまいりました。

しかし、回数に比べて機関投資家の数は100名~200名程度で、四半期毎、半年毎のフォロー面談が多いものです。

面談は基本的には1時間で終了すること、及び機関投資家の担当者は日常的に数十社の上場会社をウォッチしていることから、1時間×数回のMTGでは、1社の事業内容を深くご理解いただくのは難しいです。

そのため、機関投資家の担当者に何度でも自社の事業内容を説明し、深くご理解をいただくことがIRオフィサーのとても大切なミッションとなります。

逆に、以前も説明したのに理解いただけずに再度質問が来る場合は、自分の伝え方が悪いと自省する必要があると考えましょう。

または、事業内容を多くの方が誤解しやすいのであれば、開示内容を見直さなければならないと捉える必要があるとも考えるべきです。

この様に、自社の魅力を何度でもていねいに伝えることができるIRオフィサーがいることが、機関投資家にとっては投資の安心材料となります。

そうしたIRオフィサーの根気が、機関投資家の心を動かすのです。

IRオフィサーは、商品やサービスの営業ではなく、会社そのものを評価してもらう営業を行う存在だと私は考えております。

実際私も、IRオフィサーとして、会社を代表する営業として、根気よくていねいに会社を説明することが、会社の価値の向上につながると信じて活動しています。

IR入門5:これからIPOを目指す会社へのメッセージ

私は、現在はIPOに関わるシステム開発とコンサルティングを行っています。

その活動の中で、上場後のIR体制について質問を受けることがあります。

私もカチタスがIPOする前は、IR活動については深い関心を持っていたわけではなく、IR活動の重要性も認識できていませんでした。

また、IPOをするまでは投資家のことを考えたこともなく、投資家が具体的にイメージできないので、不安と恐れを抱いていたのは、冒頭で記載した通りです。

しかし、IRオフィサーとして約5年活動してきた中で、明確に申し上げることができるのは、IRをするほど「投資家の輪郭が鮮明に見えてくる」こと、また対話するほど仲良くなり、「事業成長という同じ目線で志向するパートナー」になれると感じています。

そして、「IR活動をしなければ株価は上がらない」ということです。

日本だけでも上場会社は約3,800社あり、投資家は投資をしている上場会社がすでにあるため、新規投資先を探す時間は限られています。

また、私が投資家から言われた言葉は、「1年経ったらIPOした会社のことは忘れる」でした。

だからこそ、最も投資家の関心を得ることができるIPOの直後から、全速力でIR活動を行い、会社の魅力を国内外の投資家にアピールしていただければと思います。

そして、IRを担当するのは「自社のことが好きな人」が行うのが重要です。

IRオフィサーの根気と情熱が機関投資家の心を動かすので、類似する会社に投資するなら「自社のことを好きな人」がIRオフィサーの会社に投資したいと思うはずです。

ただし、自社の業績のことは話せないと共通言語で会話ができないので、数字への理解と情熱のバランスが大切です。

そのため、情熱をもってプレゼンできる社員に業績を伝えるためのトレーニングをして育てることを推奨します。

まとめ

最後に、株式投資の「相場の福の神」と言われる藤本誠之さんがIRオフィサー向けのセミナーで話されていた内容を、ご紹介させていただきます。

下の左側の図は、株価を算定する際の指標の解釈の仕方を表現しています。

「1株当たりの当期純利益」は実績数字なので「現実」であり、その実績は全社員の努力によって産み出されています。

そして、「現実」に乗じる「株価収益率」は、株式市場からの評価と期待という「夢」の指標で、その指標は株式市場と対話する機会のある社長かIRオフィサーの努力により、上下するということを表現しています。

また、下の右側の図は、良い会社も株式市場から評価されるには、良いIRをしなければならないということを表現しています。

藤本誠之さんが説明した際には、「良い商品やサービスも、良いマーケティングがないと売れないということは理解が進み、マーケティングに力は入れている。しかし、上場会社という会社単位では、良いIRを行わない会社が多い。良い商品やサービスは類似していても数十~数百種類。一方で、上場会社は日本だけでも約3,800社あるので、良いIRをしなければ気づかれるはずもない」と、提言されていました。

私は、藤本誠之さんのメッセージが非常に心に残っており、IRオフィサーとしてより多くの投資家に会社の魅力を発信し、会社が目指す夢を投資家と共有していただきたいと思い、今もIRオフィサーとしての活動を続けています。

※今回の内容は、筆者のIRオフィサー目線での、実務経験上のアウトプットであり、より正しい情報は機関投資家や証券会社にお問い合わせください。


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