最近、現時点において上場を目指さない会社を支援する中で、社長と会話をしながら経営の仕組みを構築しています。その結果、社長の視座が上がってきて、話す内容や相談の質が明らかに変わってきました。この経験から、上場を目指す、目指さないに関わらず、会社の成長と安定を目指してやるべきことには共通点があると感じました。今回の記事は、ヒト・モノ・カネといった観点のうち「カネ」に焦点を絞って紹介します。

1.キャッシュフロー経営の徹底
- 会社が永続的に存続するためには、キャッシュを枯渇させないことが必要です。そのため、損益計算書の利益よりもキャッシュ残高を重要視する必要があります。利益が出ていたとしても、仕入先への支払いや銀行からの借入の返済が出来なければ、会社を存続していくことが出来ないためです。
- 現金収入―現金支出=現金の増加となるため、まずは、現金支出額を把握する必要があります。現金支出額が現金収入額よりも大きい場合は、現金が減少していくため、いずれ倒産してしまいます。したがって、過去の現金支出額を把握する必要があります。その結果を踏まえて、削減出来るものは削減し、無駄が少ない経営を目指すべきでしょう。現金支出額の見える化を行う事により、無駄が見えてくるものです。
- 現金が枯渇する時期を把握して前もって動きましょう。会社の状況が悪くなってから銀行に行っても、借入が難しいことがあります。会社が順調で借入の必要が無い時こそ、銀行と良好な関係性を構築しておき、状況が悪くなった時に備える必要があります。
- 経営者には節税が好きな方が多いですが、現金を伴う節税は避けるべきです。現金が伴う節税策は、結局手元にお金が残らないケースが多いためです。節税を考えるのではなく、無駄な現金支出を削減し、本業に専念して売上を増加させて、適正な税金を払い、会社により多くの現金を残すべきでしょう。
- 取引先と「売上の入金サイクルを早める」「仕入や外注等の出金サイクルを遅くする」交渉をして、会社に残るキャッシュを少しでも増加させるべきです。交渉することにお金はかかりませんので、ぜひ取り組みましょう。
2.事業計画の策定
- 事業計画とは、事業の達成目的、目標、計画・過程を示したものです。旅行に例えるなら目的地を設定して、どのように行くか計画を立てることです。最初から立派なものや、精度が高いものである必要はなく、30%程度のものでも良いので作成しましょう。
- 事業計画を策定して完了ではなく、適宜見直してブラッシュアップしていく必要があります。当初の計画通りに進むことの方が少ないはずです。その都度修正して、今後の活動を変更していく必要があります。
- 事業計画の策定には、時間をかけすぎないことです。未上場企業においては、事業計画を策定出来る社員がいないことが多いため、社長が作成するケースが多いはずですが、経営者である社長の時間を多く使うことは得策ではありません。
- 事業計画の中には、目標となる売上、利益、キャッシュの金額等を計算した財務計画があります。財務計画は事業の進捗状況を確認する重要なものになるため、「前期比20%増」等にせず、売上やコストは常に因数分解して(単価×数量等)計画を立てましょう。
- 財務計画は実現不可能なものを策定しても意味が無く、そのような計画は全く利用されなくなります。したがって、現実的な数字に落とし込む必要があります。そのために、数値を変更したら結果が変更されるように数式で組み上げることにより、シミュレーションが出来るようにしておく必要があります。