帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の見直しについて解説します。

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令和4年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」に基づいて、令和5年度税制改正案について解説します。

この税制改正案により、1万円未満の課税仕入れについて帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能になります。

実際の適用に当たっては、改正後の法令や通達、FAQなどをご確認ください。

今回は帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の見直しについて解説します。

1.帳簿のみの記載での仕入税額控除(現行制度)

(1) インボイス制度実施前

事業者がその課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿と請求書等を保存していない場合には、その保存がない課税仕入れ等に係る仕入税額控除は適用できないこととされています(消法30⑦)。

ただし、その課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が少額である場合(「3万円未満の課税仕入れ」)や「請求書等の交付を受けなかつたことについてやむを得ない理由があるとき」は、その帳簿にやむを得ない理由及びその課税仕入れの相手方の住所又は所在地を記載している場合には、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められています(消令49①)。

(2) インボイス制度実施後

インボイス制度が実施されると、上記の規定は廃止され、一定の事項を記載した帳簿のみの保存での仕入税額控除は認められなくなり、原則、全て帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされます(消法30⑦)。

ただし、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、次の取引については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消令49①、消規15の4)。

(イ)適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

(ロ)適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引((イ)に該当するものを除きます。)

(ハ)古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

(ニ)質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の取得

(ホ)宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

(ヘ)適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

(ト)適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等

(チ)適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

(リ)従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

したがって、3万円未満の課税仕入れ等でも原則インボイスの受領・保存が必要になります。