少額な返還インボイスの交付義務の免除について解説します。

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令和4年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」に基づいて、令和5年度税制改正案について解説します。

実際の適用に当たっては、改正後の法令や通達、FAQなどをご確認ください。

今回は少額な返還インボイスの交付義務の見直しについて解説します。

1. 現行制度

(1) インボイス交付義務

適格請求書発行事業者(以下、「インボイス発行事業者」といいます。)は、国内において課税資産の譲渡等を行った場合には、取引の相手方(課税事業者)の求めに応じて、インボイスを交付し、その写しを保存する義務があります。

また、紙でのインボイスの交付に代えて、電子でインボイスを提供することもできます。

(2) 適格返還請求書の交付義務

インボイス発行事業者は、課税事業者に返品や値引きなどの売上げに係る対価の返還等を行う場合には、買手である課税事業者に対して適格返還請求書(以下「返還インボイス」といいます。)を交付する義務があります。

また、紙での返還インボイスの交付に代えて、電子で返還インボイスを提供することもできます。

(3) 修正した適格請求書等の交付義務

インボイス発行事業者は、交付したインボイス等(インボイス等とはインボイス、適格簡易請求書及び適格返還請求書のことをいいます。)の記載事項に誤りがあったときは、買手である課税事業者に対して修正したインボイス等を交付する義務があります。

(4) 追加記入の禁止

売手と買手の税率と税額を一致させるため、値引き等を行った場合には返還インボイス、誤りがあった場合には修正したインボイスを交付する必要があるとされており、買手の追加記入はできないこととされています。

(5) 返還インボイスの記載事項

返還インボイスには、以下の事項を記載する必要があります。

①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

②売上げに係る対価の返還等を行う年月日及びその売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日(適格請求書を交付した売上げに係るものについては、課税期間の範囲で一定の期間の記載で差し支えありません)

③売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)

④売上げに係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額

⑤売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率

出典:国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き」