今回は、インボイス制度導入と消費税法上の「対価」の問題について整理したいと思います。

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消費税の「課税の4要素」

消費税法は、事業者が国内において行う資産の譲渡等及び特定仕入れ[1]を課税の対象とし、「国内において行う資産の譲渡等」とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡、貸付け及び役務の提供をいうと規定しています(法2①八、4①)。

すなわち、消費税の課税の対象とは、次の4つの要素を含むもの(筆者はこれを消費税の「課税の4要素」と呼んでいます。)ということになります。

(1) 国内において行うものであること
(2) 事業者が事業として行うものであること
(3) 対価を得て行われるものであること
(4) 資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供であること

当該4要素のうち、消費税法上問題となり易いのが、(2)の「事業」とは何か、及び(3)の「対価」とは何か、という2点だと思われます。

しかしながら、両概念とも、消費税法上明確な定義はなく、数多くの訴訟で争われてきました。

今回は、(3)の消費税法における「対価性」の意義及びその変遷について、以下検討します。


[1] 特定仕入とは、事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいい、特定資産の譲渡等とは、事業者向け電子通信利用役務の提供及び特定役務(外国人タレント等が国内で行う役務)の提供を指し、平成27年の税制改正で導入された。

消費税法基本通達の解釈

消費税法基本通達5-1-2は、次のように規定しています。

(対価を得て行われるの意義)

5-1-2 法第2条第1項第8号⦅資産の譲渡等の意義⦆に規定する「対価を得て行われる資産の譲渡及び資産の貸付け並びに役務の提供」とは、資産の譲渡及び資産の貸付け並びに役務の提供に対して反対給付を受けることをいうから、無償による資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供は、資産の譲渡等に該当しないことに留意する(下線筆者)。(注)=省略=

すなわち、同通達によれば、「対価」=「反対給付」という関係[2]が成り立つので、所謂無償の取引は課税の対象とならないこと、法人税や所得税とは基本的に考え方が異なることを明確にしております。


[2] 田中治「判例評釈 ポイント交換サービスの対価性の有無」(TKC税研情報・2022年12月)104頁は、「対価は、役務の提供(筆者注:本件ではポイント交換によって交付される金員の対価性が争われた)があり、これに対応するものとして金銭等の反対給付でもって報われる、という関係にあるということができる。この意味での給付=反対給付の関係は、提供した役務に釣り合う、基本的に同等の経済的価値が給付されることを意味する。」と述べている。