誰かに確定申告書を作成・提出して欲しい場合に、作成を税理士以外に任せることは税理士法違反となる可能性があるため、注意が必要です。この記事では、確定申告書を代理で作成・提出してもらう際の注意点を解説します。

この記事の目次

原則確定申告書を代理で作成することはできない

原則として、確定申告書を作成できるのは、納税者本人と税理士だけです。

家族や代理人であっても、確定申告書を作成することはできません。

以下では、確定申告書を代理で作成したり、提出したりできるのかについて詳しく解説していきます。

確定申告ができるのは本人か税理士のみ

所得税の確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税等の額を納税者自ら計算して確定させる手続きのことを言います。

そのため、定義上確定申告ができるのは、納税者本人だけです。

しかし、納税者に代わって確定申告を行える人がいます。

それが税理士です。

税理士の業務は法律で明確に定められており、他人の求めに応じ、租税に関して、次に掲げる事務を行うことを業とすると規定されています(税理士法第2条)。

1. 税務代理(税理士法第2条第1項第1号)

税務官公署に対する申告等につき、又はその申告等若しくは税務官公署の調査もしくは処分に関し税務官公署に対して行う主張もしくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次の2にとどまるものを除きます)をいいます。

2. 税務書類の作成(税理士法第2条第1項第2号)

税務官公署に対する申告等に係る申告書等を作成することをいいます。

3. 税務相談(税理士法第2条第1項3号)

税務官公署に対する申告等、税理士法第2条第1項第1号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずることをいいます。

(引用元:https://www.kinzei.or.jp/search/regulation/chapter_1_2.html

さらに、税理士法第52条では、税理士または税理士法人でない者は税理士業務を行ってはならないと規定されており、税理士または税理士法人でない者が上記のような税理士業務を行うことを禁止しています。

したがって、確定申告を行うことができるのは本人と税理士だけで、原則としては家族や代理人などが確定申告を行うことはできません。

代筆・代理提出だけであれば家族や友人でもできる

確定申告書が記載済みで添付資料などが揃っていれば、本人以外が代理で確定申告書を提出することができます。

しかし、確定申告書が未記入であったり、添付書類が揃っていない場合は、家族や友人が代わりに記入したり、添付書類を準備したりできないので、原則として提出が認められません。

要するに、確定申告書は、納税者に代わって家族や代理人が記入することはできないというわけです。

確定申告においては、納税者本人の事由な意思が重要視されているため本人の意思を無視して第3者や家族が確定申告書を作成したと判断されたり、本人の意志に反して確定申告を行ったと判断されれば、それは税理士法違反となります。

家族が代理で申告書を提出するときに委任状はいる?

家族が代理で申告書を提出する場合、納税者と同居されている方については、税務署に印鑑を持参してください。

なお、納税者本人が認知症などによって、確定申告書を作成すること自体を自分の意志で行うことが難しいといったケースも考えられます。

その場合には、「成年後見制度」の活用がおすすめです。

成年後見制度とは、認知症などで財産管理能力を喪失した者の財産を保護するための制度となっています。

本人に代わって、財産を保護する援助をしてくれる人を法的に確保するための制度です。

家庭裁判所に代理権付与の申立を行い、家庭裁判所から確定申告書提出に関する代理権の付与を受けることで、納税者本人の代理として確定申告書の提出が可能です。

また、申告者が海外在住の場合など、非居住者の方については、確定申告書の提出、税務署等からの書類の受け取り、税金の納付や還付金の受け取り等、納税義務を果たすために納税管理人を定めることができます。

納税者が納税管理人を定めた場合は、その非居住者の納税地を所轄する税務署長に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出しなければなりません。

この届出書を提出すると、税務署が発送する書類は、納税管理人あてに送付されます。

一方で、確定申告書は非居住者の納税地を所轄している税務署長に対して提出します。

家族が代理で申告書を提出する場合本人確認される?

別居の方は、委任状と代理人の本人確認ができる書類が必要となります。

本人確認書類として認められているのは次のとおりです。

  1. マイナンバーカード
  2. 番号確認書類(※1)+身元確認書類(※2)
    ※1:通知カード・マイナンバーの記載された住民票
    ※2:運転免許証、公的医療保険の被保険者証、パスポート等