個人が事業を開始した場合には、開業届で事業を開始したことを知らせる必要があります。開業届は、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」と言い、この書類の提出をもって、あなたが事業を始めたことを税務署は把握するのです。

この記事の目次

個人事業主が事業を始めたら、まずは開業届を提出

個人事業主で事業を開始した場合には、開業届の提出が必要です。

法人を設立する場合と異なり、個人が事業を展開する場合で、定款の作成や設立登記といった手続きは必要ありません。

ここでは、個人事業主となる方がなぜ開業届の提出が重要であるのかについて、解説していきます。

開業届の意義

個人が収入を得る手段の1つに、事業活動の対価として収入を得る、というものがあります。

事業活動の結果として得られた収入は、一般的に事業収入と呼ばれますが、個人が得た収入を事業収入とするためには、開業届の提出が必要です。

開業届とは、個人が得た収入を事業収入とするために必要な手続きでもあるのです。

開業届を提出し、個人が得る収入を事業収入とすることができれば、事業活動のために支出したお金を経費にでき、事業収入から差し引くことができるようになります。

事業収入から経費を差し引くことができるようになれば、その分所得を少なくすることができ、納税しなけれならない所得税が少なくなるのがメリットです。

つまり、開業届を提出することで、得られた収入を事業収入とすることができ、事業活動に必要な支出を経費とすることができるようになることで、収めなければならない税金を少なくできるのです。

逆に言えば、開業届を提出しなければ、支出を(事業)経費とすることができないので、納めるべき税額が高くなってしまうわけです。

開業届の提出先

開業届は、納税地を所轄する税務署長に提出するのが原則です。

事業の開始等の事実があった日から1カ月以内に提出しなければなりません。

上でも説明したように、開業届の提出は、事業を開始したことを納税を管轄する税務署に届け出ることで、税制上の優遇制度を利用できるようにするための手続きの側面を持っています。

具体的には、納税地を所轄する税務署長に対して開業届を提出しなければなりません。

自分の納税地を所轄する税務署がわからない場合には、国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」から調べることができます。

開業届はどこにある?

開業届は、一般に国税庁のホームページからダウンロードするのが通常です。

国税庁の「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」に、ダウンロードリンクが設置されています。

このページには、開業届の書き方が説明された書類のリンクも設置されているので、便利です。

また、所轄の税務署にも印刷された開業届が設置されています。

開業届は、e-Taxを利用して作成し、さらにe-Taxで提出するのが便利です。

わざわざ税務署に出向かずとも、自宅からインターネットを通じて提出することができます。

また書面で開業届を提出する場合は、持参や郵送での提出も可能です。

その場合は、最寄りの税務署の窓口(所轄の税務署の窓口)に提出しましょう。

個人事業主が開業したときの所得税・源泉所得税・消費税に関する届出書

個人が開業した場合には、開業届だけではなく様々な書類の提出が必要です。

具体的には、以下のような書類の提出が必要となります。

税目 届出書等 内容 提出期限等
所得税
個人事業の開廃業等届出書 1. 事業を開始した場合
2. 事業所等を開設等した場合
事業開始等の日から1カ月以内
所得税の青色申告承認申請書 青色申告の承認を受ける場合(青色申告の場合には各種の特典があります) 原則、承認を受けようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合には、開業の日から2カ月以内)
青色事業専従者給与に関する届出書 青色事業専従者給与額を必要経費に算入する場合 青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後開業した場合や新たに事業専従者を有することになった場合には、その日から2カ月以内)
所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書 住所地に代えて事業所等の所在地等を納税地とする場合(変更前の納税地の所轄税務署長に提出します) 随時(提出した日後における納税地は事業所等の所在地になります)
※令和5年1月1日以後の納税地の変更については、提出不要です。
所得税の棚卸資産の評価方法減価償却資産の償却方法の届出書 棚卸資産の評価方法および減価償却資産の償却方法を選定する場合 次の事由が生じた日の属する年分の確定申告期限まで
棚卸資産
1. 事業を開始した場合
2. 事業を開始した後、新たに他の種類の事業を開始した場合または事業の種類を変更した場合
減価償却資産
3. 事業を開始した場合
4. 既に取得している減価償却資産と異なる種類の減価償却資産を取得した場合
5. 従来の償却方法と異なる償却方法を選定する事業所を設けた場合
1から5までの事由が生じた日の属する年分の確定申告期限まで
源泉所得税
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 給与等の支払を行う事務所等を開設した場合(「個人事業の開廃業等届出書」を提出する場合を除きます) 開設の日から1カ月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 給与の支給人員が常時10人未満である給与等の支払者が、給与等から源泉徴収した所得税の納期について年2回にまとめて納付するという特例の適用を受ける場合 随時(申請書を提出した月の翌月末までに通知がなければ、申請の翌々月の納付分からこの特例が適用となります)
消費税
消費税課税事業者選択届出書 免税事業者が課税事業者になることを選択する場合 選択しようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間等である場合には、その適用を受けようとする課税期間中
消費税課税期間特例選択届出書 課税期間の短縮を選択する場合 選択しようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間等である場合には、その適用を受けようとする課税期間中
消費税簡易課税制度選択届出書 簡易課税制度を選択する場合 選択しようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間等である場合には、その適用を受けようとする課税期間中

(引用元:No.2090 新たに事業を始めたときの届出など|国税庁