税理士試験の過去問題の分析法
過去問を分析して、学習に活用しようと考える場合には、次のポイントに注意してください。
出題傾向とパターンの把握
さまざまな試験で過去問題の演習が非常に重要であることは言うまでもありませんが、その目的は試験によって異なります。
まず「同じ問題が出た場合に備える」という目的が考えられますが、これは税理士試験には適用されません。
なぜなら、マークシート形式の試験では完全に同じ選択肢が出ることがありますが、税理士試験ではそうではないためです。
試験委員が変われば、出題形式も大きく変わります。
しかし、「過去問題は必要ない」というわけではありません。
2〜3年以上前の過去問題は、主に時間の割り振りや解答の順番の研究に役立ちます。
時間の割り振りの研究とは、どのように各問題に試験時間を配分すれば得点が最大になるかを調べることです。
解答の順番の研究とは、例えば財務諸表の場合、「理論→計算」か「計算→理論」のどちらの順番で解くと得点が最大になるかを調べることです。
同じ問題でも、時間の割り振りや解答の順番が異なるだけで、得点に大きな違いが生じます。
また、ある過去問題でうまくいった時間の割り振りや解答の順番が、別の過去問題でも同様にうまくいくとは限りません。
そのため、試験開始直後の数分で、問題に応じて最適な時間の割り振りや解答の順番を見つけられるようになることが求められます。
ただし、これはすぐにできることではありません。
地道に過去問題を分析し、時間の割り振りや解答の順番を試すことで、得点を最大化する方法を身につけることが重要です。
難易度別の問題整理
勉強を始めたばかりの段階では、全ての問題が難しく感じることがあるでしょう。
しかし、過去問題に取り組むことで、困難な問題や得意な問題とより一般的な問題を区別する力が身につくでしょう。
税理士試験においては「解ける問題から取り組んで得点を伸ばす」ことが非常に重要です。
難解であったり独特の問題に多くの時間を割かれてしまうと、本来獲得できるはずの得点が逃れてしまうことがあります。
そのため、効率的な問題の選別が求められます。
さらに、試験で高い得点を狙うには時間配分や解答順序も大変重要な要素となります。
実際の試験を想定して、制限時間内で過去問題に取り組むことで、どの問題に時間を割くべきか、どの問題を先に解答するべきかといった判断力が養われるでしょう。
このように、過去問題を活用することで、問題を分類する力や効率的な時間配分のスキルが向上します。
それにより、試験時に自分の力を最大限発揮できるようになるでしょう。
また、継続的な過去問題の練習を通じて、試験に対する自信も高まり、試験の緊張感も緩和される効果が期待できます。
その結果、税理士試験で高い得点を狙うことが可能となります。
重要な法令やポイントの特定
過年度の問題をみていると、頻出の論点があることに誰もが気づきます。
その点は、税理士試験において頻出の問題となっているので確実に得点できるように準備しなければなりません。
その箇所の解答・解説を読むことで、どのように解答すれば実際の試験において得点できるようになるかがわかります。
過去問題を活用した効果的な学習法
過去問を活用して学習を進める場合は、次のように進めていくと効果的です。
繰り返し解答による理解度向上
税理士試験においては、計算問題の学習において問題集や模試を繰り返し解くという勉強法が一般的で、受験予備校でも推奨されています。
しかし、短期間で同じ問題を繰り返し解くことで問題内容や解答を暗記してしまい、問題文を読まずに解答を書く状態になることがあります。
この場合、問題を解く意味がなく、時間の無駄であるばかりか難しい問題が簡単に解ける錯覚に陥る危険性があるので注意が必要です。
また、漫然と同じ問題を繰り返し解かないことが大切です。
例えば、問題集では1回しか解かず模試は試験1回、復習1回の合計2回で解くようにします。
そして、どうしても解けない問題は、本試験で出題された場合に見送ります。
捨てるには惜しい問題や出題可能性の高い問題は、苦手な論点をまとめたノートに記録し、本試験直前に一気に復習するようにしましょう。
本試験で出題されても難しいと判断した場合は、速やかに後回しにします。
基本問題は何度も練習すべきですが、難問・奇問に関しては、解けないからと言って繰り返し解く必要はありません。
基本問題をしっかりと押さえる
税理士試験で最も重要なのは基礎的な学習であり、基礎がしっかりしていれば、基本問題は一発で解けます。
まず基礎学習を十分に行い、同じ問題は何度も解かないという方法を推奨します。
基礎学習ができていれば、新たな問題に取り組む際にも対応が容易になり、確実に学習効果を上げることができます。
試験対策として、過去問を利用しながら様々なタイプの問題に取り組むことで、自分の弱点を把握し、それを克服することが重要です。
過去問を通じて出題傾向を把握し、自分の学習計画に反映させることで、効率的に試験対策を進めることができます。
解答の解説を読んで学習
過去問題の利用は、理解度の確認において大変有益です。
自分が把握できている論点とまだ理解できていない論点をはっきりと見極め、学習の進捗状況を評価することが非常に重要です。
難解な論点に直面した場合には、解説を細かく読み解くことが必要です。
また、さらに理解を深めるために、適切な時に基礎テキストを参照することも推奨されます。
このような手法を反復することによって、次第に知識と理解力が上昇し、試験に対する自信が築かれることでしょう。
このプロセスを通じて、試験の成功に向けて効果的な学習方法を確立することができます。
過去問題を活用することで、総合的な理解力を向上させ、試験への対応力を高めることが可能となります。
その結果、試験において高い成績を収めることが期待できるでしょう。
タイムトライアルで実力試し
税理士試験は、多くの問題が出題されることが特徴であり、試験対策の中で自分が解答可能な問題を見極めるスキルが非常に重要です。
解答できる問題への対応力を向上させ、確実に正解に導く力を身に着けることが、試験で高得点を獲得するための鍵となります。
さらに、解答が困難な問題や特異的な問題に出会った際には、迷わずスキップする勇気も持つことが求められます。
これにより、試験時間を有効活用し、より多くの得点が可能な問題に集中することができます。
総合的な対策を行い、見極め力や解答力を高めることで、税理士試験に挑む自信もついてくることでしょう。
記述式問題の対策方法
税理士試験は、マークシート形式の試験ではないため、自分自身で解答(アウトプット)ができるように準備しておくことが重要です。
その意味で、過去問を活用することで、似たような問題が出題されたときの解答形式を理解できるようになります。
以下では、記述式問題対策のための具体的な過去問活用法を説明していきます。
解答の構成とポイントを把握
税理士試験の出題は、各科目で過去の出題形式が尊重されていますが、年度ごとに異なる論点が出題されます。
税理士試験において確かなことは、過去問を繰り返し解くだけで合格できる試験ではないという点です。
もちろん、複数年にわたって出題される重要な学習項目は存在します。
さらに、過去の試験問題で出た論点が年を空けて再び出題されることもあり、過去問を一度解いていれば、有利になるケースが存在します。
ただし、各科目の学習範囲が広く、問題演習を行っても初見で正解に至ることが難しい場合もあります。
誤った問題や過去問に対しては、適切に活用することで問題は生じません。
間違えた問題は、自身がまだ完全に理解できていない分野や効率的な解法が身についていない学習項目を示しています。
初回の得点や未解決の問題に固執するのではなく、速やかに解答・解説の理解に励みましょう。
解説を精読し、理解できていなかった項目がある場合は、その場で直ちに知識を吸収します。
そして、次回同様の問題が出題された際に解決できるように努めることが重要です。
模範解答と自分の解答の比較
過去問を活用して独自の解答例を作成しておくのも大切です。
それは、当日の税理士試験において解答するために利用するというよりも、以下の学習ポイントを押さえた学習をするために必要であるからです。
過去問題を活用する3つのポイント
過去問題を活用するには、以下の3点が重要なポイントになります。
過去問活用のポイント1:暗記
1つ目の暗記は、企業会計原則や会計基準の文章を記憶することを指します。
暗記したものをそのまま解答で活用できるレベルにするわけです。
独自の解答例を作成しておいて、そのまま解答に活用します。
暗記すべき項目は、試験で直接問われたり、論述問題の解答作成に必要な知識です。
逆に言えば、頻出の論点について「暗記」を徹底すれば一定の点数が確保できます。
過去問活用のポイント2:理解
2つ目の理解は、特に難解な部分について有効な過去問活用ポイントです。
たとえば、財務諸表論は会計学の一分野であり、試験では会計基準に関して、その理論的根拠が問われることがあります。
学者によって異なる説が存在するため、複数の説を理解し覚える必要があります。
試験委員によって専門や支持する説が異なるため、試験の解答内容も変わってくる場合もあります。
この意味で、財務諸表論の理論の問題を解くための鍵は、問題から論点を理解できるかどうかであり、学習の重点を理解に置くべきであることがわかります。
ここでのポイントは、理解した内容をきちんと解答例として残しておくことにあります。
学習の過程で繰り返しブラッシュアップして、試験本番で活用できるようにしていきます。
過去問活用のポイント3:解答作成技術
さらに、3つ目の解答作成技術は、受験テクニックに相当するものです。
理解が難しい内容を論述することは容易ではなく、試験では解答用紙のスペースや解答時間が制限されています。
この点に関しては、独学で習得するのは困難です。
「暗記」は努力で、「理解」は頭の良さでカバーできますが、合格レベルの解答を作成する技術は他者から学ばなければ手に入りません。
繰り返し受験すれば自分でテクニックを身につけることができるかもしれませんが、効率が悪すぎます。
受験テクニックに関しては専門学校が有利であり、そのために専門学校に通う価値があるでしょう。
ただし、解答作成技術は、自分で磨いていくしかありません。
そのため、独自の解答例を作成しておいて、他の良い解答例と比較しながら、当日の税理士試験に解答できるよう準備していく必要があります。
まとめ
税理士試験において過去問題の活用は、合格への道を切り拓く上で非常に重要な要素であり、その重要性を過大評価することはありません。
学習初期段階から自分自身で過去問題を効果的に利用する方法を見つけ、それを継続的に実践することが求められます。
特に学習を始めたばかりの段階では、過去問題を見てもその内容が理解できないと感じることが多々あるでしょう。
そんな時は、まずは問題が何を問いかけているのか、つまり論点を把握することに焦点を当てて活用していくことが重要です。
その後、解説をじっくりと読むことで、解答に至るプロセスを学び、理解を深めていくことが大切となります。
このような取り組みを繰り返すことで、過去問題の活用に慣れ、徐々に問題解決力が向上していくことでしょう。
それにより、試験においても適切な知識と技術を発揮し、高い成績を目指すことが可能となります。
過去問題の効果的な活用は、税理士試験において成功への鍵となるので、学習初期から意識して取り組んでいくことが望ましいです。
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