近年は年金問題が取り沙汰される機会が増えてきました。将来、私たちは年金をもらえるのでしょうか?この記事では近年の年金問題をフォローアップした上で、年金問題に備えて私たちができることを解説します。

この記事の目次

年金問題は複合的な問題

年金問題は、様々な要因が組み合わさって起きている複合的な問題です。

以下では、少子高齢化が年金制度に及ぼす影響に絞って解説していきます。

年金問題と少子高齢化

年金問題と少子高齢化は深く結びついており、少子高齢化は年金制度の持続可能性に大きな影響を及ぼします。

年金制度は、基本的に「賦課方式」、つまり現役世代が働いて得た収入の一部を保険料として納め、それが直接高齢者の年金給付に使われるという方式で運営されています。

そのため、現役世代(保険料を支払う人々)と高齢者(年金を受け取る人々)のバランスが保たれていることが重要です。

少子高齢化とは、出生率(子どもを産む割合)が低下し同時に平均寿命が延びることによって、社会全体の年齢構成が高齢者側にシフトする現象を指します。

これが進行すると現役世代の人口が減少し、一方で年金を受け取る高齢者の人口が増えることになります。

その結果、現役世代一人あたりの負担が増大し年金制度の持続が困難になる可能性があります。

また、少子高齢化が進むと経済成長が鈍化する可能性もあります。

労働力人口が減少すると生産量が減少し、経済全体の活力が低下します。

これにより税収が減少し、公的年金以外の社会保障費用も増大するという財政的な問題も生じます。

このような問題に対処するためには、年金制度の改革が必要とされています。

具体的な改革策としては、年金の支給開始年齢の引き上げ、保険料率の見直し、所得に応じた給付額の調整などが議論されています。

また、少子化対策や女性や高齢者の労働力参加の促進、移民政策などを通じて労働力人口を増やす取り組みも重要です。

年金問題と年金原資の運用利回りの低下

年金原資の運用利回りとは、年金資金が投資された際に得られる投資利益(リターン)の割合のことを指します。

年金制度においては、積立金を適切に運用し、それによって得られる利益を年金給付に反映させることが重要な役割を果たしています。

しかし、運用利回りが低下すると、それが年金給付に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

運用利回りが低下するということは、投資で得られるリターンが減少することを意味します。

その結果、年金制度の持続可能性に影響を及ぼす可能性があります。

運用利回りの低下にはいくつかの要因があります。

最も大きな要因の一つは低金利環境です。

経済が停滞すると、中央銀行は金利を下げて経済活動を刺激しようとしますが、これが継続すると、安全な投資先とされる国債などの利回りが低下します。

この結果、年金基金などの大きな機関投資家は適切なリターンを得るために、よりリスクの高い投資に進出することを強いられる可能性があります。

また、経済成長の鈍化、株式市場の低迷、地政学的リスクの増大なども運用利回りに影響を及ぼします。

年金問題と老後2000万円問題

老後2000万円問題とは、2019年に日本で話題となった、高齢期の生活資金に関する問題です。

日本の金融庁は2019年に「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」を発表しました。

その中で、夫婦2人で老後30年間を生活するためには公的年金以外に約2000万円の貯蓄が必要という試算結果が示されました。

この試算結果が公表されると、大きな反響を呼びました。

多くの人々が、年金だけでは老後の生活が賄えず自己負担が増えることへの不安を感じ、この問題を「老後2000万円問題」と呼び始めました。

老後2000万円問題は、年金制度の持続可能性、少子高齢化による社会保障費の増大、低金利環境下での貯蓄難など、高齢社会における様々な課題を浮き彫りにしたのです。

この問題は個々の老後資金の準備だけでなく、社会保障制度全体の見直しを求める議論を引き起こしました。

年金問題は今後どうなる 

年金問題は今後、以下のような状況となる可能性が高いです。

今後の年金問題を考える上で参考にしてください。

年金支給額減額の可能性が高い

年金制度そのものが破綻することはないにしても、年金支給額は減額となる可能性が高いです。

現在の若い世代の人たちは、払い損が起きるから年金を払いたくないと勘違いしている人がいます。

「払い損」とは、年金として受け取る金額が自分が納めた保険料の総額を下回る状況のことです。

しかし、現行の年金制度では払い損が起きることは想定されていません。

もともと、年金の仕組みは受給者が自分が払った額よりも多くを受け取るように設計されています。

払い損が生じない理由としてまず基礎年金の半分は税金によって賄われており、また厚生年金の保険料は雇用主と労働者が半分ずつ負担しているため、そもそも自分が年金として納めた額=年金額ではありません。

しかし、払い損が生じないとは言っても年金支給額そのものは減額される可能性が高いと考えられます。

将来的には2人以上で1人の高齢者を支えることになる

将来的には2人以上で1人の高齢者を支えなければならない可能性があります。

年金制度における支える人数と支えられる人数の比率は、社会の人口構成、具体的には労働力人口(年金を支払う人々)と高齢人口(年金を受け取る人々)の比率に大きく依存します。

少子高齢化が進む日本のような国では、将来的には現役世代の人数が高齢者の人数に比べて減少し、それにより現役世代1人あたりが支える高齢者の人数が増える可能性があります。

しかし、2人以上で1人の高齢者を支えるという具体的な比率については、未来の人口動態、労働市場の状況、年金制度の設計等、様々な要因により変動するため、現時点で具体的に予測することは難しいです。

特に、労働力人口を増やすための政策(例えば女性や高齢者の労働参加の推進、移民の受け入れ等)や生産性の向上、年金制度自体の改革等が将来の比率に影響を及ぼす可能性があります。

年金問題は非常に複雑で、未来予測には多くの不確実性が含まれます。

そのため、具体的な数値を述べることは適切ではないかもしれませんが、少子高齢化が進む社会では、現役世代が高齢者を支える負担が増える可能性があることは理解しておくことが重要です。

年金制度維持のための増税が行われる可能性がある

将来的に、年金制度維持のための増税が行われる可能性があります。

年金制度のような社会保障制度の財源については、一部を税金で賄うというアプローチが取られることもあります。

しかし、増税は国民の生活に直接影響を及ぼすだけでなく経済全体にも影響を及ぼすため、その決定は慎重に行われるのが普通です。

増税を行うときには、その必要性や公平性、経済への影響など多方面からの評価が行われます。

したがって、年金制度維持のための増税が行われる可能性が高いと断定することは難しく、具体的な判断はそのときの経済状況や政策によるところが大きいです。

ただし、年金制度を維持し、かつ社会保障制度全体を持続可能にするためには保険料収入の増加、財政支出の効率化、経済成長の促進など様々な手段が考えられます。

増税もその一つの手段となる可能性があるので注意してください。