小学校・中学校で憲法について勉強してきた人は多いかと思います。実はこの憲法に税金のことも書いてあるのです。そして、憲法を見ると、税金は「誰かが勝手に決めるもの」でも「一方的に取られるもの」でもないことが分かります。この記事では、憲法の中で税金がどう扱われているのかをお伝えします。

この記事の目次

【登場人物】

よっちゃん(以下「よ」):まゆこの夫。行政書士。仕事はできるが税金はくわしくない。特技は料理と釣り。夢は釣り三昧の日々。

まゆこ(以下「ま」):税理士・税務ライター。「こむずかしい税金をいかに分かりやすく表現するか」ばかり考えている。趣味は、よっちゃんのごはんを食べること。

税金は憲法と深くかかわっている

ま「よっちゃん、憲法の意義と3つの基本原則を言ってみて」

よ「基本的人権の尊重・国民主権・平和主義」

ま「その中に税金が深くかかわる原則があるの。どれでしょう」

よ「国民主権」

ま「正解」

よ「3つに分かれているけど、基本的人権の尊重って国民主権の原理と結びついてるからね。王様が国民を奴隷のようにこきつかう専制政治だと、人権なんてしっかり保障されないでしょ。民主主義政治であって初めて基本的人権の尊重ってなされるわけ」

ま「ほうほう。税金も、憲法に触れられているんだよね」

よ「どの条文だっけ」

ま「第30条と第84条。特に第84条は、国民主権との結びつきを表すと言われているよ」

憲法第30条「納税の義務」とは

ま「最初に第30条ね。こんな条文になっているよ」

第30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

よ「『納税の義務』だね。『教育の義務(第26条第2項)』『勤労の義務(第27条第1項)』と並ぶ国民の三大義務の一つだね」

ま「そうなんだけど、これはもっと深い意味があるんだよね。その前の条文は財産権について書いてあるの。並べるとこんな風になる」

第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

「法律で定めるところにより」の重要性

ま「ポイントは『法律の定めるところにより』。第29条で定める財産権というのは、憲法が保障する経済的自由権の1つなんだけど、租税つまり税金を強制的に納めてもらう行為は財産権を侵害するものなんだよね」

よ「税金は国家運営の経費としてどうしても必要だしね」

ま「それを『法律の定めるところにより』の一言で侵害される範囲を限定しているのよ。『法律が決める以上の納税の義務は負わないよ』と」

民主主義国家で税金が必須なワケ

よ「『30条があるから税金を納めなくてはならない』みたいな意味ではないのね」

ま「条文に書かれていなくても国民の納税は必要よ。民主主義下だと『財産というのはあくまでも国民(市民)が持つものであって、国家は何も財産を持たない』という考え方なんだよね。だから、国家運営の基盤は税金なの。公債(借金)とかもあるけど、基本は税金収入」

よ「なるほど。人が集まって何かをするとき、お金は必要だよね。PTAだって会費を集めるし」

ま「『国家は主権者たる国民の自律的団体なんだから、その会費として自ら負担すべき』という考え方もあるよ。民主主義からみた税金としての考え方が30条に反映されている、というわけ」