社会問題と化した人手不足。今やあらゆる業種が直面する課題ですが、その解決には人件費という問題を同時に解消する必要性があります。

この記事の目次

営業利益を増やすべく、地代家賃を抑えたい。

会計本来の役割ですが、改めて見ると「ビジネス→会計」なる一方通行です。

会計を見据えながらビジネスを考えるという視点を加え、目線を2車線にする。

両者の横断を可能にすれば、間違いなくいずれの精度も向上します。

ビジネスから会計、会計からビジネス第9回は、「人件費」です。

社会問題化する人手不足

人手が足りない。

以前は、福祉や医療など特定分野で取り沙汰されていただけでしたが、現在ではすべての業種において大きな問題となっています。

厚生労働省が毎月発表する労働経済動向調査によると、令和5年2月現在、正社員等労働者過不足判断D.I.をみると、平成23年8月調査から47期連続して不足超過となっていることが明らかになっています。

引用:労働経済動向調査(令和5年2月)の概況|厚生労働省

こうした人手不足の結果、別の問題が取り沙汰されるようになりました。

人件費です。

もちろん、被雇用者サイドから見れば、人件費(雇用者にとっての)=給与が上がることは嬉しい限りですが、ビジネス、引いては企業会計の観点から確認すると、全体に影響を及ぼす大きな課題になりかねません。

ビジネスと会計の視点

改めて、人件費がビジネスと会計にとってどのようなものなのか。

一般的には人件費=給与と思われがちですが、そうではありません。

いつも通り、ビジネスと会計の両面から確認してみましょう。

ビジネスの視点

まず、ビジネスです。

ビジネスにおける人件費は、雇用形態、勤務の性質によって分類されています。

大きくは正規雇用か非正規か、製造(内製)か非製造か、です。

人件費は、もちろん費用そのものですが、売上計上に決して欠かすことのできない必要経費でもあります。

当然、資本などと同様に、投下した金額に対してどれくらいのパフォーマンスを生み出すのかが問われます。

最もポピュラーな指標が、労働分配率と労働生産性の2つでしょう。

前者は、利益に対してどのくらい人件費が占めているのか、後者は従業員あたりの付加価値(非製造業における売上総利益)をそれぞれ示しています。

会計の視点

続けて会計です。

会計面における人件費には、外注費、労務費(直接、間接)などの原価に属するもの、給与、役員報酬、福利厚生、法定福利など費用に属するもの、そして退職年金引当金のような貸借に属するものがあります。

退職金関連以外はP/Lです。つまり、その変動次第で、損益面に多大な影響を及ぼすことがわかります。

P/Lの中、原価に組み込むべきか、費用に組み込むべきか、という判断がよく見受けられますが、事業の収益性指標である営業利益の観点から見れば、いずれの場合であっても最終的な差はありません(売上総利益率は影響しますが)。

これは、会計面における人件費の扱いは、基本的に「減らす/増やす」か「原価/費用」の4通りしかないことを意味しています。

結果、多くの企業で「如何にして人件費を減らすか」という観点で捉える傾向が強いのは当然のことと言えます。

しかし、この観点から見事に距離を置き、成功を収めている企業も存在しています。