別の観点を創ったコストコ
少し前のニュースで、米国大手チェーンのコストコが時給1500円でスタッフ募集をかけ、大きな話題になりました。
国内では、ようやく最低賃金の平均が1000円を超える検討をされはじめた矢先、悠々とそれを超える水準を提示してきたのですから、驚きを隠せません。
人手不足に悩む周辺の小売店から悲鳴があがっているとの話も併記されていたくらいです。
ただし今回の話は、コストコが単純に人件費を上げたということではありません。
コストコの儲けの最大の仕組みは、よく知られている「会費」です。
年間4400円の会費によって、販売する商品の価格をほぼ原価で出せる状態をビジネスモデルとして組み上げています。
ここでお気づきの方も多いでしょう。
会費は年会費。つまり、前受金(Deferred membership fees)です。
ビジネス面から見れば同じレベニューですが、会計面から見れば、B/Sに越境して人件費を支えていることがわかります。
一方、今回コストコの人材募集によって影響を受けた小売店は、上述したとおりP/Lの範囲内かつ、費用というフレームに収まったままです。
今の構造のまま、単純に時給を上げるという選択肢は取れないわけです。
まとめ
今回は、人件費についてご紹介しました。
人件費をどう扱うかは、企業にとって、その事業の行く末を左右する大きな課題の1つです。
同時に、社会問題化している人手不足がその制約条件としてのしかかってきています。
昨今の生成AIやロボット技術の発展・拡大が、人手不足問題解決につながることが期待されていますが、残念ながらここ数年で実現できるレベルの話ではありません。
まだしばらくの間は、人件費に関する悩みとの格闘が続きそうです。
とはいえ、ご紹介したコストコの事例からもわかる通り、旧来からある観点を離れ、戦略性をもたせることで、人件費の問題と距離が取れる可能性があることも確かです。
そのためには、ビジネスだけ、会計だけと一方だけではなく、両面から掘り下げてみてください。
これまでの常識にとらわれない新しい手段の発見につながるかもしれません。
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