採用難をはじめとする課題に直面した辻・本郷では、解決策として「研修プログラムの見直し」を行いました。同様の課題をお持ちの会計事務所の皆様へ解決の糸口になるよう、見直しの背後にあった4つの理由を明らかにします。
こんにちは。辻・本郷ITコンサルティングで、辻・本郷グループはもちろん、それ以外の会計事務所にも教育支援を行っている、佐藤です。
会計事務所の成長において、人材の質は非常に大切な役割を果たします。私たちも、人材に関する共通の課題に直面し、解決策を模索してきました。
ただ人材を確保するだけでは足りず、私たち自身もいくつもの失敗を重ねてきた経験があります。
そんな中で、本質的な解決策は、人材の質を向上させ、各職員の潜在能力を最大限に引き出すことにあると学びました。
このために、私たちは研修プログラムの見直しを行いました。ここでは、見直しを行うに至った4つの理由を深掘りしていきます。
私たちの経験が、同じ課題に直面している他の会計事務所の皆様にとって少しでも参考になれば幸いです。
1. 受け身研修からの脱却
これまでは、長年にわたり月に一度の土曜日に全体研修を行うという形式で研修を実施をしていました。
これは一見すると、組織全体のスキルアップを図る上で効率的な方法のように思えます。
しかし、業務の多様化が進む中で、一律の研修内容では、実際に職員が取り扱う業務の違いを考慮できていないという問題が浮き彫りになってきました。
専門性が求められる一方、特殊案件や裁決事例など、特に新人には目先の仕事と遠いテーマが多くなりました。
結果として、「研修を受けることが目的」となり、研修としての実質的な効果が薄れてしまいました。
しまいには、研修テーマが自分の仕事には直接結びつかないことを理由に、せっかく出社しているからと自分の身の回りの業務を進める職員も出始めました。まさに悪循環といえる状況です。
このような受け身の研修は、参加者の意欲を引き出すことも難しく、学びの深化にもつながり難いという欠点があります。
特に、会計事務所のような専門性が高く業務内容が複雑である環境では、職員一人ひとりのニーズに合わせたカスタマイズされた研修が求められます。
この失敗を経験し、受け身の研修から脱却するために取り入れた施策をご紹介します。
(1)自主研修制度
業務終了後、勉強したい内容、事例共有のための勉強会、受講してみたい社内講師の招聘を職員が自主的に行い勉強会を開催し、実務能力の向上を目指しました。
また、研修参加者には当日に限り懇親会費用が会社から支給されます。人数定員の要件を満たせばテーマは自由に設定可能なので、実際の業務に直結するスキルや知識を深く理解することができます。
勉強会実施後は懇親会を通して職員同士のコミュニケーションの場を提供することにより、横のつながりを強化することも可能です。研修内容は動画と資料をアーカイブして当日参加できなかった職員にも情報共有が可能な仕組みになっています。
(2)実トレ試験
会計・税務に必要な「基礎知識の習得」や「専門知識の向上」のサポートを目的としたクラウド型学習システム「実トレ試験」を活用しました。
毎週月曜日、会計税務に関する試験問題5問が全社員に配信され、出社したらまずは20分間で全社員が実トレ試験に取り組みます。
試験問題を回答後、各部門ごとにミニマムな研修を実施して問題の振り返りを行います。
実務知識のインプット・アウトプットを毎週繰り返すことにより、全社員の知識を底上げします。
2. 事務所の拡大
二つ目の理由が、事務所の拡大です。新規事務所の開設やM&Aによる組織の統合などで事務所が拡大し、業務の属人化という課題が明らかになってきました。
特定の個人に依存する業務運営は、組織が拡大するにつれて、リスク管理や業務の品質維持に大きな障壁となります。
この問題に対処するためには、標準化された教育体制の整備が不可欠です。
統合した事務所は、これまでの体制や運営を尊重しながらも全職員が共通の基準とプロセスで業務が行えるよう、標準的な研修プログラムを整備する必要がありました。
標準化された教育体制が基盤となり、職員一人ひとりの能力向上と事務所全体の品質保証に不可欠です。事務所が拡大する過程で直面する課題に効果的に対応し、持続可能な成長を実現するために、教育体制の強化に注力していく必要があります。
辻・本郷では試算表作成などの標準的な業務は動画を活用したOJTにより、属人化しない教育体制の構築に取り組んでいます。
3. 働き方改革
近年、働き方改革が多くの業界で推進されていますが、会計事務所も例外ではありません。
目指すは、無駄な残業を減らし、多様で柔軟な働き方を許容する環境の実現です。この変革は、人材を確保し、業務の品質向上と職員の満足度を同時に達成するために必要不可欠です。
しかし、これらの目標を達成するためには、単に残業時間の規制や働き方を変えるだけでは不十分です。根本的な解決策として、人材教育の強化が求められます。
業務の効率化と働き方改革を推進する上で、業務フローの可視化は欠かせないステップです。私たちは、実務の知識・スキル習得と同時に業務フロー研修も実施しています。
業務フローを作成し、これまで通りのやり方や慣習を見直し「作業」と「仕事」を分けることが肝要です。
「作業」は積極的にツールやRPA(人がパソコン上で日常的に行っている作業を、人が実行するのと同じかたちで自動化する機能)を活用し、手作業を減らす必要があります。そして、本来は人が行うべき「仕事」に注力する時間を増やせば、サービス品質を向上しながらも業務を効率的に行えるようになります。
作業の自動化と業務フローの最適化を通じて、職員はより多くの時間を自身の専門性を生かした仕事に費やすことができます。
これは、職員の満足度の向上だけでなく、事務所全体のサービス品質の向上にも直結します。業務フロー研修は、私たちが目指す効率的で柔軟な働き方を実現するための重要な一歩となるでしょう。
4. 新卒・未経験者採用
会計事務所における人材不足は、業界全体の課題です。
この問題を解決するために、新卒・未経験者の採用を積極的に行っています。新卒・未経験者採用は、人材確保と組織の若返りを行い、新たな視点やアイディアをもたらします。
ですが、同時に早期育成・即戦力化が必要となります。そのためには、計画的な教育研修プログラムの策定や実践的な人材育成の体制を整えなければなりません。
新人の即戦力化の具体的な施策については、「新卒・未経験者を3カ月で即戦力化!会計事務所のための『人材教育システム』とは」で詳細を記載しております。
最後に
本記事では、辻・本郷が研修の見直しを行うこととなった受身研修からの脱却、事務所の拡大、働き方改革、そして新卒・未経験者採用という4つの理由をテーマに、教育研修を通して会計事務所が成長し続けるための方向性をご紹介しました。
教育体制の標準化、知識・スキルの向上にお役立ていただけるのは、辻・本郷ITコンサルティングが提供する会計事務所向けサービス「NEXTA(ネクスタ)プレミアム」です。
(1)実トレ試験
会計・税務に必要な「基礎知識の習得」や「専門知識の向上」のサポートを目的としたクラウド型学習システムです。
週1回配信される試験を受験できます。年末調整や確定申告など時期に応じた問題や、辻・本郷 税理士法人の事例に基づく問題も出題されるため、実務に役立つ内容になっています。試験結果を全国順位で表示、管理者はスタッフの集計レポートが出力可能です。
(2)実トレ研修
試算表や申告書の作成等、会計事務所の主要業務を作業の流れやポイントを動画で確認しながら、実際に会計ソフトの入力を行っていただけます。
税理士業務、PC基本操作、情報セキュリティ、ビジネスマナーの研修メニューもご用意しております。
(3)セミナー動画
税務・実務の関連情報、税制改正やインボイス制度など旬なトピックを題材としたWebセミナー動画、NEXTA限定のシリーズ動画をお届けします。NEXTA プレミアム会員特典として、辻・本郷で主催した有料セミナー動画をご視聴いただけます。
人材育成についてのお悩みは辻・本郷ITコンサルティングへぜひお気軽にお問合せください。
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