青木惠一(MMPG副理事長、税理士法人青木会計代表、税理士)

■昨年KaikeiZineの書籍記事にもご登場いただいたのであらためてにはなりますが、まずは先生のこれまでのキャリアや事務所についてお聞かせいただけますでしょうか。
青木惠一(以下青木):弊事務所は、私が平成4年の6月1日に設立をしてスタートしました。その後平成14年に税理士法が改正になり、税理士法人を設立することができるようになりましたので、同年の7月1日に税理士法人に組織変更をしまして、今日に至ります。
■独立前はどのようなキャリアを歩まれてきたのでしょうか?
青木:私が税理士事務所開業に至るまでの道程は、MMPGととても関係の深い話になります。私は、MMPGの創設者である川原邦彦先生の事務所で、職業会計人としてスタートいたしました。私の親父が地方議員をしていた関係で、知り合いの国会議員の秘書の方に会計事務所の紹介をお願いしたところ、その秘書の方が中央大学時代に川原先生ととても仲が良かった方で、そのご縁で川原先生の事務所に入所をしました。その後、大原簿記学校の福岡校で講師をやるために3年間福岡に行ったり、その間に税理士試験に合格をしたりして、当時の川原会計事務所にまた戻ります。そしてそこから数年後、のれん分けを受ける形で税理士事務所をスタートしました。
医療・介護・福祉と税務会計の歴史
■医療分野に関しては、いつ頃から手がけられているのでしょうか?
青木:当時の川原会計事務所、いまの税理士法人川原経営は当時から医療分野に専門特化した事務所で、自分もそこで医療ばかりやっていました。
ここで、税理士業界と医業分野のつながった歴史をおおまかにお話しさせていただくと、昭和60年に第1次医療法改正がありまして、これによりそれまで常勤の医師・歯科医師が3人以上いなければ医療法人の設立ができなかったのが、1人の常勤医師・歯科医師で設立可能とされました。これは非常に大きな改正でした。
そして、平成元年に租税特別措置法が改正となります。社会保険診療が5,000万円を超える医師・歯科医師は、医師優遇税制と言われていた概算経費特例が使えなくなって、実学による申告をしなければならないとされました。しかも当時は、課税所得金額が2,000万円を超えると、超えた部分に65%というハイパーな超過累進税率が適用されていました。いまは課税所得金額が4,000万円を超えても55%ですから、10%も高い。しかも、課税所得金額のラインが4,000万円ではなく2,000万円でしたから。その所得税法改正で、所得が高い医師と歯科医師は、税金が相当増えることになったわけです。
そこで、医師優遇税制の改正と先ほどの医療法改正を組み合わせて、個人開業医の先生方に医療法人化のご提案をし、医療法人の設立を推進していきました。これが医療法人ブームとなり、平成元年には1年間に5千法人を超える一人医師医療法人が設立されることになります。その医療法人ブームの中で、我々税理士業界と医療機関とのコンタクトが密になるわけです。当時は平成元年に消費税法が導入され、多くの税理士は消費税を熱心に勉強していたわけですが、医療機関の社会保険診療報酬は消費税が非課税だったこともあり、我々は消費税は置いておいて医療法人の設立提案とその手続きに没頭していました。
その後日本社会は高齢化の進展とともに、平成12年に公的介護保険法が導入されます。それにより医療分野だけでなく、介護・福祉分野が大きくクローズアップされ、我々MMPGも先代の川原名誉理事長を先頭に「医療・介護・福祉」分野を総合的にターゲットとした戦略を練り、活動の幅を広げていきました。その流れに私も同乗させていただいた次第です。これが、私が医療・介護・福祉に関わるようになってからのおおまかな流れです。
■なるほど、とても分かりやすいです。
青木:そのため、いまの自分があるのは川原邦彦先生のおかげだと思っています。MMPGにおいても医療・介護・福祉を通じて社会貢献をしていくという川原イズムをしっかりと受け継ぎ、実践させていただいているわけです。
医療・介護・福祉を取り巻く現状など
■医療・介護・福祉の税務会計にはどんな面白さを感じられていますか?
青木:専門特化していくことにより、専門分野に関連した情報がたくさん入ってきます。また、専門分野に精通した人脈もできていきます。そしてそれらをクライアントにフィードバックすることで、ワンランク上のサービス提供につながり、クライアントからの信頼が得られ、こちらもその信頼に応えようとする。そうしたシナジー効果で、どんどん面白くなっていくところですかね。
例えばここ20年ぐらい、厚生労働省は「2025年問題」という第1次ベビーブーマーが全員後期高齢者になる年を着地点とした、「地域包括ケアシステムの構築」という政策を練り、実行に移してきました。その間に新型コロナウイルス感染症による大変な時期があったりしましたが、来年が2025年でいよいよ着地点です。この着地に至る長い期間、我々は政策の方向性を見極めながらクライアントの経営が良い方向に行くようにアドバイスしてきたつもりです。そしてすでに、厚生労働省では次の政策目標を掲げつつあります。次のターゲットイヤーは2040年、つまり昭和46年から49年に生まれた第2次ベビーブーマーが65歳を超え、かつ、生産年齢人口が激減してくる時期に設定しています。その時代においても持続可能な社会保障の恩恵を受け続けられるようにするというのが、次の政策目標です。今後も我々はこのような社会保障政策の方向性を見極めながら、経営に役立つアドバイスをしていこうと思っています。

2040年に向けて国からさまざまな政策が出てくるであろう中で、クライアントが地域で活躍できるベースをどのように作ることができるか、税に関するプランニングをきちっとやり、政策に沿った経営アドバイスをしていけるかが、我々に問われることだと思います。みなで集まってそれをやっていくのが、 MMPG という団体になりますね。
■日本の少子高齢化、労働人口減少の問題はある程度しっかりと分析はされていて、すでに対策も打たれているという認識で良いのでしょうか?
青木:そうでもないんです。この話になると我々は暗くなりがちですが(笑)、たとえば一昨年の出生数が約79万人で、昨年が約75万人。出生数が80万人を切るのはたしか9年くらい先の推計だったはずなんですが、ものすごい勢いで減っています。つまり、私が先ほど話したような政策が追いつかないペースで状況が悪くなっていく可能性も、十分にあるんです。ただし、もちろん厚生労働省もいろんな政策を打っていきます。その上で、厚生労働省や財務省などとの太いパイプを活かし、意見交換をしながら情報を得て、医療機関や介護施設がうまく経営できるためにコンサルティングをしていくことが、私たちの役割になります。また、机上で政策を作ってもうまくはいきませんから、官僚の方々も現場がどうなっているかを知りたいのです。実際に我々も、現場からの意見をかなり上げさせていただいています。
■その省庁とのパイプ以外にも、MMPGの会員になるメリットがあれば聞かせてください。
青木:MMPGの会員である、医療・介護・福祉を手がける各事務所がどういう取り組みをしているのか、事務所の経営や運営の参考になる生の情報が聞けます。それは、自分の事務所にも大いにフィードバックできますよね。
ちなみに入会金が100万円、月々の会費が16万円と、MMPGの会費は決して安くはありません。そしてそれだけの額を支払うとなると、たいがいの方が2種類に分かれます。ひとつは、「自分は会費をこれだけ払っているのだから、それに見合う情報をもらえるのか?クライアントも紹介してもらえるのか?」というパターン。もうひとつは、「よし!この16万円の元を取ってやる!」と、自分が知りたい情報や欲している情報、他の事務所の成功事例などを能動的に取りにくるパターンです。後者のほうが、MMPG でうまくいく方は多いですね。 私もMMPGの役員として新しい会員を迎えるときに、「座して待っているだけでなく、むしろ欲ばりに情報を取りに行くくらいの方のほうが成長できます」と、お伝えしています。
青木会計の人材採用について
■続いて人材採用についても聞かせてください。転職者にとって、青木会計で働くメリットはどこにありますか?
青木:今世の中にはすごい量の情報がありますし、この非常に複雑化した社会で、1人の税理士やひとつの事務所がオールラウンドでやっていくのはなかなか難しいと思います。私がこの業界に入った頃、昭和の終わりから平成の初めくらいにかけては、税理士事務所や税理士は、俺に全て任せてくれれば大丈夫だから、何でも相談してという時代でした。正直に言うと、私もオールラウンドプレーヤーへの憧れがなかったわけじゃありません。でもいまは、川原邦彦先生のもと医療にどっぷり浸かって良かったと思っています。
医療・介護・福祉の業界も世代交代が求められていて、事業承継や資産税が必要な状況です。私の事務所は、柱が医療・介護・福祉関連と資産税関連で、そこに専門特化することにより、情報が入ってきて人脈もでき、仕事の質も上がっていく。そうした質の高い仕事をしたい方は、専門領域を持つ事務所で働く方が、成長という観点でメリットが大きいのではと思います。設備投資がある程度できて、時代についていくための情報を取れるような体制の事務所でないと、これからは生き残っていけないんじゃないかとも思います。そうした先々のことを意識して経営しているつもりですので、それが弊事務所で働くメリットにつながるかなと思っています。
■青木会計ではこういう方を積極的に採用したいというのがありましたら、それもお聞かせください。
青木:やっぱり成長意欲がある方が良いです。ただし税理士として一人前になるなら、ある程度の時間が必要です。専門特化はさらに時間を要します。その意味で、今の若い会計人材は大変だなとも思います。私どもの事務所も、就業規則を作り、36協定も出して、労働時間の管理をきっちりやり、労務はホワイトでやっていますが、私の若い頃は、会計事務所は不夜城と言われ、好きなだけ仕事をしていました。でもいまはそういうことができない時代なので、現在の若い会計人材たちは、時間を意識しながらどうスキルを付けていくかをよく考えなきゃいけませんよね。これに関しては、4月から働き方改革の取り組みが始まる医師にも同じことが言えるわけですね。そうした労務関係の変化もキャッチアップをして、社内だけでなくクライアントに対しても、昔とは違う人材の育て方を提案できるようにならなくてはとも思っています。
■なるほど。では最後に、これから医療・介護・福祉分野の税務会計を手がけたいという方にメッセージいただけますでしょうか。
青木:社会保障政策はやっぱり国の重要な政策の一つですから、そこに関わる医療機関、介護福祉関係の事業に対して、豊富な専門知識を持って良いサービスを提供したいと思う方は、私どもの事務所なり、MMPGの会員事務所なりの扉をぜひ叩いていただければと思います。石の上にも3年と言いますが、我々の業界は1年1回転ですから、 少なくともまずは3回転、歯を食いしばってがんばって仕事をすると将来的なものが見えてくると思います。
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税理士法人 青木会計
●設立
1992年6月
●所在地
〒110-0004
東京都台東区下谷1-6-6 青木会計ビル
●会社HP
https://aokikaikei.or.jp/




