小野瀬貴久(小野瀬・木下税理士法人、小野瀬公認会計士事務所代表社員、公認会計士・税理士)
■まず、先生のこれまでのキャリアや事務所のご紹介からお願いいたします。
小野瀬貴久(以下小野瀬):今、水戸の事務所からZoomをつないでいるのですが、私は茨城の水戸の出身です。大学から東京に出て、4年のときに会計士試験に合格し、卒業後は今のEY新日本有限責任監査法人に勤めました。当時は、国内企業の法定監査やIPOなど、いわゆる会計士の主査業務を行っていました。
父の小野瀬益夫が40年近く前から水戸で公認会計士事務所を開業しているので、6年ほど前に地元に戻り、それまでの監査から税務にシフトしたというのが、私のキャリアになります。
小野瀬・木下税理士法人、小野瀬公認会計士事務所は水戸とひたちなかの2カ所に事務所がありまして、現状は水戸が約50名、ひたちなかが約20名の規模になります。そのスタッフの半分くらいが監査担当で、残りの半分が記帳代行などの入力担当、いわゆる「製販分離」的に事業を行っています。
■他にも、小野瀬・木下税理士法人、小野瀬公認会計士事務所さんは不動産やFP業務も手がけていますが、その中で医療・介護・福祉はどのくらいの割合を占めるものでしょうか?
小野瀬:全体の売り上げの半分ぐらいが医療・介護・福祉のお客様で、特に医療に強いのが水戸の事務所になります。サービスとしては、個人で診療所を開業されるドクターに対して、銀行融資のための事業計画の作成から始めて、実際に開業をされたら税務顧問として関わらせていただき、月次訪問でお客様と会話をしながら経営のお手伝いをしていくという流れが、我々のコアビジネスになります。その後の「医療法人成り」では、県庁の申請手続きなども色々とお手伝いをします。
また、介護・福祉のほうでのメインのお客様は社会福祉法人になります。社会福祉法人は税法上は公益法人等に分類されるため、消費税などの税務のお手伝いもありますが、メインはやはり会計顧問ですね。ご存知かもしれませんが、社会福祉法人の会計基準は省令で定められていて、ものすごく複雑なんです。地方なのも大きいのではと思いますが、介護に強い事務所の勤務経験があり、かつ複雑な経理ができる人が減ってきている印象です。2000年に介護保険がスタートしてから施設も増え続け、社会福祉法人の記帳代行を、入力を含めて丸々やってもらえませんかという依頼は増えています。社会福祉法人は3月末決算のみなので、これからすごい量が始まるんですが(笑)(取材は4月)。
ちなみに事務所の売上のもう半分は、他の多くの会計事務所と同様に、飲食店・製造業・建設業などの一般の事業会社です。その中には地主さんや資産家の方も多いので、やはり相続税の申告のお話しにもなります。その相続税の申告も、水戸とひたちなかでそれぞれ2名ずつ専門の担当者を置いて行っています。これらがうちの事務所のメインビジネスですね。
■医療・介護・福祉関連と事業会社で半々にしているのは、何か狙いがあるのでしょうか?
小野瀬:代表の小野瀬益夫がよく「1/2経営」と言っているのですが、意図的に行っていますね。やっぱり、地方って事業会社の割合の方がどうしても多くなるものです。MMPGの周りの先生の意見も聞きながら、医療だけなく事業会社の税務会計の知識も持っておかないと、地方では様々な依頼に応えられなくなってしまうという判断ですね。それで、バランスがいいのが半々ぐらいじゃないかということです。
■若い世代から見て、会計業界に感じる課題はありますか?
小野瀬:私が今年37歳になるんですが、やはり地方なので、会計士協会も税理士会もこの年で役員をやらないといけないぐらい人材が不足しています。例えば税理士会の水戸支部には200名ほどが所属しているのですが、平均年齢は63歳です。
また、茨城の県南は東京に近いので人口もそこまで減少してはいませんが、水戸より上の県北地域は過疎化が進んでいます。その結果税理士もだいぶ減っていて、下手すると地域に税理士がいないエリアもあります。先生も高齢になっていたりするので、気づいたら何年間か無申告になってしまっていたという納税者の方もいて、うちが引き継ぐこともあるというのが実状です。
また労働人口が減少していく中で、肌感覚としては我々と同じ30代や40代の士業の方も減ってきている印象です。特に地方では、そのスピードがすごく早くなってきていると感じています。そうなると、若いというだけでアドバンテージとなる部分もありますが(笑)。
MMPGについて
■先生は、MMPGの会員の中でも若い部類に入りますよね。
小野瀬:まずすみません。MMPGの会員なのはうちの代表の小野瀬益夫で、私はその代理で会合などに出席しているのは、事前にお断りしておきますね。その上で、たぶん30代の会員はごく少数だと思います。大御所の先生が多いので、いつもすみっこで恐縮して参加していますが(笑)、ただ大御所の先生方を筆頭に、みなさん本当に色々とお話しをしてくださったり、先回りして情報提供をしてくださったりします。決して自分で勉強をしなくていいという意味ではありませんが、自分が今悩んでいることって、言ってしまえば会員の先生方はおそらくもう何年・何十年前にすでに悩んでいることが多いと思うんですね。その知見を得られるというのは、やっぱりメリットとしてはとても大きいです。情報提供の話で言うと、自ら情報を取ってこられる先生もいらっしゃって、最も早いタイミングで情報提供をしてくれます。また年齢が比較的近い先生は、電話やメールで気軽にいろんな相談に乗ってくれますし。
ちなみに、MMPGに出会い、感動して会員になった父親世代から2代目の若手の先生たちになると、疎遠になる、MMPGを抜けてしまうという話も聞きました。MMPGの良さは実際参加しなければ実感できないので、もったいないなと思います。それに関しては、年上の先生方も危機感をすごく持っていらっしゃり、私のような若いのにも声かけてくださっているところもあるようです。
■その「MMPGの良さ」を具体的に聞かせていただけますか?
小野瀬:まずは医療・介護・福祉の分野で、診療所や病院、社会福祉法人なども含めて本当に細かくいろんな分科会があり、研修会もある点ですね。リアルでも参加できますし、ウェブでいつでも見られるようにもなっています。加えて掲示板まであり、質問を投げると様々な回答がもらえます。
また医療や介護の勉強をしようとする時に、研修サイトを見たり、本屋で専門書探したりもするのでが、結局この分野に関してはMMPGの研修資料がダントツに詳しく、かつ実務的だと思います。新人の若手職員にも共有ができるので、たとえ素人で入社したとしても勉強の題材には事欠きません。勉強をする場、知識をつける場としてすごく有意義で、かつ会員の先生方はみなさん経営者でもいらっしゃるので、自分の事務所の経営ノウハウを、そこまで話していいのというくらいオープンに話してくださいます。
■ちなみに、そもそもお父様はどういった経緯でMMPGの会員になられたのでしょうか?
小野瀬:事前に父に確認したところ、あるセミナーで現理事長のお父様である川原邦彦先生にお会いし、先生の推薦を受ける形で1992年に入会したそうです。もう30年以上前の話ですね。当時は医療経営と言えば川原先生が全国 No.1で、自分から訪ねて行ったそうです。その出会いをきっかけに、新規開業をするドクターのお客様を増やしていこうとなり、川原先生やMMPGから学びながらコツコツとやって、現在に至るとのことです。2000年の介護保険の時も、小野瀬は今後医療の診療報酬と同じように広がっていくだろうと考え、やはりMMPGなどで勉強をしたと聞きました。今社内に福祉を専門でやっているスタッフが何人かいるんですが、当時から専門家を育てようとやってきたと聞いています。
■今後、MMPGをこんな風に活用していけたらというのもありますか?
小野瀬:まずは、先ほど言った新人教育ですね。医療分野を学ぶのが重要だよとの啓蒙も含め、勉強ができる機会としてMMPGをもっと活用していきたいです。ちなみに今は自分が副代表で、代表の父と、あと父とずっと二人三脚でやってきた番頭さんのような税理士先生も代表社員なのですが、その方も父と同じ世代です。新人教育に関しては、私が一緒にやっていける役員や管理職、さらに次の世代でも役員候補がいないと、事務所として続いていかないと思っている部分も大きいです。
あとは、茨城に帰ろうと思っていたり、茨城で働きたいと考えていたりする税理士の先生がいたら紹介いただける、などの人材採用の面でも相談に乗ってもらえたらいいなというのもありますね。
小野瀬・木下税理士法人、小野瀬公認会計士事務所の人材採用について
■ちなみに、KaikeiZineの運営元のレックスアドバイザーズも会計人材の紹介業をやらせていただいているのですが、実際採用はどうされているのですか?
小野瀬:それこそ御社のようなエージェントさんを利用させていただいたり、あとは紹介いただいたりとかですね。そうして今のところはスタッフ数が徐々に増えてはいますが、でもどうしても人口は地方からどんどん歯抜けになっていくじゃないですか。お客様で考えても、茨城のクリニックの新規開業もやはり東京に近い県南地域が多くて、例えば筑波大の附属病院がつくばにあるので、そこから開業される先生が多いものです。人口も多いですし、実際自分も最近はつくばに通うことが増えています。あとは、栃木まで行って自治医大とかになります。そうなると、うちもゆくゆくは事務所を移転しないといけないのではと考えたりもします。
■転職を考えている方に向け、小野瀬・木下税理士法人、小野瀬公認会計士事務所で働くことのメリットを聞かせてもらえますでしょうか。
小野瀬:先ほどお話した通りで、お客様の半分は医療・介護・福祉関連です。非営利法人で見ると、医療法人や社会福祉法人はもちろん、学校法人や宗教法人といった公益法人のお客様もけっこう多いです。もちろん株式会社のお客様もいて、色々な法人類型のお客様がいます。非営利法人ごとに会計基準も違いますし、そもそも法人ごとに業種や特色が違うので、うちに来てもらえれば、そうした幅広い経験が積みたいという希望には応えられると思います。
■こんな会計人材を採用したいというご希望もありますか?
小野瀬:ドクターとの仕事に意義や楽しさを感じ、仕事に意欲が持てる方じゃないと、ゆくゆくはつらくなってしまうかもしれません。私自身も、この仕事が好きなんですよね。
ただ、新人が来たら私も時間の許す限り直接教えますし、他の担当者にも付いてもらってみんなで育てますので、ぜひ恐れずに挑戦していただきたいですね。
■今の年齢で代表社員としてやられている上で、今後代表社員を目指したい、経営層を目指したいという方に向けて、処世術やコツのようなものがあれば教えていただけますか。
小野瀬:私は地元に戻り、最初から代表社員として法人に入ったわけです。父親の鶴の一声ではあるのですが、企業でも親族だと大体は面倒くさい方が入ってきたりするので、息子が入ってくるって普通は嫌なものじゃないですか(笑)。自分も何かしら嫌がられるのではと思ってはいたので、最初のうちはまず職員さん達の話に耳を傾けて理解し、要望や不満もきちんと聞いて、それに反しない方向に進んでいくようにしました。その点はすごく気をつけましたね。
例えば事務所で一番年上の監査担当者が70歳近い方で、完全に父親世代なんですね。社歴も長くてしっかりとした意見もあるので、目上の先輩に対して履き違えないようにしながら自分の意見とすり合わせるわけですが、今ではこちらを尊重していただけるところまでいけていると思っています。
■では最後に、これから医療・介護・福祉の税務会計を手がけてみたいという方に一言いただけますでしょうか。
小野瀬:ただでさえ税法を勉強しないといけないのに、医療分野に携わるとなると、診療報酬改定など勉強をすることがさらに増えます。それをずっと続けないといけないとなると、これはけっこう大変だと思うかもしれません。でも自分は、社会的に必要とされている業種のお手伝いをできることに、楽しさや意義を見出しています。同じくそう思える方はこの分野に向いていると思いますし、実際うちの若手も、医療や福祉に興味があって採用面接に来たスタッフが多いです。そういう方は、もちろんお金も大事ですが、世のため人のためになる仕事をしているという充足感を感じながら働いてくれています。そうしたやりがいを持てるのが、医療・介護・福祉の分野に携わる良い点ではないでしょうか。そうした方がどんどん入ってきてくれると、業界ももっと盛り上がると思いますので。
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小野瀬・木下税理士法人、小野瀬公認会計士事務所
●設立
1985年
●所在地
・水戸オフィス
〒310-0911
水戸市見和1-299-1
・ひたちなかオフィス
〒312-0018
ひたちなか市笹野町1-3-20
●会社HP
https://onosecpa.jp/
MMPG(メディカル・マネジメント・プランニング・グループ)
●設立
1985年4月
●所在地
〒140-0001
東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー4階
●会社HP
https://www.mmpg.gr.jp/