BIG4は「とにかく忙しい!」。そんなイメージを持つ人も多いのではないでしょうか?
しかし、実際はどうなのか。
KPMG税理士法人TAG部門で働く池松さんは、税理士資格の取得と育児、そして専門性の高い業務を同時に進めてきました。
実際の働き方や、資格・家庭との両立はどう実現されているのか。率直にお話を伺いました。

この記事の目次

池松雅範氏の画像
池松雅範氏

税理士
KPMG税理士法人TAG部門(Transaction Advisory Group) マネージャー

2023年中途入社。2026年税理士登録。

専門性を求めて事業会社からTAGへ

■まず、池松さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

池松:私のキャリアの最初は、一般事業会社の経理財務でした。数年ほど会計記帳や出納業務、決算対応、税理士対応、銀行対応など、いわゆる経理の一連の業務を経験しました。事業会社で決算を何回か繰り返すと、どうしても同じ業務の繰り返しになってしまう面がありまして。
もちろん精度は上がるのですが、「もっと幅広い知見を身につけたい」という気持ちが強くなっていきました。

そんなときに顧問税理士の先生と話をしていると、やはり幅広い知識を持っていらっしゃって、会社の外からアドバイスできる立場に魅力を感じました。
「自分もこういう存在になりたい」と思ったのが、会計事務所への転職を考えたきっかけでした。専門性を身につけたいという思いは、当時かなり強かったですね。

■そこからSPC(Special Purpose Company:特別目的会社)・証券化の事務所に入られたんですね。

池松:はい。正直、当時は職務内容を深く理解していたわけではなかったのですが(笑)、専門性を持った職業会計人になりたいという思いが強くて。結果的にSPCや証券化、不動産の領域がとても自分に合っていて、7年弱ほど働きました。
ただ、アドバイザリーの領域に踏み込むと、どうしても海外ネットワークの不足がネックになってしまって。インバウンドの不動産投資などでは、ストラクチャリングで海外との連携が必要になる場面が多いのですが、前職ではそこができませんでした。営業に行っても案件が取れないことや、ストラクチャリングで海外部分の対応ができず、国内案件しか対応できないなど……もどかしさがありました。
「もっと広いフィールドで仕事がしたい」という気持ちは、年々強くなっていました。

そんなときに、エージェントさん経由でKPMGのTAG部門の求人をいただき、カジュアル面談で話を聞いたら、まさに自分がやりたかった領域でした。
海外ネットワークも強い。自分の専門性をさらに伸ばせる環境だと感じて、転職を決めました。

■TAG部門の業務内容についても教えてください。

池松:TAGは「トランザクション アドバイザリー グループ」の略で、名前のとおり取引に関するアドバイザリーを行う部門です。インバウンド・アウトバウンドの投資、国内の大型M&A、不動産、再生エネルギー、リースなど、扱う領域はかなり幅広いですね。
デューデリジェンス、ストラクチャリングの相談、税務アドバイスなどの取引の入口から、SPCを使った投資の場合は期中の会計・税務申告まで、ワンストップで関わります。事業会社であるクライアントの申告業務を担当することもあります。

■アドバイザリーから申告までワンストップで対応されているのは特徴的ですね。

池松:そうですね。アドバイザリーで描いたストラクチャーが、期中で違う運用をされてしまうと出口で問題が出ることもあります。だからこそ、入口から出口まで見られるのは大きな強みだと思います。
若手の方はまず記帳や申告から入り、スタッフ2、3年目くらいになると徐々にアドバイザリーにアサインされるようになります。マネージャーになると専門性が色濃くなってきて、得意領域が分かれていく傾向があります。
私は不動産証券化が好きなので、その領域が多いです。幅広い業務に触れられるので、キャリアの選択肢が本当に多い部門だと思います。

■かなり幅広い業務を担当されている印象です。

池松:私の場合は期中の申告業務やSPCの管理が多めですが、アドバイザリーも途切れることなく常に何件か動いています。だいたい2〜5件くらいを並行して持っているイメージですね。
もちろん人によって比重は違いますが、幅広い業務に触れられるのがTAGの魅力だと思います。

勉強と仕事、そして家庭──自分のペースで進める税理士試験との向き合い方

■池松さんは前職から税理士試験に取り組まれていたとのことですが、KPMGに入社された段階では何科目お持ちでしたか?

池松:4科目です。ですので、KPMGでは最後の1科目を残しての入社でした。
私はおそらく5科目まで時間はかかったほうかもしれません。一般的には普通くらいですが、KPMGの新卒の方に比べると長いと思います。
独身のときに始めて、今は子どもが2人いるので……ライフイベントが重なると、試験勉強との両立がなかなか難しい年もありました。

■試験とライフイベントのタイミング、なぜか重なるのは「あるある」ですね。KPMGでは、勉強時間の確保や仕事との両立はどのようにされていましたか?

池松:私のやり方が参考になるかどうかは微妙かもしれません。
KPMGには試験休暇の制度があって、1ヵ月間しっかり勉強に集中できるのですが、私はそれを使わなかったんですよ。長く休むよりも1日の間で時間制限があるなかでの勉強の方が集中できるタイプなので。
それに、受験していることを周りにあまり話していなかったので、サポートを自ら求めるというよりは、試験前後はアサインを受けすぎないように自分で調整しながら、隙間時間を使って勉強していました。

■隙間時間、ありましたか?

池松:電車の移動時間、在宅勤務の日は出勤前の1時間、それから昼休みとか……細切れで勉強するほうが集中力が続くんです。これは前職のときからずっと同じやり方でしたね。

■なるほど。一方で、一般的なKPMGさんの若手の方は、試験休暇を活用されるケースが多いですか?

池松:はい。私がイレギュラーなだけで、ほとんどの方は試験休暇を取っています。事前に「試験休暇を使います」と言えば、アサインを調整して、受かっている方や受験しない方がフォローに入る体制が整っています。
フォローする側も、自分が受験していた時期があるので理解があります。だから「頼みにくい」という雰囲気はまったくないですよ。
ちょうど今は人が少なくなる時期ですね(インタビューは7月半ばに実施)。大変な面はありますが、休暇を取ることに後ろめたさを感じるような環境ではないと思います。

■新卒の方も受験しやすい環境ですか?

池松:TAGは4月入社と9月入社が多いのですが、9月入社の方は試験が終わってから入社します。4月入社の方は、最初はトレーニングと軽めのアサインが中心なので、空いた時間で勉強できます。
法人税法や消費税法など、業務に直結する科目を最初に受けるケースが多いですね。早い方だと2〜3年で官報合格することもあります。

■大学院に通いながら働く方もいらっしゃいますか?

池松:いますよ。特にシニア以下の方に多い印象ですが、マネージャーでも通うことのハードルは特に高くないです。夜間の大学院に通うので、残業を抑制して「業務は18時まで」と上長に伝えて、アサインを調整してもらう。もし緊急の対応があれば、学校が終わったあとに30分だけ対応するなど、柔軟にやっています。
まずは税理士試験に受かって、その後は英語や関連法規、不動産、M&Aの商慣習など、実務で必要な知識をどんどん積んでいく。
試験は基礎知識なので、実例を見ながら経験を積むことが大事ですね。

■試験の重要性を感じます。池松さんが合格されたときは、どんなお気持ちでしたか?

池松:いやもう……「やっと終わった」という感じでした(笑)。長かったので。子どもが生まれたり、家庭のことがあったり、仕事もあったりで、なかなか思うように進まない時期もありました。周りの理解があったので続けられたと思います。