前回は、会計人が「過去の整理役」から「未来の伴走者」へと役割を変える重要性についてお伝えしました。しかし、いきなり顧問先に「未来の財務戦略を立てましょう」と提案しても、すんなりと受け入れてもらうのは難しいでしょう。経営者への支援は、相手の「本当の目的」を引き出す対話から始まります。第2回は、社長の心を開き、深い信頼関係を築くための具体的なヒアリング術と質問のテクニックをご紹介します。
※長友 大典(著)『社外CFOになって、たちまち年収1200万円を稼ぐ方法』(すばる舎)より一部抜粋・編集
長友大典
「中小専属CFO養成アカデミー」主宰。社外CFO・財務コンサルタント、実業家(アミューズメント施設運営)、有限会社トークファイブ代表取締役。
大手電器メーカーでのトップ営業を経て、父と共にアミューズメント会社を設立。自社経営での資金繰り難を乗り越え、銀行戦略と投資判断の枠組みを確立した後、これらの経験と知識を活かし、社外CFOとして活動を開始する。累計60億円超の資金調達、年商2000万から11億超への成長支援など、会社の収益を10倍以上にする実績が多数。現在は、税理士や公認会計士、企業経理、財務コンサルタント向けに高単価・高付加価値をつけるメソッドを指導し、月額50万円の案件受注や年商1億円超えの卒業生を輩出している。2025年11月27日にすばる舎より発売された著書、『社外CFOになって、たちまち年収1200万円を稼ぐ方法』が話題に。
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雑談から自然に「仕事の話題」へ切り替える2つの質問
顧問先との面談や見込み客との打ち合わせにおいて、最初の「アイスブレイク(雑談)」でラポール(信頼関係)を築くことは必須です。しかし、趣味や家族の話で盛り上がった後、急に「ところで御社の財務課題は?」と切り出してしまうと、せっかく温まった空気が冷め、相手は「結局は営業か」と身構えてしまいます。
自然にビジネスの話題へ移行するためには、相手が“会話を急に切られた”と感じない「橋渡しの質問」が必要です。有効なのは以下の2つです。
- 「仕事の時間、取れていますか?」 社長が趣味(ゴルフや旅行など)の話を熱心にしている時に使います。「それだけ趣味に時間を使っていたら、お仕事をする時間もなくなるんじゃないですか?」と尋ねると、社長は「いやいや、優秀なスタッフに任せているから」などと返してくれます。そこから「へえ!何名くらいのスタッフさんがいらっしゃるんですか?」「どんな体制で回されているんですか?」と、組織や経営の話にスムーズに入れます。
- 「どうして、今の仕事に?」 社長の経歴と現在のビジネスにギャップがある時などに有効です。「なぜ今のビジネスを始めたのか」という創業の動機や情熱の源泉を聞くことで、自然に深いビジネスの話へと繋がっていきます。
ブレない経営を作る「3階層のゴール」の確認
仕事の話題に入ったら、次に行うのは「社長のゴール」の確認です。これを把握せずに投資判断や経営改善を進めると、社長が本当に望んでいた方向からズレてしまいます。ゴールは以下の3つの階層で確認します。
- EXIT戦略(退き方): 将来、会社をどうしたいのか。親族に承継するのか、社員に譲るのか、M&Aで売却するのか、IPOを目指すのか、あるいは自分の代で廃業するのか。これにより、長期的な財務の組み方(自社株の評価対策や内部留保の考え方など)が根本から変わります。
- 3年後のゴール: 変化の激しい現代(VUCAの時代)において、現実的にイメージできる最長の期間が3年です。「売上〇億円」といった定量的な目標だけでなく、「社員が誇りを持てる社風にしたい」といった定性的な目標の両方を聞き出します。
- 創業時の想い: なぜこの会社を立ち上げたのか。現在の目標が創業時の想いとズレていないかを確認し、経営の軸を定めます。社長自身が忘れていた原点を引き出すことで、意思決定のブレを防ぎます。
表の目標から「裏のゴール」を引き出す
社長が「とりあえず3年後に売上10億円を目指したい」と語ったとします。ここで「なるほど、10億ですね。ではそのための財務戦略を…」と進めてはいけません。重要なのは、その「理由(裏のゴール)」を掘り下げることです。
ある人が「10kg痩せたい」と言ったとします。理由を聞くと「若い頃のオーダースーツを着たいから」と返ってきました。ここが表の目標と理由です。しかし、さらに深掘りします。
「なぜ、そのスーツを着たいのですか?」
「実は来月、高校の同窓会があって、初恋の人に会うかもしれないから、カッコいいところを見せたいんだよ」
ここまで引き出せて初めて、相手の「本当のモチベーション」に触れることができます。
経営も同じです。「なぜ10億なのでしょうか? 20億じゃなくて?」と問いかけます。
「人が雇えて、次のビジネスにチャレンジしたいから」と返ってきたら、さらに踏み込みます。
「それが達成できた時、社長ご自身はどんな働き方をしていたいですか? どう変わりますか?」
すると、「現場にはもう出ていないだろうね。週に3日は休んで、ずっとやりたかった事業を趣味感覚でやれると思う」といった、社長の感情が乗った「本当の願望」が出てきます。
「従業員をあと5名増やしたい」という目標に対して、「なぜですか?」と深掘りしたところ、「今のままでは自分が現場に入りっぱなしで、家族との時間が全く取れない。本当は休日に子どもとゆっくりキャンプに行きたいんだ」という本音がこぼれました。これも社長を突き動かす強力な「裏のゴール」です。
「本当の願望」を共有した瞬間、あなたはパートナーになる
社外CFOの役割は、社長たちの“言葉になっていない願望”を可視化することです。「それが達成できたら、社長自身はどう変わりますか?」という質問が、あなたの信頼を決定的に引き上げます。
社長自身が自分の未来を頭で“理解する”のではなく、心で“感じ始めている”状態を作ること。この「裏のゴール」を共有できた瞬間、あなたは単なる専門家や外部の人間ではなく、「一緒にその未来を実現するパートナー」として強烈に認識されるのです。
次回は、この深い信頼関係をベースに、会社の現状を社長と同じ視点で把握するための「関係図」の作り方を解説します。
連載第1回:「過去の整理」から脱却し、社長の「未来」に伴走するCFOとは
話題の『社外CFOになって、たちまち年収1200万円を稼ぐ方法』の著者に聞く 中小企業の成長を加速させる「社外CFO」の力 ── 税理士・会計士が描く、新たなキャリア




