AIやクラウド会計の普及、さらにはインボイス制度などの法改正により、会計事務所の現場は負担が増す一方で、顧問料は据え置き、あるいは値下げ圧力にさらされています。「記帳代行」や「税務申告」といった作業だけでは単価維持が難しい時代。会計人が生き残り、さらなる高単価を獲得するためには何が必要なのでしょうか。本連載では、『社外CFOになって、たちまち年収1200万円を稼ぐ方法』の著者であり、現役の社外CFOとして活躍する長友大典氏のノウハウから、会計人が「意思決定パートナー」へと役割をシフトし、顧問先の成長を支援する実践的なフレームワークを全6回でお届けします。
※長友 大典(著)『社外CFOになって、たちまち年収1200万円を稼ぐ方法』(すばる舎)より一部抜粋・編集
この記事の目次
長友大典
「中小専属CFO養成アカデミー」主宰。社外CFO・財務コンサルタント、実業家(アミューズメント施設運営)、有限会社トークファイブ代表取締役。
大手電器メーカーでのトップ営業を経て、父と共にアミューズメント会社を設立。自社経営での資金繰り難を乗り越え、銀行戦略と投資判断の枠組みを確立した後、これらの経験と知識を活かし、社外CFOとして活動を開始する。累計60億円超の資金調達、年商2000万から11億超への成長支援など、会社の収益を10倍以上にする実績が多数。現在は、税理士や公認会計士、企業経理、財務コンサルタント向けに高単価・高付加価値をつけるメソッドを指導し、月額50万円の案件受注や年商1億円超えの卒業生を輩出している。2025年11月27日にすばる舎より発売された著書、『社外CFOになって、たちまち年収1200万円を稼ぐ方法』が話題に。
中小専属CFO養成アカデミー 11期生募集中
プレセミナー&説明会の申し込みはこちら
https://talk-five.com/lp/kaikeizine/index.html
はじめに:AI時代のいま、会計人に求められる「役割のシフト」
AIやクラウド会計ソフトの普及によって、かつて会計事務所の収益基盤であった記帳代行などの「作業系の業務」は急速に自動化・低単価化が進んでいます。さらに法改正によりチェック作業や現場の負担は増える一方、「顧問料は据え置き、あるいは値下げ圧力にさらされている」と感じている士業・会計関係者の方も多いのではないでしょうか。
なぜ、専門知識を駆使して複雑な処理をこなしているにもかかわらず、税務顧問や経理代行の報酬は月額数万円程度にとどまってしまうのでしょうか。理由は極めてシンプルです。多くの経営者にとって、税務や記帳代行は「すでに起きた過去の出来事を整理してくれる仕事」と映っているからです。過去は変えられないため、他者との差別化が難しく、どうしても価格競争に巻き込まれやすくなります。
しかし、中小企業の現場に目を向けると、社長が本当に切望しているのは「過去の数字の整理」ではありません。「これからのお金はどうなるのか?」「この投資をして大丈夫か?」という“未来の意思決定”を一緒に考えてくれる相談相手なのです。
「会計・税務」と「財務」の決定的な違い
そもそも、「会計」「税務」「財務」は何が違うのでしょうか? 多くの経営者はこれらを「お金のこと」としてひと括りに捉えていますが、その役割と時間軸は明確に異なります。
- 会計(現在〜過去): 顧客との会食の領収書を「交際費」と仕訳するなど、起きた経済活動をルールに沿って記録・可視化する仕事。
- 税務(過去): 会計データをもとに税金を計算し、正しく申告する仕事。
- 財務(未来): 過去のデータをベースにしながら、「いくら使えるのか?」「いくら足りなくなるのか?」「資金調達が必要か?」といった、これからの事業戦略やキャッシュの動きを設計する仕事。
税理士試験の科目や一般的な士業の実務は「会計」と「税務」が中心であり、「財務」を専門的に提供しているプレイヤーは決して多くありません。しかし、経営者が日々の孤独の中で最も頭を抱えているのは、過去の決算書ではなく、「新規事業や設備投資に打って出るべきか?」「人を採用したら固定費に耐えられるか?」という「未来のお金戦略」です。ここに関与できるのが、まさに社外CFOというポジションなのです。
なぜ社外CFOは「月額50万円」の価値が認められるのか?
「社外CFOとして月額50万円以上の報酬をいただく」と聞くと、「そんな高額、中小企業が払ってくれるのか?」と疑問に思うかもしれません。しかし、視点を「作業の代行」から「役員クラスの意思決定パートナー」へ切り替えてみてください。
もし中小企業が常駐の役員クラスCFOを中途採用しようとすれば、年収1,000万〜1,500万円以上かかり、採用コストも莫大です。社内で一からCFOを育成する余裕もない企業が大半です。一方で、社外CFOとして週1回程度の関与であっても、経営課題の整理、投資判断のサポート、金融機関との関係構築を担ってくれる存在がいれば、経営者にとっては「常駐CFOを雇うよりも圧倒的にコストパフォーマンスが高い投資」になります。
ここで、会計人としての「働き方」の視点からも考えてみましょう。例えば、月額3万円の顧問料で月100万円を稼ごうとすれば、33社もの顧客を抱える必要があります。一人で33社の処理に追われれば、休みもなく疲弊し、質の高いサポートなど到底不可能です。一方で、社外CFOとして月額50万円の契約であれば、たった2社で月100万円に到達します。稼働時間も週1日〜2日程度で済むため、精神的・時間的な余裕が生まれ、結果としてその2社に対して圧倒的に深く、質の高い伴走ができるのです。
作業時間(労働の切り売り)に対して対価をもらうのではなく、「経営判断の迷いを解消し、ビジョン達成を加速させる」という結果・変化に対して対価が支払われるからこそ、月額50万円という報酬が自然に成立するのです。
社長が求める2大テーマは「投資判断」と「銀行関係」
社外CFOが提供すべき価値は多岐にわたるように思えますが、突き詰めると社長が最初に求めてくる相談は「投資の判断サポート」と「資金調達の支援・銀行との関係構築」の2点に集約されます。
会計人はつい「節税」や「コスト削減」を提案しがちです。もちろん実務として大切ですが、節税に過度にとらわれすぎると現金を失い、純資産が減り、結果として銀行からの評価を落としてしまいます。成長のための「投資の原資」を失う“もったいない節税”に陥っている中小企業は少なくありません。
問題を指摘して終わるのではなく、「社長の描く未来に向かって、どのようにお金を残し、どう調達して投資していくか」という解決の設計図を一緒に描くこと。これこそが、これからの会計人に求められる最大の付加価値です。
「先生」と呼ばれるのをやめ、「パートナー」になる第一歩
もしあなたが顧問先との関係性を変え、社外CFOとしての活動を始めたいなら、まず実践していただきたい姿勢があります。それは、「先生」と呼ばれる立ち位置から降りて、社長の「よき相談パートナー(聞き手)」に回ることです。
ある税理士の受講生は、顧問先に足を運び、こう伝えました。「社長、今日からは私のことを『先生』と呼ばないでください。これからは社長の未来のビジョンに伴走する“パートナー”を目指していきます」すると社長は「まさに、そういう人をずっと求めていたんだ」と顔をほころばせ、税務顧問にとどまらず、社外CFOとしての契約へと発展したそうです。
中小企業の経営者は、自社のビジネスモデルやお金の悩みを本音で打ち明けられる相手がいなくて孤独を感じています。専門知識を上から教えるのではなく、まずは経営者の隣に立ち、本音を丁寧に引き出すことからすべてが始まります。次回は、社長の頭の中にある曖昧なビジョンを具体化し、信頼関係を一気に深める「魔法の質問術」について詳しくお届けします。
「AI時代に“選ばれる会計人”①」--「AIで仕事がなくなる」と不安な人へ
「AI時代に“選ばれる会計人”②」--AIに“使われる人”と“武器にできる人”の決定的な違い
話題の『社外CFOになって、たちまち年収1200万円を稼ぐ方法』の著者に聞く 中小企業の成長を加速させる「社外CFO」の力 ── 税理士・会計士が描く、新たなキャリア




