自分の仕事に当てはめる3つの問い

この分け方は、監査以外でも使えます。たとえば記帳代行も、資料を集める、内容を読み取る、帳簿へ入力する、入力結果を確かめるという作業に分かれます。「記帳を任せるか」だけでは決められなくても、ひとつずつなら考えられます。

私なら、それぞれの作業について、次の3つを確かめます。

1つ目。答えはひとつに決まるか。 利息の再計算のように、条件と計算方法が決まれば答えが決まる作業は、任せる候補になります。判断が必要な仕事でも、資料の比較や下書きの作成だけを切り出せないか。その仕事のどこに判断が入るのかを見ていきます。

2つ目。間違えたとき、どこで気づくか。 読み取った金額を元の資料と比べる、計算を別の方法で確かめる。何と照らし合わせれば誤りを見つけられるのかを、先に考えておきます。答えがひとつに決まる計算でも、元の数字を読み違えることはあります。

3つ目。その出力を、誰が最終的に確認して確定するか。 意見書や申告書も、下書きなら任せられます。ただ、文章が出来上がることと、正式な内容として確定することは別です。誰が内容を確認し、最後の判断をするのかまで決めておきます。

作業を選ぶところから、誤りを見つけ、結果を確定するところまで。この3つの問いを使って、任せた後のことも一緒に考えておきます。

挿絵_自分の業務に当てる3つの問い

図2 自分の業務に当てる3つの問い。答えがひとつに決まるか、誤りにどこで気づくか、誰が最終的に確認して確定するかを考える。

まず、ひとつの作業を書いてみる

直近にした仕事をひとつ思い出して、使った資料と、行った作業を書き出してみてください。時間の記録があれば、どこに手間がかかっていたかも分かります。 たとえば記帳なら、「請求書から日付と金額を読み取って、入力用の一覧を作ってもらう」と書いてみる。その横に、「一覧を元の請求書と見比べる」「取引の内容を確かめ、帳簿にどう記録するかを決める」と、自分がすることも書く。これなら、任せたい作業と、その結果を使うまでに必要な確認が具体的になります。

挿絵_割ると渡せる

図3 業務を工程に分け、機械に渡せる作業と人が持つ判断を整理する。

ツールを選ぶときも、「会計業務を効率化できますか」と聞くより、「この資料から一覧を作れますか。読み取った金額は、元の資料と見比べられますか」と聞けます。任せたい作業がはっきりすると、製品の説明を自分の仕事に照らして判断しやすくなります。

もうひとつ、任せる前に確かめたいことがあります。資料をAIに渡したとき、その情報はどこで処理されるのか。事務所の外に送信されるのか。このデータの扱いを次回取り上げます。自分で仕組みを作るか、既存のツールを買うかについても、後の回で考えていきます。

筆者が開発する監査人向けAI監査支援ツール「右筆(Yuhitsu)」は、監査データを端末の外に出さず、AIに結論を出させない設計を採っています。
https://invaders.co.jp/yuhitsu/

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