受験や公認会計士試験での「正解のある問い」には強かったのに、仕事やキャリアとなると途端に思考が止まってしまう ── 自分の頭で考え、納得した選択ができるようになるためには何が必要なのか?書籍『考え方には型がある 「答えのない問い」に答えを出す思考法』を上梓した三浦真氏に、自ら切り開いた公認会計士としてのキャリア、そこで得た「考え方の型」などについて語っていただきました。

この記事の目次

三浦真会計士の書影画像

考え方には型がある 「答えのない問い」に答えを出す思考法
三浦真 著
総合法令出版
発売日:2025/12/11
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会計士が「考え方」をテーマに本を書いた ──。
そんな少し意外な一冊『考え方には型がある 「答えのない問い」に答えを出す思考法』を、昨年上梓したのが公認会計士の三浦真氏です。

本記事では、この書籍に込めた思いを起点に、三浦氏のキャリアや思考の源泉をひも解いていきます。
キャリアや仕事に迷うすべての会計士の方にとって、「考えること」の意味を改めて問い直すインタビューです。

「正解のある世界」から「正解のない世界」へ ── 三浦真氏が直面した転換点

三浦真会計士の人物画像①

三浦真公認会計士事務所代表・三浦真氏

■『考え方には型がある 「答えのない問い」に答えを出す思考法』の出版、おめでとうございます。「考え方」というのは、とても大きなテーマですよね。書くのが難しそうだなとも感じたのですが、なぜこのテーマを選ばれたのでしょうか。

三浦:ありがとうございます。
この本は、構想から含めると1年くらいかけて書いたのですが、出版企画書を考える段階では、実はほかにもいろいろテーマの候補はありました。そのなかで最終的に「考え方」を選んだのは、学生時代や社会人の早い段階でこんな本に出会えていたら、もっとよかったんじゃないかと、自分のこれまでを振り返ったことがきっかけです。

■「出会いたかった本」という視点、印象的です。

三浦:私自身、大学受験や公認会計士試験を経験してきましたが、どちらも基本的には「答えのある問い」ですよね。東大受験のために塾に通い、会計士試験では専門学校で学ぶ。そこでは、正解の導き方を徹底的に教わりました。

けれど社会人になってみて気づいたのは、本当に重要な問いには、そもそも答えが用意されていない、ということでした。

■社会に出てから、問いの性質が変わる感覚ですね。

三浦:まさにそうです。監査法人に入って現場で求められるのは、正解を当てることよりも、
自分で答えをつくることでした。例えば、どう進めるのがベストか、どこまで踏み込むべきか。誰かが事前に用意してくれた答えはありません。自分なりに考え、判断し、説明しなければならない。

そのときに必要なのが、答えのない問いにどう向き合うかという力で、一言でいえば、それが考え方だと思ったんです。

■思い返すと、考え方そのものを体系的に学ぶ機会というのはほとんどないですよね。

三浦:「考えなさい」とはよく言われるけれど、どう考えるかは意外と教えてもらえない。だからこそ、仕事や人生で迷ったときに立ち返ることのできる「型」のようなものがあればいい。そう思って、このテーマを選びました。

会計士としての専門分野である会計についての本はたくさんあります。けれど独立した会計士として、今の自分だからこそ書けるのは、考え方についてでしたね。

現場で磨かれた“考え方の型” ── 経営の意思決定に必要な思考法

■書籍で紹介されている「考え方の型」について、詳しく伺います。世の中にはさまざまな思考法がありますが、三浦先生の考え方の特徴はどこにあるのでしょうか。

三浦:一言でいうと、かなり実務寄りだと思います。きれいに整理された理論というよりも、経営の現場で「どう考えれば答えを出せるか」を突き詰めた結果、形になったものですね。

私はトーマツ(当時の監査法人トーマツ、現・有限責任監査法人トーマツ)を退職したあと、法律事務所に机を置いて独立しました。企業のなかに入り込んで経営顧問をしたり、監査役として取締役会に出席して、意思決定に関わったりする仕事が中心になりました。そうした現場に深く関わるほど痛感するのが、経営は「答えのない問い」の連続だということです。

■例えばどのような問いでしょうか。

三浦:
誰を採用するのか。
どこに投資するのか。
いま価格を上げるべきかどうか。

正解が最初から決まっている問いは、ほとんどありません。しかし経営者は答えを出さないと前に進めない。そこで必要になるのが、原理原則に立ち返って考えることです。

■その原理原則が、書籍で紹介されているフレームワークにつながっていくのですね。

三浦:主に「戦略をつくる」という部分をベースにした考え方を紹介しています。
流れとしては、

・まず ミッション・ビジョン・バリュー(目的・将来像・価値観)を明確にする
・次に 強み・弱み・機会・脅威(SWOT) を整理する
・それらを掛け合わせて、進む方向性を考える

という、シンプルな構造です。経営学や管理会計、マーケティングなど、さまざまな分野の知見を学ぶなかで、結局、答えを出すときの骨格はここに集約されるなと感じるようになりました。

■この考え方は、経営判断以外にも使えるのでしょうか。

三浦:もちろんです。むしろ、人生の意思決定にこそ使えると思っています。

例えば、転職するか、このまま働き続けるかという問いも、典型的な答えのない問いですよね。感情だけで決めてもいいですし、直感を信じるのも一つですが、迷ったときに立ち返ることのできる「型」があると、判断の納得感がまったく違います。

■確かに、ミッションや価値観まで立ち返って考えることは、普段あまりしない気がします。

三浦:強みや弱みは考えても、機会や脅威まで整理する人は少ないのではないでしょうか。けれど外部環境を含めて考えないと、方向性は見えてきません。

ポイントは、整理した要素をクロスさせて考えることです。かけ算なので、選択肢が一気に増えます。そのなかから、自分のミッションや価値観に最も合うものを選ぶ。これが、「答えを見つける」のではなく、「自分で答えをつくる」という感覚です。

■フレームワークというと少し堅く感じますが、分解していただくと、とてもスムーズに考えることができそうです。

三浦:それはよかった。途中で投げ出さずに最後まで考えきるためには、ある程度の型があったほうがいい。これでいいのかなと迷いながらも、ちゃんと自分に向き合って考えたという実感があれば、選んだ答えに責任も持てますからね。

迷った先に見えた、自分のミッション・ビジョン・バリュー

■ここからは三浦先生ご自身のキャリアについてもうかがいます。まずは監査法人を出るという選択について、改めて教えていただけますか。

三浦:トーマツに在籍していましたが、キャリアとしては順調なほうだったと自分自身では評価していました。香港での勤務も経験しましたし、帰国後はマネージャーとして金融系クライアントに携わっていました。そのままシニアマネージャー、パートナーをめざす道も、現実的な選択肢としてありました。

けれどある時期から、「このまま進むことが、自分のやりたいことなのか」という問いが、頭から離れなくなったんです。

■まさに答えのない問いですね。

三浦:どちらが正解、という話ではない。だからこそ、感情や勢いだけで判断するのではなく、しっかりと考えたいと思いました。

そのときに出会ったのがレックスアドバイザーズさんなんですよね(KaikeiZineを運営する会計人材特特化の転職エージェント)。転職という前提ではなく、キャリアについて一緒に考えてくれるコンサルタントに相談したのが大きかった。

■具体的には、どのようなやりとりをされたのでしょうか。

三浦:求人をただ紹介されるということはなかったですね。

どんな仕事をしたいのか。
何を大事にして生きていきたいのか。

といったところから、かなり丁寧に話をしました。レックスアドバイザーズさんのコンサルタントも、よく向き合ってくれました。そのなかで、自然とミッション・ビジョン・バリューを言語化するというプロセスを踏んでいた気がします。

■書籍で紹介されている思考法が使われていたんですね。

三浦:振り返ってみると、まさにそうですね。自分の強みや弱み、当時の市場環境やチャンスも含めて整理しました。

この経験が活かせる場所はどこか。
今の自分に追い風は何か。
逆に、どんな制約やリスクがあるか。

整理した回答を一つずつ並べていった先に、法律事務所で仕事をするという選択肢が出てきました。

■会計士が法律事務所で働く、というのは珍しいキャリアですよね。

三浦:多くはないと思います。当時、法律事務所の案件を聞いた瞬間に、これは半分独立に近い形だなと感じたことを覚えています。法律事務所のなかにデスクを置きつつ、自分の公認会計士事務所も構えられる。M&AやIPO支援など、幅広い案件に自由度高く関われる環境でした。

この提案は面白いと思いましたし、結果的にとても相性が良かったと思います。

■当時の選択は、良い答えだったと感じていますか。

三浦:はい。もちろん大変なこともありますが、自分で考え、納得して選んだ答えですから後悔はありません。大事なのは、どこを選んだかよりも、どう考えて、その答えにたどり着いたかだと思っています。キャリアは、一度選んだら終わりではありません。その都度、自分に問い直し、考え続けるものですから。

当時、とことん向き合ってくれたレックスさんのコンサルタントには感謝していますよ。

■三浦先生のキャリア選択にすこしでも貢献できているのであれば光栄です!