提供元の保存記録と、事務所の利用記録を分ける
AIサービスを使った後、顧問先から「うちの請求書を外部のAIに読み込ませましたか」と聞かれたら、何を見て答えるでしょうか。
提供元は、資料の受信や処理、利用者の操作などを記録している場合があります。こうした履歴が「ログ」です。利用者が閲覧できるログもありますが、提供元が保存する記録のすべてを閲覧できるとは限りません。提供元には、何が保存され、利用者はどこまで閲覧できるのかも尋ねてください。
提供元のログとは別に、事務所でも、誰が、いつ、どのAIサービスを使い、どの資料を読み込ませたかを記録しておくべきです。サービス名と利用プラン、資料名や保存先が分かれば、後からその利用について調べられます。設定によって資料の扱いが変わるなら、利用時の設定も記録に含めるべきです。
架空の例で書くと、「10月1日、担当A、サービスBの法人プランで『9月請求書.pdf』を読み取り。学習に利用する設定は無効」といった記録です。資料を取り違えないよう、記録には所属先で管理する保存先も添えてください。
記帳業務なら、請求書の入力に使っている作業記録に欄を足す形でもかまいません。監査業務でAIを使う場合は、実施した手続と判断の根拠を残す「監査調書」が記録先の候補になります。資料名や保存先は、所属先の資料の取扱規程に従って記載してください。
学習への利用を無効にする設定などを変えた場合は、変更日、変更した人、変更前後の設定を記録に加えてください。利用記録の日付と照らし合わせれば、その請求書を読み取らせたときの設定を調べられます。
記録を作業者が書くのか、確認者がまとめるのかも、事務所内で決めておくべきです。提供元に資料の扱いを質問したときは、回答と確認日も利用記録と一緒に保管してください。
図2 提供元には資料の処理・保存・学習利用・閲覧の条件を確かめる。事務所では利用者、利用日、サービス名、読み込ませた資料、設定を記録する。
プランや機能を変えたら、利用条件を確かめ直す
同じサービスでも、契約プランや使う機能が変われば、資料の扱いが変わる可能性があります。プランの変更、新機能や他サービスとの連携の追加、利用規約の改定があったときは、以前の条件から何が変わったか、提供元への再確認が必要です。
事務所で担当者が交代するときは、確認した条件と実際の設定も引き継いでください。規約改定などの通知を誰が読むかまで決めておくと、以前の確認結果をそのまま使い続けるのを防ぎやすくなります。
使う予定のAIについて、確認した答えを残す
まず、請求書の読み取りなど、AIに任せたい作業を一つ選んでみてください。その作業に使うサービス名、利用プラン、有効にする機能を書き、調べた利用条件も一緒に残しておくと、未確認の点が分かりやすくなります。
説明資料を読んでも分からない点があれば、提供元に質問してください。「このツールは安全ですか」と聞くより、「請求書の画像はどの会社のサーバーで処理しますか」「画像や読み取った内容は何日間保存されますか」と聞くほうが、確認したい点を伝えられます。
回答が得られた項目と、未確認の項目は、分けて残しておくとよいでしょう。利用してよいかは所属先の規程や顧問先との契約に照らし、担当者だけで判断できない場合は事務所の責任者に確認してください。利用する、または見送ると決めた理由も残しておけば、後任者が判断の経緯をたどれます。
次回は、AIが作った一覧や文章を監査調書に記載する際に、元の資料、AIが行った作業、人が確認した内容を、どう残すかを考えます。




