サラリーマンや事業が上手くいっている個人事業主に、節税を行いながら可処分所得を増やす手段として注目されている「不動産投資」。不動産投資はその収支に対して株式などの金融商品とは違った税制が適用されることから、節税できるのだ。そこで今回は、不動産投資の節税効果について検証したい。
■不動産の節税効果とは?
家賃収入などの不動産収入から必要経費を控除した不動産所得は、給与収入から生じる給与所得、そして個人事業から生じる事業所得と合算したうえで税金が計算される。これを損益通算と言う。つまり、不動産所得で「経費>収入」という状況を作り損益通算することで、給与所得や事業所得で計算した課税所得を引き下げることが可能なのだ。
たとえば給与収入が800万円(課税所得586万円、税率20%)の場合。仮に不動産所得によるマイナスが50万円発生すると、課税所得が50万円マイナスになり、50万円×20%=10万円が確定申告によって還付される。さらに住民税の税率は10%であるため住民税5万円が節税できる。
しかしながら、「節税になるからとはいえ、そもそも不動産所得が赤字となるのであれば意味がないのでは?」という疑問の声もあるだろう。しかし、赤字になったからといって悪い投資とはいえないのである。
■赤字でも悪い投資とは言えない理由 1.経費の範囲が広い
理由のひとつは、収入からマイナスできる経費の範囲が広いこと。マイホームとは異なり、投資目的の不動産は、その家賃収入を得るまでに必要となった下記のような経費すべてを計上することができる。
1.毎年の固定資産税、不動産購入後に課される不動産所得税
2.印紙代などの各種税金や購入時の登記費用・登録免許税
3.建物の維持管理費、マンションなどの修繕積立金
4.ローンで不動産を購入した場合の借入利息
5.火災保険料や地震保険料
6.物件情報や近隣の家賃相場を調べる為に要したパソコン代、交通費、交際費など
とくに購入初年度には多くの経費がかかるが、ほとんどの経費が、収入を得るための必要経費として計上することが可能である。
■赤字でも悪い投資とは言えない理由 2.減価償却費の計上
もうひとつの理由は、不動産所得においてのキーポイントともいえる、減価償却費を計上することができること。購入した建物や設備などは、時間の経過とともに劣化し価値が減少するが、この価値の減少も減価償却費として経費計上が可能である。
価値が減少したからといってキャッシュが出ていくわけではないが、税金の計算上はこれを経費として計上することができ、結果として税金が押さえられる仕組みだ。たとえば、黒字だった場合も、減価償却費を計上することで赤字の申告内容になる場合もある。そうすると、黒字の現金はそのまま残り、赤字分だけ節税することが可能。投資効果が出てくるというわけだ。
ただし、土地については減価償却費を計上することができないため、節税効果の視点から考えると、より土地部分の少ないマンションのほうが、計上できる減価償却費が大きいという利点もある。
■おわりに
今回は節税の視点で不動産投資について解説したため、赤字だった場合でもという極端な例を挙げている。もちろん、物件の将来性や収益性なども、きちんと考えたうえで投資を行う必要があるが、現時点での課税金額に困っている方は、利用しない手はない。