「節税方法」という言葉を聞くと、なにか特殊な知識や方法が必要と思われがちだが、やるべきことは単純である。税金は「所得金額×税率」で計算されるため、所得金額か税率のいずれかを下げることができれば、税金を押さえることができる。

本来経費にできるものを経費としていない、せっかく用意されている所得控除などの制度を利用していないなど、無駄な税金を支払うことのないよう、いま一度ご自身の申告内容を検証してほしい。

■経費を漏れなく集める

クリニックは、納品を遅らせることで、収入を翌年に繰り越すといったことが不可能な業種だ。よって経費を漏れなく集めることがポイントとなる。経費にできるかどうか、判断に迷うものもあろうが、たとえば以下のような支出をしっかり経費として計上しているか一度見直してほしい。

 

  1. 交際費関係

クリニックの場合、先輩後輩医師との交友費や、医師会などの行事に参加した場合に支出した金銭などは経費計上が可能である。付き合いをすることでクリニックの安定した経営が可能となるため、以下のような経費は漏らさず計上したい。

・医師仲間と情報交換を行うための飲食費、それにかかった交通費

・医師会など同業者団体の会費

・医師関係者への祝い金、香典その他冠婚葬祭にまつわる贈答品

・お中元やお歳暮費用(商品券渡した場合も含む)

・医師関係者との忘年会やゴルフコンペ費用

 

2.福利厚生費関係

従業員に気持ちよく仕事をしてもらううえで、以下のような支出をすることもあろう。従業員あってのクリニック経営であり、経費として計上が可能だ。

・従業員と定期的に開催される食事会や忘年会費用

・慰安旅行(従業員の半数以上の参加が必要)

・従業員への表彰金(源泉徴収は必要)、冠婚葬祭のための金銭支出

(慶弔見舞金規定や社内表彰規定などを作成し、一律的な運用をすることが望ましい)

・クリニック負担での従業員の健康診断費用

 

3.その他

・学会出席のための費用(交通費、宿泊費、食事代など。院長の奥様分までであれば、経費として計上可能。ただし子ども分は不可)

・開業医の場合など、自宅でも仕事をする場合、そのパソコン購入費や事務用品費など

■税率を下げる

所得に乗ずる税率を下げるには、所得からマイナスできる控除項目を増やすことが必要となる。以下の項目を検討し、将来の貯蓄という意味も含めて節税を図ってほしい。

・個人事業クリニックの場合、院長自身が小規模企業共済に加入。個人版401Kの加入も可能。これらは将来の退職金を積み立てるもので、年間の積立金相当額が所得から控除でき、節税効果が大きい。

・医療法人クリニックの場合、小規模共済への加入は不可能。ただし個人版401Kへの加入は可能である。また医療法人の場合、親族を役員にすることで役員報酬の支給が可能。103万円までなら親族本人の所得税もかからず、院長個人の税率を押さえつつ所得の分散が可能である。

・また医療法人であれば、法人から役員へ退職金を支給することが可能となる。その原資を作る意味と、医療法人の節税も兼ねて生命保険への加入も検討材料のひとつとなる。支払保険料のうち半分は法人経費に計上可能。

■資産はなるべく中古で

事業をするうえで医療機器や事務機器、自動車など資産を購入することがある。この場合、中古資産を購入すれば、新品とくらべ初年度から多くの減価償却費を計上することが可能となる。これは、通常の減価償却が、購入費を耐用年数で割って毎年の経費として計上するのに対し、中古資産の場合、経過している年数を耐用年数からマイナスできるためだ。医療機器は、中古というわけにはいかないかもしれないが、その効果が大きいため、自動車などで検討してみてはいかがだろう。

 

■おわりに

経費計上と税率を下げるための方法を検討してみると、思いのほか税金が圧縮できたというケースも少なくない。みなさんもこれを機に、申告内容を確認してみてはいかがだろう。

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