ほとんどの人が「税金は安いほうがいい」と考えているはずだ。今回は、節税しながら将来(老後)の資金積立や、事業防衛を可能にする国の制度をいくつか紹介したい。

■国民年金にプラスしよう!「国民年金基金」

厚生年金に加入しているサラリーマンと比較し、国民年金だけの個人事業者は将来の年金受給額が非常に少ない。「平成27年度の厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均支給額は約14万8千円であるのに対し、国民年金の平均支給額は約5万5千円となっている。

この両者の格差を埋めるための制度とも言えるのが、「国民年金基金」だ。1口あたりの掛金が設定されており、月額最大6万8千円まで拠出可能。給付方法も多種設定されており、ライフプランに応じた給付を選択できる。

国民年金基金連合会のホームページには、年金額シミュレーションも用意されているのでぜひ活用してほしい。ちなみに、掛金すべてを終身で受取るパターンでシミュレーションすると、現在39歳の男性が月額6万2205円払い続けた場合、65歳から年額91万7300円の年金を、終身受取ることが可能だ。

さらに、税制面では所得税・住民税においては、掛金の全額が社会保険料控除として所得からマイナスすることができる。それだけでなく、年金受取時には公的年金控除があり、入口と出口で税制の恩恵を受けることができるのだ。

節税しながら、将来の年金を増やせる正に一石二鳥の制度であるが、一度加入すると原則として脱退は不可能なので、その点は留意が必要だ(掛金の増減は可能)。

■経営者の退職金制度「小規模企業共済」

国民年金基金と並び、貯蓄・節税効果が高いのが小規模企業共済だ。こちらは中小企業基盤整備機構が運営しており、主に個人事業者や小規模法人の経営者が、自らの退職金を積立てるというものだ。

業種など一定の加入要件はあるものの、ほとんどの個人事業者は要件を満たしている。掛金は、月額千円から7万円まで500円単位で自由に設定できるうえ、中途での金額増減も可能で国民年金基金より金額設定が容易となっている。

掛金は全額、小規模企業共済等掛金控除として所得からマイナスできる。受取時の税制は、一括受取の場合は退職所得控除が適用され、年金受取の場合は公的年金控除が適用されるので、こちらも入口と出口で税制の恩恵を受けられる。

ただし掛金の納付期間が短すぎると、元本割れとなる場合がある点については注意が必要だ。ひとつの目安としては、65歳になるまでの間に15年間納付を継続するということ。こうしておけば、少なくとも「共済金B」という区分に属し、65歳以降いつ解約しても元本割れを起こす心配がないので、頭に入れておくとよいだろう。

■もしもに備える 「経営セーフティ共済」

前項の2つの制度に加入してもなお資金的に余裕のある場合や、将来法人成りを検討している場合にご紹介したいのが、いわゆる「倒産防止共済」と言われるものである。

この制度は、取引先の倒産により債権回収が不可能となった場合に、最大で掛金総額の10倍まで無利息で貸付を受けることができる。もちろん貸付なので、返済が必要なことはご留意願いたい。

この制度のメリットは、掛金(月額5千円から20万円まで自由設定可能)の全額が事業経費となることと、法人成りした場合や相続があった場合でも基本的に契約の引継ぎが可能な点にある。

また、解約したい場合には、40カ月以上掛金を納付していれば掛金の全額が返還される。ただし、この返還金は収入として課税対象となるため、損失がある程度見込まれる時期にあわせて解約するなど工夫も必要だ。

節税と老後への蓄えとして、検討してみてはいかがだろうか。

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