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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:判決・裁決紹介 国外財産調書の期限後提出と加算税

今回は、国外財産に関する申告漏れがあったとして自主的に修正申告し、その後、国外財産調書を提出したところ、5%の加重措置を適用された加算税の賦課決定を受けたという事案です。納税者は処分の取り消しを求めて審査請求しましたが、棄却されました(平成29年9月1日裁決)。

■国外財産調書制度

その年の 12 月 31 日において、国外に5千万円を超える財産を保有する居住者(非永住者を除きます。)は、確定申告の際に当該国外財産について記載した「国外財産調書」を提出しなければなりません。

もし、国外財産調書を提出する義務のある者が、調書を提出期限内に提出しなかった場合や調書に記載すべき国外財産の記載が漏れている場合に、その国外財産について所得税の申告漏れが生じたときは、その国外財産に係る過少申告加算税等が5%加重されます(国外送金等調書法6②)。一方で、国外財産調書を提出期限内に提出した場合には、調書に記載がある国外財産について、所得税又は相続税の申告漏れが生じたとしても、その国外財産に係る過少申告加算税等が5%軽減されます(国外送金等調書法6①)。

また、この軽減加重措置の特例として、提出期限後に国外財産調書を提出した場合であっても、調査により更正決定があるべきことを予知して提出されたものでないときは、その国外財産調書は「提出期限内に提出されたもの」とみなされます(国外送金等調書法6④)。すなわち、国外財産調書を税務当局からの接触がある前に自発的に提出すれば、期限内に提出したものと同じ取り扱いとなり、加算税の軽減も受けられることとなります。

今回の事案は、この特例の適用が問題となった事案です。

■事実関係

個人Xは、平成26年分の所得税確定申告を期限内に申告しました。

平成27年8月31日、同年分の所得税について、H国で生じた預金利子、株式貸付料の申告漏れ等があったとして、自主的に修正申告書を提出しました。

その後、平成27年9月14日、修正申告の基因となった国外財産を記載した国外財産調書を提出しました。

これに対し、国税当局は、国外送金等調書法6②を根拠に、加重措置を適用した過少申告加算税の賦課決定処分をしました。Xは、これを不服として審査請求をしました。

争点は、本件のような自主修正申告書についても加重措置は適用されるか否かである。

■審判所の判断

審判所は以下のように判断し、Xの主張を棄却しました。

①軽減加重措置は、適正な国外財産調書の提出に向けたインセンティブとして設けられた措置であり、飽くまで国外財産調書の提出を基軸とし、これを適正に提出した場合には加算税を軽減する一方、適正に提出しなかった場合には加算税を加重するものである。

②自主修正申告書に加重措置は適用されないとすれば、国外財産調書が提出される前に自主修正申告書が提出された場合には、それをもって直ちに加重措置の不適用が決することとなり、その後も引き続き国外財産調書が提出されなかったとしても加重措置は適用されないこととなる。このような解釈は、飽くまで国外財産調書の提出を基軸とし、これを適正に提出しなかった場合には加算税を加重するとする軽減加重措置の趣旨に反するものである。

③これに対し、自主修正申告書であっても加重措置は適用されるとした場合には、国外財産調書の提出がなかったことにより加算税が加重されることとなるのであって、このような解釈は軽減加重措置の趣旨とも整合する。よって、加算税の加重措置は自主修正申告書にも適用される。

④国外送金等調書法6④の特例は、国外財産調書が提出期限後に提出されたことを前提とし、それ以後に修正申告書の提出があった場合(修正申告書の提出があった場合において、国外財産調書が提出されていることを要件とするもの)の取扱いを定めたものであり、自主修正申告書の提出後に提出された国外財産調書には、同項の規定の適用はないと解される。

⑤本件の場合、国外財産調書は、修正申告書の提出後に提出されたものであるから、国外送金等調書法6④の適用はなく、本件国外財産調書は提出期限内に提出された ものとはみなされない。

 

■コメント

国外に財産を有しているにも関わらず、国外財産調書を提出しておらず、かつ国外財産から生ずる所得を申告していなかったというケースがあります。

このような場合、国外財産調書と修正申告書を提出しなければならない訳ですが、提出の順序に注意を払う必要があります。

修正申告書を自主的に提出してから国外財産調書を提出すると、修正申告書を提出した時点では国外財産調書は提出されていないため、加算税が加重される結果となってしまいます。

したがって、このようなケースでは、まず国外財産調書を提出し、それから自主修正申告書を提出するという順序で対応すべきということになるでしょう。こうすることにより、加算税の軽減が受けられることとなります。

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租税調査研究会事務局
tax@zeimusoudan.biz

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
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