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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:海外渡航費の留意点③ 家族の同伴

せっかくの海外渡航ということで、渡航者がその配偶者や親族を同伴し、その費用についても会社が負担しているケースが見られます。この場合、同伴者の費用は税務上、どのように取り扱われるのでしょうか。

同伴者の旅費

渡航者の渡航が法人の業務の遂行上必要なものであっても、その同伴者に係る旅費を法人が負担した場合には、その旅費は、原則としてその渡航者に対する給与として取り扱われます。
しかし、以下のように、明らかにその海外渡航の目的を達成するために必要な同伴と認められるときは、法人が負担した同伴者に係る旅費は経費として認められます(法人税基本通達9-7-8)。
(1) その役員が常時補佐を必要とする身体障害者であるため補佐人を同伴する場合
(2) 国際会議への出席等のために配偶者を同伴する必要がある場合
(3) その旅行の目的を遂行するため外国語に堪能な者又は高度の専門的知識を有する者を必要とするような場合に、適任者が法人の使用人のうちにいないためその役員の親族又は臨時に委嘱した者を同伴するとき

同伴者の旅費が否認された裁判事例(平17.1.19横浜地裁)

≪事実関係≫
リヒテンシュタイン公国のC社製の貴金属洗浄液等の輸入販売業を営むX社は、その代表取締役である夫妻の海外出張に長男甲(渡航時7歳ないし9歳)を同伴させ、その海外渡航費を損金に算入したところ、当該海外渡航費は代表取締役への賞与に当たるとして課税処分を受けた。
X社は、当該海外渡航費は業務遂行上必要なものであって損金に算入されるべきであると主張して、課税処分の取消しを求めた事案である。

≪会社の主張≫
①C社は、アイリッシュ系の同族会社であって、経営者の後継者をも含めた緊密な人的信頼関係の構築を重んじる会社である。本件海外出張の目的は、具体的な案件の報告、打合せや情報交換に加え、X社及びC社の後継者を含めた人的信頼関係の構築にあった。
②甲の同伴は、C社から何度も強い要請を受けたために行われたものであり、X社がC社との強固な信頼関係を構築する上で必要不可欠なものであった。
③甲は、 会議や懇親会の全てに出席し、また、会議等で発言を求められた場合には意見を述べた。
④X社の代表者らと甲は3人暮らしであり、甲を預けることができる親戚等はいなかったため、仮に甲を日本に残す場合には、代表者らのいずれかが海外出張を断念するしかない状況にあった。

≪裁判所の判断≫
①甲は、海外渡航当時、7歳ないし9歳の小学生であって、X社の業務に従事していたわけでもないのであるから、会議において、甲がX社の業務上必要な行為をする立場にあったということはできない。
②甲がC社の会議において会議を構成する正式な出席者として扱われていたことを示す証拠はない。また、甲がC社の会議においてX社の業務上必要な発言等の行為をしたことを認めるに足りる客観的証拠も存在しない。
③甲はX社の業務に従事していない未だ小学生にすぎない者であることからすれば、甲が海外渡航に同伴することは、X社及びC社の経営者家族相互の信頼関係の醸成に資するということができるとしても、それ以上に、X社の現在の業務の円滑な遂行上の必要性があるものとまでは認め難い。
④X社は、甲を預けることができる親戚等がいなかったため、甲を日本に置いたまま海外に出張することは不可能であった旨を主張するが、このような事情は、X社代表者ら家族の個人的な事情であって、X社の業務の遂行と関係するものではない。
⑤以上より、甲の海外渡航費は、甲の扶養者である甲が個人的に負担すべき費用というべきであり、X社の代表者に対する臨時的な給与、すなわち賞与として支給したものと認められる。

≪コメント≫
本件は、同伴者が小学生の息子ということで、業務遂行上の必要性を立証するのは極めて難しい事案であったと思われるが、裁判所の判決では、今後の類似のケースにおいていかなる証拠を収集すべきか、参考とすべき点も示されている。
まず、会議の主催者からの開催案内や招待状等において、同伴者の出席が正式に求められていることを証明できることが望ましい。また、会議において同伴者がどのような発言をしたのか等を出張報告書や議事録に詳細に記載し、会社の業務遂行においていかなる貢献をしたのかを明らかすることが必要であろう。
海外渡航費は税務調査で必ずチェックされる項目であることから、証拠書類を整え、業務遂行上の必要性を調査担当者にしっかり説明することが大切です。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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