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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:海外不動産を「ジョイント・テナンシー」で所有した場合の留意点①

近年では、富裕層を中心として海外不動産を購入するというスキームが人気となっています。投資先として多いのは米国で、その際、ジョイント・テナンシーという形態で不動産を購入するケースも見られます。ジョイント・テナンシーは日本にはない所有形態であるため、日本での税制上の取り扱いに注意する必要があります。

<ケース>

このたび、夫婦(ともに日本人)で米国の不動産をジョイント・テナンシーという所有形態で購入しました。購入代金については、夫が全額負担しています。この場合、何か課税上の問題は生ずるでしょうか。

ジョイント・テナンシーとは

米国では、2名以上の者による不動産の共同所有の一形態としてジョイント・テナンシーという形態が認められており、この所有形態による不動産所有者のことをジョイント・テナンツと呼んでいます。

ジョイント・テナンシーとは、二人以上の者が同一の不動産を所有する所有形態をいいます。一般的に合有不動産権と翻訳されていますが、ここにいう「合有」は必ずしも日本における「合有」とは概念が一致していません。すなわち日本には存在しない所有形態といえます。

ジョイント・テナンシーが成立するためには、その創設の際に

①2名以上の者が同時に所有権を取得すること

②全員が同一の証書によって所有権を取得すること

各自の持分が均等であること

④全員が財産全体を占有していること

という4つの要件が充足されていなければなりません。

このように、ジョイント・テナンシーにより不動産を購入した場合には、購入者の持分は自動的に均等になると考えられます。

サバイバー・シップの原則

ジョイント・テナンシーでは、ジョイント・テナンツの誰か一人が死亡した場合には、その権利は生存者への権利の帰属(サバイバー・シップ)の原則に基づいて、生存しているジョイント・テナンツの権利に吸収されることとなります。この吸収とは、決して相続されるということではありません。

このように、ジョイント・テナンシーの場合、誰に相続するかを検討する余地はなく、サバイバー・シップの原則に従って、自動的に残りの生存者へ所有権が移転するため、相続発生時にプロベートと呼ばれる手続きの必要がありません。

プロベートとは、検認手続きのことで、不動産の所有者に相続が発生した場合に、その名義を変更するためには裁判所を通じて手続きを行い、裁判所の許可を得なければなりません。裁判所の許可が下りるまでは、相続人は相続財産をどうすることもできません。一般的に、プロベートの手続きには1~2年の期間が必要となり、コストもかかることから、ジョイント・テナンシーは、プロベートを回避する方法としても活用されています。

本ケースの場合

さて、本ケースの場合ですが、夫婦で購入した不動産の所有権については、夫婦の持分はそれぞれ2分の1ずつの均等となります。しかしながら、資金は夫が全額を負担していることから、妻は対価を支払うことなく不動産の持分を取得したこととなるため、夫から不動産の購入資金の2分の1に相当する金額の贈与を受けたものとみなされてしまいます。

贈与税が課税された判決

夫婦がジョイント・テナンシーにより不動産を購入したケースで、贈与税が課税されたことが争点となった裁判事例があります(平19.10.10東京高裁)。

【事案の概要】

夫婦でジョイント・テナンシーにより、アメリカ合衆国カリフォルニア州にある不動産を88万ドルで購入し、購入代金は夫が全額負担しました。

税務署は、夫が不動産の購入代金のすべてを負担した以上、妻は当該不動産の取得資金の2分の1を夫から贈与されたものとして、贈与税の課税処分をしました。

妻は、この課税処分を不服として争いましたが、裁判所は、

「本件不動産の購入代金は全て夫が負担しており、妻は本件不動産に関する購入代金を負担することなく本件不動産の持分2分の1を取得したものと認められるから、相続税法9条により、本件不動産の持分2分の1の価額に相当する金額、すなわち、本件不動産の購入代金の2分の1の金員を夫から贈与により取得したものとみなすのが相当である。」と判示しました。

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著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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