米国不動産に投資する場合、ジョイント・テナンシーという形態で不動産を購入するケースも見られます。ジョイント・テナンシーは日本にはない所有形態であるため、日本での課税関係を確認する必要があります。特に所有者のいずれか一方に相続が発生した場合の税制上の取り扱いには注意が必要です。

「ジョイント・テナンシー」の概要
米国では、2名以上の者による不動産の共同所有の一形態として「ジョイント・テナンシー」という形態が認められており、この所有形態による不動産所有者のことをジョイント・テナンツと呼んでいます。
ジョイント・テナンシーとは、二人以上の者が同一の不動産を所有する所有形態をいいます。一般的に合有不動産権と翻訳されていますが、日本には存在しない所有形態です。ジョイント・テナンシーにより不動産を購入した場合には、購入者の持分は自動的に均等になるとされています。
ジョイント・テナンシーでは、ジョイント・テナンツの誰か一人が死亡した場合には、その権利は、生存している残りの者の権利に吸収されることとなっています。これをサバイバー・シップの原則と呼んでいます。
相続が発生した場合
ジョイント・テナンツのうち、どちらか一方に相続が発生した場合には、自動的に生存している者に権利が移転することになります。権利の移転を受けた者は、相続税法9条に規定する「対価を支払わないで利益を受けた場合」に該当し、被相続人から贈与があったものとみなされます。
また、被相続人から3年以内に受けた贈与については「生前贈与加算」が適用され、相続財産に加算されることから、結果として相続税の課税対象となります。
以下で、相続税が課税されたことを争った裁決事例、及び国税庁の質疑応答事例を紹介します。
裁決事例紹介(平成27年8月4日裁決)
この事例は、米国f州にジョイント・テナンシーの形態で所有する不動産(以下「f不動産」という)を取得した相続人に、相続税が課税されたというものです。
納税者は、ジョイント・テナンシーは合有財産であって共有財産ではないこと、我が国の税法上、このような財産が相続税の課税価格に算入されるとする根拠がないこと等を主張し、課税処分の取り消しを求めて審査請求しました。
これに対し、審判所は以下のように判断し、納税者の主張を退けました。
【審判所の判断】
ジョイント・テナンシーの形態で所有しているf不動産については、ジョイント・テナンツ(合有者)の一人である被相続人が死亡したことにより、その権利は、相続されることなく、生存者への権利の帰属(サバイバー・シップ)の原則に基づいて、残りのジョイント・テナンツである納税者の権利に吸収されたものと認められる。
そして、サバイバー・シップの原則により納税者の権利が増加した時に対価の授受があった事実は認められないから、生存者である納税者は相続税法第9条に規定する「対価を支払わないで利益を受けた場合」に該当すると認められるところ、この権利の増加は、同条により、納税者が被相続人から贈与により取得したものとみなされる。
さらに、この権利の増加につき、納税者には、相続税法第19条《相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額》第1項の生前贈与加算が適用されることとなる。
したがって、被相続人がジョイント・テナンシーの形態で所有するf不動産の持分については、納税者が被相続人から贈与により取得したものとみなされ、f不動産の価額の2分の1に相当する部分の金額については、相続税の課税価格に加算すべきものと認められる。
国税庁が公表した質疑応答事例
国税庁がウェブサイトで公表している質疑応答事例に「ハワイ州に所在するコンドミニアムの合有不動産権を相続税の課税対象とすることの可否」があります。
国税庁の回答では、「被相続人の合有不動産権が移転したことによる生存合有不動産権者の権利の増加は、対価を支払わないで利益を受けた場合に該当するため、生存合有不動産権者が移転を受けた被相続人の合有不動産権の価額に相当する金額については、被相続人から贈与により取得したものとみなされることになります(相法9)。
したがって、生存合有不動産権者が被相続人から相続又は遺贈により財産を取得している場合には、被相続人から贈与により取得したものとみなされた合有不動産権の価額に相当する金額は、相続税の課税価格に加算され(相法19①)、相続税の課税対象となります。」とされています。
更に、ジョイント・テナンシーは、実質的な死因贈与契約とみることもできる旨も併記されており、いずれにしても相続税が課税されることとなります。
この質疑応答事例の回答は、実務上の取り扱いの指針となっています。
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