国税当局は、タックスヘイブンが絡むグローバル企業への税務調査に力を入れています。昨今、日産自動車が外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の適用を受け200億円の申告漏れを指摘されたとの新聞報道がありました。同税制が適用除外となる基準を満たすかどうかが争点となったものです。会社側は争う姿勢を示しており、今後の動向が注目されます。

新聞報道
以下は、本年11月8日付の日本経済新聞の記事の一部です。
日産、申告漏れ200億円 租税回避地の子会社巡り
日産自動車が東京国税局の税務調査を受け、タックスヘイブン(租税回避地)の子会社を巡って2017年3月期の税務申告で200億円強の申告漏れを指摘されていたことが7日、同社や関係者の話で分かった。日産側は争う姿勢を示しており、今後の推移はタックスヘイブンの子会社で同様の処理をしている他の企業に影響を与える可能性もある。
[…]
日産や複数の関係者によると、問題とされたのは税負担が軽いバミューダ諸島にある海外子会社。日産が保険会社に支払った自動車ローンに関する保険料の一部が、子会社に入る仕組みになっている。
東京国税局はこの子会社について、国際的な租税回避を防ぐ外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)を適用し、子会社の利益を日産の利益と合算すべきだと指摘したとみられる。
これに対し、日産側は、この海外子会社について主として日産グループ以外と取引していると主張。税制の適用が除外される「非関連者基準」を満たしており、申告漏れには当たらないと争っている模様だ。
[…]
外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)とは
外国子会社合算税制とは、法人税率の低いタックスヘイブン(租税回避地)に所在する外国子会社を利用した租税回避を防ぐための制度である。この外国子会社合算税制が適用されると、タックスヘイブンに設けた外国子会社の所得が、日本の親会社の所得に合算されて課税されてしまう。
ただし、所在地国において独立企業としての実体を備えるなど、その地において事業活動を行うことに十分な経済合理性があると認められる場合には適用が除外される。適用除外となるためには、以下の4つの基準(「経済活動基準」という)のすべてを満たす必要がある。
1 事業基準
2 実体基準
3 管理支配基準
4 非関連者基準または所在地国基準
税務調査では、これらの基準を満たすかどうかが問題となるケースが多く、日産の事案では「非関連者基準」を満たすかどうかが争点となったようだ。
サンリオも香港子会社を巡ってタックスヘイブン課税
ハローキティでお馴染のサンリオも2017年に香港の子会社がタックスヘイブン対策税制の適用除外要件を満たしていないとして、11億円の課税処分を受けたことを開示している。
それによると、「当社の香港子会社は、現地の消費者の嗜好を反映する当社キャラクターのローカライズ(現地化)業務やキャラクタービジネスを展開するという積極的な経済合理性を有し、個々の現地ライセンシーのニーズを反映させるためのカスタマイズ、企画提案及びサポートを行う独立した事業実態を備えております。そのため、当社は、タックスヘイブン対策税制上の観点から適用除外要件を充足すると判断し、適正に申告してまいりました。それにもかかわらず、事業実態が十分に考慮されず更正処分を受けるに至ったことは誠に遺憾であります。当社は、更正処分に係る税額を一旦納付した上で、当局に対して、引き続き当社主張の正当性を訴えていく予定です。」とのコメントを出している。
「経済活動基準」について「推定規定」が導入
タックスヘイブン対策税が適用除外となるための基準(経済活動基準)に関し、29年度の税制改正でいわゆる「推定規定」が導入された。これは、国税当局の職員が内国法人に、その外国子会社が経済活動基準を満たすことを明らかにする書類等の提出を求めた場合等において、期限までにその提出がないときは、その外国子会社は経済活動基準を満たさないものと推定するというものである。
この「推定規定」が導入されたことによりにより、今後は子会社が行っている経済活動の内容を示す一定の書類等の作成が必要となるので注意が必要である。
この改正は、外国子会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。