令和3年度税制改正では、国際化の進展に伴い国外に転出する納税者が増加する一方で、納税管理人の選任が適切に行われていないケースも見られたことから、当局が納税管理人を指定できる制度が設けられました。また、消費税に関しては、社会問題となっている金地金の密輸に対応するため、仕入税額控除の要件である本人確認書類の見直しが行われました。

1 納税管理人制度の拡充

■改正の背景
国際化の進展に伴い、国内に何らの拠点も持たない外国法人や非居住者による経済活動も活発になってきています。
国税通則法117条では、国外に転出することとなった個人や、国内に支店等の恒久的施設を有しないこととなる外国法人は、納税申告書の提出その他国税に関する事項を処理する必要があるときは、納税管理人を定めなければならないことが規定されています。

「納税管理人」とは、納税に関する一切の事項を処理するための代理人をいいます。納税管理人の事務範囲としては、①国税に関する法令に基づく申告、申請、請求、届出その他の書類の作成ならびに提出、②税務署長が発する書類の受領、③国税の納付及び還付金の受領、が挙げられています。ただし、納税管理人は、本人に代わって税務調査や滞納処分の対象となることはありません。

近年の状況として、税務調査や照会文書の発送など、国税当局側から接触の必要性があるにも関わらず、納税者が納税管理人を定めていない場合には当局側には取り得る措置がないという問題が生じてきました。そこで、このような場合に対して効率的に税務調査等が行えるようにするため、納税管理人の適切な選任を確保するための改正が行われました。

 

■改正の概要
今回の改正で、納税管理人について定めた国税通則法117条が見直され、以下の通り納税管理人制度が拡充しました。この改正は、令和4年1月1日以後に適用されます。
① 納税管理人を定めるべき納税者が納税管理人の届出をしなかったときは、当局は、その納税者に対し、60日を超えない範囲内で期限を設けて、納税管理人の届出をすべきことを求めることができる。
② 納税者が①による当局の要請に応じず、指定期限までに納税管理人の届出をしない場合には、当局が親族や子会社等の国内に所在する関連者を納税管理人として指定できる。この指定については、納税者及び納税管理人として指定される国内関連者の手続保証の観点から、両者に対して書面により通知を行い、これらの者による不服申立て又は訴訟を可能としています。