国税庁はこのほど、令和元事務年度(令和元年7月~令和2年6月)の調査事績を公表しました。各税目とも新型コロナウィルス感染症の影響により調査件数は減少したものの、大口・悪質と思われる事案に絞って調査を実施した結果、1件当たりの追徴税額は軒並み増加しています。特に富裕層に対する調査では成果を上げており、追徴税額では過去最高となりました。

所得税の調査事績~「富裕層」に対する追徴税額は過去最高
国税庁では有価証券や不動産などの大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人を「富裕層」として管理し、積極的に調査を実施しています。
富裕層に対する調査では、1件当たりの追徴税額は 581 万円で、所得税の実地調査全体の222 万円の2.6 倍となっています。また、追徴税額の総額は259 億円で過去最高となりました。
特に、海外投資等を行っている富裕層に対しては、調査件数が減少する中にあって、前年より77件多い936件の調査を実施し、1件当たりの追徴税額は 1,571 万円となり、所得税の実地調査全体に比べ 7.1 倍と特に高額となっています。

国税庁によれば、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを効果的に活用し、積極的に調査を実施していくとしています。
【CRSを活用した調査事例】
内国法人の代表者Ⅹは、CRS情報から国外に多額の預金があることが把握されたため調査に着手した。調査の結果、海外の預金口座を保有して金融商品への投資を行っていたほか、海外不動産を複数購入して貸付を行っていた事実や取得した不動産を一部売却していた事実が明らかとなった。
Xは国外財産調書を提出していなかったため、国外財産に関する申告漏れに係る過少申告加算税5%が加算され、追徴税額は約6800万円、5年分の申告漏れ所得は約2億7,900万円となった。